May 11, 2008

HINOKIO

 
 HINOKIO
 
   監督:秋山貴彦
   出演:中村雅俊
      多部未華子
      本郷奏多
      堀北真希
      林原めぐみ(声)
 
         2005年 日本
 
 
テレビのニュースだったか、それともコマーシャルでかは忘れたけれど、本田技研工業のASIMO。 あの二足歩行ロボットが歩く姿を初めて見た時は、いやもう、ぶったまげたもんである。

普通、ロボットの歩きと言えば機械的な、ギクシャクとした動きを想像しがちだけれど、その先入観に反してスタスタと歩く、その動きのあまりな人間っぽさ。
これは絶対中に人間が入って歩いているんだろうそうだそうに違いない!って、どうしても疑惑の目を向けてしまうんだけれど、その形状から見て、人間が収まるとは考えられず、改めて驚いてしまう。
あれを見た人の反応は、まずは誰しも一様にクチあんぐりと驚いて、次いで顔をほころばす。 ってところじゃあないだろうか。
人類史上初の本格的二足歩行ロボットは、誰からも愛されるナイスな奴であった。
 
 
※ロボット研究者を父に持つ小学生のサトルは、交通事故により母を亡くし、自身も車椅子の生活を余儀なくされる。 また心に負った傷により、他者とのコミュニケーションを拒否するようになり、自宅から一歩も出ない日々を送っている。
その頃、様々な理由から登校出来ない児童に、本人が遠隔操作するロボットによる代理登校をさせる試みが始まった。
 
 
サトルの操るH-603(HINOKIO)は、ASIMOと同様子供サイズで、ちょっとたどたどしい足取りの二足歩行ロボット。
HINOKIOの動くシーンは専らCGで描かれるのだけれど、それがとても自然で虚構と言う感じがまるでしないのは、ASIMOを見ていての学習効果に拠る処が大きいと思う。

お芝居の方は、ジュン役の多部未華子をはじめ、子役の縁起が素晴らしく上手い。
堀北真希が小学生に見えないのは、ま、ご愛嬌か。
我が子との距離が縮まらず悩む、お父さん役に中村雅俊。 ラスト近くで見せる会心の笑みが好印象。

子供たちの友情、勇気、母への慕情、淡い恋心。
そしてイジメ、非行、嫉妬、父への反目、親の再婚など。
子供たちとロボットの触れ合いということで、ほのぼのしたストーリーかと思えば、子供なりに結構重いものを含んでいるのだ。

昔、千住に実在した「おばけ煙突」の使い方の上手さ。
現実の世界とコンピューター・ゲームの電脳世界とがリンクしているという設定は、随分とっぴだけれど、ここは大人の常識で判断するのではなしに、学校の怪談を真剣に論じあう子供の感覚で、率直に受け取れば好いのだと想う。

あまり期待もせずに見始めたのだけれど、映画が終わってみれば、夢中になって見入っている自分がいた。
あくまで子供中心のドラマながら、大人の視線で見ても十分に愉しむことの出来る佳品です。
 

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March 23, 2008

バタリアン

  
 バタリアン
 Return of the Living Dead
 
  監督、脚本:ダン・オバノン
  出演:クルー・ギャラガー:バート
         (医療機器販売会社の社長)
      ジェームズ・カレン:フランク
         (同社のベテラン社員)
      トム・マシューズ:フレディー
         (同社の新入社員)
      ドン・カルファ:アーニー
         (葬儀屋、バートの旧友)
      ベヴァリー・ランドルフ:ティナ
         (フレディーの恋人)
 
         1985年 米国
 
 
私は、映画を好む者である。 しかしながら、ホラーものだけは一切見ないことにしている。
なにしろこちとら、筋金入りの超怖がりと来ていますからね。 誰が好き好んで、お金と時間を費やして、わざわざ怖い想いをしますかって。
それが、この春の凶悪な花粉症のおかげで何処かのネジが吹っ飛んでしまったものか、生涯縁のない筈のホラー映画に手を出してしまった。
 
