潮騒
潮騒
監督:谷口千吉
原作:三島由紀夫
音楽:黛敏郎
出演:久保明 (新治)
青山京子(初江)
沢村貞子(とみ)
1954年 日本
ちょいとした野暮用があって、以前住んでいた川崎市中原区へゆく。
用事は午前中に済ませたので、午後から、以前ここに住んでいた頃よく訪れた川崎市民ミュージアムに、久々に入ってみた。
折しもミュージアム内の映像ホールでは、昨年亡くなった映画監督、谷口千吉の特集をやっていて、その監督作品のうちの一本、1954年製作の「潮騒」を観ることが出来た。
「潮騒」の映画は今日までに、なんと5本も造られている。
<製作> <監督> <新治> <初江>
1.1954年 谷口千吉 久保明 青山京子
2.1964年 森永健次郎 浜田光夫 吉永小百合
3.1971年 森谷司郎 朝比奈逸人 小野里みどり
4.1975年 西河克己 三浦友和 山口百恵
5.1985年 小谷承靖 鶴見辰吾 堀ちえみ
邦画界の人気コンテンツと言うわけだけれど、その嚆矢となるのがこの54年作品である。 その後、10年を超さずにリメイクされ続けていて、でもここ20年間は造られていない。
鄙びた漁村の風景や、貧しくも地に足が着いた漁師の生活など、明朗で判りやすい作風は、谷口監督の特徴なんだろうか。 二人の前に立ちはだかる、村社会の旧弊さの描写なども、あまり陰湿にならないのが好い。
そしてなにより、主役の二人の瑞々しさに好感が持てる。 新治はひたむきで謙虚な滅茶好い奴だし、フレッシュでしかし浮ついたところのない初江。 脇役陣もしっかりしている。 気骨のある新治の母、とみに沢村貞子。
音楽は黛敏郎。 伊勢湾にフランス近代を持ち込んだ。
最初はうんと地味な文芸作品と想っていたのだけれど、いつしか夢中になって観ている自分があった。
私は5本ある「潮騒」の映画をどれも観ていないし、三島の原作も未読なので、純情一筋な二人(平成の日本にあっては絶滅危惧種に指定されそうな)の恋路をハラハラしながら見守ってしまったのである。
あまり期待せずに臨んだから、余計にそう想うのかもしれないけれど、見終えての満足度の、ものすごく高い映画だった。
この1954年版「潮騒」。 残念ながら、現在のところDVDなどは市販されていないらしい。 この日の上映はフィルムの状態が良くなかったのだけれど、この素晴らしい映画、なんとかDVD化して貰えないだろうか。
思いがけず、ホントに好い映画を観ることが出来て嬉しい。
清々しい気分に満たされて、川崎市民ミュージアムを後にした。

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