「バタリアン」。 そのタイトル(あんまり、好い邦題ではないと想う)だけは、以前から私も聞き知っているくらいだから、さぞかし名作なのであろう。
ホラーのマスターピースと来れば、コワさの方も、また超絶級に違いない。 この手のものに対して、まったく免疫力を持たない私などが観て、果たしてダイジョーブなのであろうか。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
結果から言ってしまうと、コワさはなんとか許容囲内に留まってくれ、最後まで鑑賞し切ることが出来た。 ふぅ。
それどころか、笑っちゃいそうな展開さえあり、ドラマとしても優れた、予想外に楽しめる映画だったのである。
 
出演の役者、特に医療機器販売会社の三人と葬儀屋の演技が秀逸。 映画の冒頭部あたり、バートとフレディーの絡みがとても好かった。
社員二人が社長のいない間に交わすヨタ話し、その怪談ネタを切っ掛けに好奇心を煽られ、(止せば好いのに!)ある事情から永く地下室に仕舞い込まれている、決して開けてはならないと言われるカプセルに手を掛けてしまい・・・・・・
 
如何にもホラーっぽい雰囲気を醸して、さあさあ恐怖シーンが来るぞ始まるぞと、見る側を煽るあおる。 さあ、いよいよ怖くなるかとドキドキさせておいて、いつか可笑しささえ込み上げて来る造りには、してやられたって感じです。
 
いずれも等身大に描かれる登場人物らは、ちょっと頼りないオトナたちに、80年代風イカレタ若者たち。 あんまり立派なのは出てこない。
大の男が、Living Deadを目の当たりにして、恐さと気持ち悪さで半泣きになってしまうあたりが、いっそリアルで、ホラー&(やや)コメディと言うばかりでなしに、人の織り成すドラマとして良質だと想う。
ロックを多用した音楽も、ホラーらしさと時代の雰囲気を伝えて、実に好い感じ。

監督、脚本のダン・オバノンは、あの「エイリアン」(1979年)でも脚本を担当していた。
そのためであろう、細かいところで「エイリアン」のセルフパロディーをやっているのが興味深い。
・Living Deadを封じ込めていたカプセルは、エイリアンの卵そっくり。 地下室には同型のカプセルが幾つか眠っていて、これもエイリアンの産卵場に似ている。
・身体を寸断されたLiving Deadを拘束して、なぜ人を襲うのかを聞きだすシーン。 やたら饒舌なLiving Deadは「エイリアン」の船医、あの悪夢のようなシーンを髣髴とさせる。

ホラー映画ってことで、ビビリながら観始めたものの、怖いのがまったくダメな私でも十二分に愉しめる映画になっている。 ほっ。

と想ったら、衝撃のラストシーンが私を待っていた。
 

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December 18, 2007

NHK大河 風林火山 最終回

 
今年のNHK大河ドラマ「風林火山」が最終回を迎えた。
軍師山本勘助(内野聖陽)を中心に、武田家の興隆をじっくりと描き切った。
それにしても、一介の浪人に過ぎなかった勘助の登場から、川中島の決戦まで、一年過ぎることの速いことはやいこと。
勘助と信玄、由布姫らの関係など、大河では原作と異なる設定を選んだけれど、山本勘助と言う男の最期を感傷的に描いた最終回については、原作に通じるものがあると想った。

風林火山は、武田家と上杉家の戦いだけではない。 今年の大河では、武田家に仕える以前の真田氏や、後北条氏、今川氏など、諸将のドラマにも力が入った。 とりわけ今川義元など、既成のイメージを見事に覆したイケメンぶりが痛快至極。

戦国ドラマらしくイカツイ男優陣が、また魅力であった。 武張った中に、優しさや、ユーモアさえ垣間見せる男たち。
内野聖陽演じる山本勘助は、天晴れなハマリ役。 ワイルドな風貌に野太い声音。 若い頃から晩年までの、歳相応に施したメイクが、どれも格好イイですな。
市川亀治郎の武田信玄も、カリスマ性を感じさせて良かったと想う。 上杉Gackt、当初はどうかと思ったけれど、斬新さを楽しめた。 板垣信方という武将に、俳優人生の総決算を託した千葉真一。 緒方拳演じる宇佐美定満は、流石に年齢を感じさせ、しかし貫禄十分。

さて、来年の大河ドラマは幕末もの、将軍家の御台所「篤姫」ですと。 やべぇ、まったくの守備範囲外だわ。
 

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July 21, 2007

NHK大河 風林火山「両雄死す」

今年のNHK大河ドラマは、井上靖原作の「風林火山」である。 武田信玄に軍師として使えた山本勘助の生涯を、一年掛けて描く。
私はこのドラマを第一回から見続けていて、今のところまだ脱落を免れている。 うん、面白いんだ。 途中の何話かを見逃しているかもしれないけれど。

「風林火山」は昨年の大河、戦国ホームドラマとでも言えそうな「功名が辻」(これはこれで、とても楽しかったけれど)とは対照的。 戦国時代の甲斐信濃を描くに相応しい、ストイックで少うし暗めの演出が好もしい。
また、山本勘助役の内野聖陽以下、武張った諸将のキャスティングも見事と思う。 このクオリティを続けてくれれば、このまま年末の最終回まで付き合っていけそうな気がする。

これは果たしてキチンと狙ってやっているのか、内野聖陽はじめコチコチの硬派な武将らを描くドラマ中に、時折(一話につき一度くらい)ひょうひょうとしたユーモアの漂うシーンが差し挟まれるのが実に面白い。
一方、音楽(千住明)は、メイン・テーマはまことに威勢が好いのだけれど、その他の曲はいささか深みに欠けると想う。

内野聖陽は、例年の大河ドラマの主役に類のなかったワイルドなキャラ。 野性味溢れる風貌に、野太い声音からは、如何にもの戦国武将らしさが横溢する。
武田晴信(後の信玄)役の市川亀治郎の、懐の深さとカリスマ性も特筆すべきところ。
そして晴信の下に集う武田家家臣たちの武張った雰囲気。 中でも最もハマリ役と思えるのが武田の重臣板垣信方役の千葉真一。

先日の放送「両雄死す」では、その「風林火山」も前半のクライマックスを迎えたところ。 武田晴信対村上義清の決戦。 上田原の戦いである。(1548年3月23日)
この戦いで武田晴信は痛恨の敗北を喫し、若き晴信をここまで支えてきた両雄、父とも頼む重臣の板垣信方(千葉真一)と甘利虎泰(竜雷太)を失うのである。

ドラマの中では甘利と板垣の最期の場面が、けだし圧巻であった。 板垣役の千葉真一さんは、このドラマの出演をもって、俳優業を引退されるとのこと。
俳優人生のラストを、主家を案じて無謀な戦いにのぞみ、乱戦のさなか、大立ち回りの末に討ち死にするという、一世一代の壮絶な演技で締めた。 アクション俳優として、本懐ではないだろうか。 子供の頃から千葉さんを見て来た、こちらもまた感無量である。

例年の大河ドラマに共通する設定として、(歴史的評価とは別に)主人公はあくまで「好い人」に徹すると言うのがある。 その点、今回は山本勘助が主人公だからして、信玄の持つダークな部分、外(他国)に対しては苛烈な侵略者として、また内(家中)に対しては時に暴君的に振舞う面をも自由に描ける訳だ。 一方、主人公と言うことで「好い人」属性を振られた勘助は、軍師としてそんな信玄の暴走ぶりに振り回される格好となる。

忠臣板垣信方の最期を見事なクライマックスにして「風林火山」の前半が終わった。 後半は川中島の戦いまで。 これからは上杉謙信が物語の主軸に絡んで来るのであろう。

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March 01, 2007

春の雪

 春の雪

   監督:行定勲
   撮影:李屏賓(リー・ピンビン)
   出演:妻夫木聡、竹内結子
   原作:三島由紀夫

       2005年、日本
 
 
監督はセカチューの行定勲。 とはいえ、とても同じ人が撮ったとは思えない、こちらは本格文芸大作に仕上がっている。
原作がMISHIMAと言うだけで、若干のキンチョーを否めない自分にいささか後ろめたいキモチを抱きつつ見てみた。 因みに原作は未読である。

この映画、なにせ上映時間が滅茶長いし、屈託なしに楽しめる娯楽作品と言うんでもない。 映像美には溜息をつきっぱなしだったけれど、また同時に、見終わった頃にはうんと疲れ果てていたと言うのも確かである。 あまり、誰にでもオススメ出来る映画と、言うわけにはいかないと想う。

とは言えこの作品、文明開化期の浮世絵がお好きな方ならば、是非とも見て頂きたいのである。 当時の風俗、上流社会の贅を尽くした洋館やそこに群れ集う紳士淑女など、ここではそれらを素晴らしい実写で見る事が出来るのだから。

それにしても映像。 とにもかくにも映像。 それも、唖然とさせられるほど美しい。 自分にとって、この映画はこれに尽きる。
映画の冒頭、幼い日の二人が百人一首に興ずるシーンからラストに至るまで。 2時間半に及ぶ映画の、ほとんどのカットで賛嘆をもらさずにいられなかった。 スクリーンの隅からすみまで、徹底した美意識に貫かれた映像である。 撮影監督のリー・ピンビンのことを私は知らなかったのだけれど、本作品を観て、とてつもない才能の人と確信した。

難しい、長い、疲れる。 なんて、散々文句を言いつつも、主人公の屈折した心情がなかなか理解し辛くて気になるのと、映像美に酔いしれたいのとで、この映画、都合二回見てしまった。

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September 19, 2005

豚と軍艦

 
 映画「豚と軍艦」
  監督: 今村昌平
  出演: 長門裕之、吉村実子、丹波哲郎

    1961年、日本


標題の映画を観た。 セプテンバー11に続いての、今村昌平監督作品である。
舞台は昭和30年代の横須賀。 米軍基地に寄生するヤクザ組織のチンピラ欣太(長門裕之)が主人公。
夏だって言うのに、一張羅のスカジャンを手放さない。 兎に角滅法活きが好い。 これっぽっちも品が無くて、虚勢を張りたがるくせに傷付きやすく、その上、不器用で一途な大バカ野郎である。 要するにカワイイ奴なんである。
白状してしまうと、私、この時代の長門裕之に付いては何も知らなかったのである。 子供の頃から、テレビのホームドラマやバラエティものの人としだけ見知っていたので。
昔から、イワユルフツーの伯父さんとばかり想っていたのが、若い頃にはずいぶん無茶をやってたのね、ってな感じ。 すっかり認識を新たにしてしまったよ。 あのオジサンに、こんなにも輝いた青春があったのかよ! なんて言ったら失礼だろうか?

欣太の相手役、「はるっぺ」こと春子(吉村実子)。 若い。 その若さ故の、体当たりの演技・・・・・ってのは使い古された表現だろうけれど、この人に関しては兎に角他に言いようが無くて、その若さに終始当てられるっぱなしであった。

欣太の兄貴分、人斬り鉄次(丹波哲郎)。 この役者に付いても、壮年期以降のドラマや、やはりバラエティものでの怪演しか知らないのだけれど、どこか人を食った演技は、やはりこの頃から、単なる二枚目に納まる人ではなかったのだと想わせられる。

昭和30年代の横須賀の景観がまた好いのだ。 夏の横須賀の街と海と山、湾内にぷかぷか浮いたアメリカの軍艦、戦勝国らしく脳天気な米兵たち、そこにハゲタカのように群がる男女の群れ。
それからドブ板の様子。 その造り込み振りが素晴らしい。 ドブ板を闊歩する男女、米兵の一人一人に至るまでが活き活きと呼吸して、作品世界を造っているのだ。
映画のラストでは、そのドブ板を、無数の豚の群れが埋め尽くしてしまう。 全編汗臭くて泥臭い、夏の映画だ。 もの凄い映画を観た。
 

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