November 13, 2009

間宮兄弟

   
  
 間宮兄弟
 The Mamiya Brothers
 
 
  監督:森田芳光
  脚本:森田芳光
  原作:江國香織
  出演:佐々木蔵之介(間宮明信)
     塚地武雅(間宮徹信)
     常盤貴子(葛原依子)
     沢尻エリカ(本間直美)
     北川景子(本間夕美)
     中島みゆき(間宮順子)
 
        2006年 日本
 
 
以前ここでもご紹介したことのある、同名の小説を原作とする映画です。
あの小説を私は、女流作家が女性読者向けに書いた、言わば女性視点の作品として見て、それへの違和感(だったら読むなってハナシではあるんですけれど)を申し述べたのでしたっけね。

さて、映画の方は監督・脚本が森田芳光さん。
果たして、小説とは正反対の性格に仕上げられていると想いました。

齢三十代にしてどちらも独り身を通し、仲良く二人暮らしを続ける間宮明信・徹信の兄弟。
長男・明信役に佐々木蔵之介さん。 そして次男・徹信役に塚地武雅さんという、見事なまでに対照的な体型の二人。(見ればみるほど納得!なキャスティング)

諸事律儀な間宮兄弟。 日々の仕事では何事にも手を抜かず誇りをもって取り組み、生活のあれこれや、沢山ある趣味の一つひとつにも至極真面目に取り組む暮らしぶり。 そして、なにより家族を大事に想う二人です。
人間関係にも誠実・・・・というか、ハッキリ言ってこちらについては二人とも至って不器用ですね。

明信の奉職するビール工場、その見学コースの風景に私は見覚えがありました。 このシーン、以前私も訪ねたことのある、サッポロビール千葉工場で撮影したようです。

多趣味かつ凝り性な兄弟の住まうマンションの室内は、本やビデオ、ボードゲーム、雑多なコレクション、果ては自作紙ヒコーキなど、これまで二人して愉しんできた宝物で一杯です。(美術担当の労作。 その凝りまくりぶりが見もの!)
男の子の部屋が、そのまま大人向けになったようなもので、いわば大きなオモチャ箱(ただし趣味好く整理されて、とても居心地の好さそうな)の中。 しかも、そこかしこからアナログ的でどこか懐かしい雰囲気が漂ってきます。 二人の部屋の在り様そのものがあまりにも雄弁で、見れば、間宮兄弟というものタチドコロに判る仕掛けなのです。

そんな、世にも奇特な兄弟の部屋を興味シンシンで(というか完璧にキョーミ本位で)訪れることになった妙齢の女性たち。 でもこれ、兄弟にとっては空前絶後の大事件なんです。 彼らの住まいを、母親以外の女性が訪ねてくれるなんて!

ドラマは時にドキュメンタリータッチに切り替わったり、また素で会話しているとしか想えない瞬間があったり、不思議~ファンタジックな描写になってみたりと、何分とりとめが無いのですけれど、こういう変化球を交えた作風、私は結構好きなのです。
間宮家にやってきた女性たちを帰した後、兄弟して執り行う反省会(!)のはしゃぎっぷりときたら!
これって、放課後の男子同士が交わすバカ話しそのものですよ!!

兄弟の母親役にまさかの中島みゆきさん。 サスガの存在感で、このキャスティングも秀逸と想います。

そして、葛原依子先生に常盤貴子さん。
綺麗なんだけれど、でもどこかヘンな小学校女教師を好演。
この方、所作がとってもイイんですね。 今年のNHK大河ドラマ「天地人」での、主人公直江兼続の奥方お船役でもそう感じたのですけれど。 その歩き方や、なにげない仕草がいちいちとても雄弁で、葛原依子先生という人物のユニーク(!)さが伝わってくるのです。

あと、DVDにオマケとして付いていたオーディオコメンタリーが取り分けイイ出来でした。
森田監督ってオモシロくってサービス精神旺盛な方ですね。
コメンタリーの中で脚本と演出の工夫、伏線の数々、製作上のコダワリが次々と開陳されるので、映画が倍愉しくなりました。

アクションとかウットリするようなロマンス、それにそもそもクライマックスなんてもののの無い、ローテンションで小ネタの連続する映画です。
生きていれば、悲しいことや上手く行かないこともあるけれど、でも、失敗しても傷ついても、いつも傍にいて支えあう人のいること。 毎日を大切に生きること。 それがなにより。
モテナイ男でどこが悪い? なんて、痛快に言い切ってくれている気がしました。

女性視点で描かれた原作に対する、この映画は男性視点からの見事な回答です。
 
 

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November 04, 2007

魔笛

 
 魔笛
 The Magic Flute
 Die Zauberflote
 
 
  監督:ケネス・ブラナー
  出演:ジョゼフ・カイザー:タミーノ
      エイミー・カーソン:パミーナ
      ベン・デイヴィス:パパゲーノ
      シルヴィア・モイ:パパゲーナ
      リューボフ・ペトロヴァ:夜の女王
      ルネ・パーペ:ザラストロ
      トム・ランドル:モノスタトス
      テゥタ・コッコ:第一の侍女
      ルイーズ・カリナン:第二の侍女
      キム=マリー・ウッドハウス:第三の侍女
  脚本:エマヌエル・シカネーダー
      スティーヴン・フライ
  作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
  指揮:ジェームズ・コンロン
  演奏:ヨーロッパ室内管弦楽団
 
       2006年 英国
 
 
これは魔笛のオペラ映画。 最寄りの映画館に掛かったのを見て来た。 (出演者欄が矢鱈と沢山だけれど、魔笛の主要な配役をあげるとこうなるわけですな)
実は、この日は風邪気味でちと辛かった。 それに、心なしか、夕べのが残っている気もするし。 そうは言っても、この機会を逃すと、もうしばらくは見られないかも知れないので、押して映画館まで出向いたという次第。

オペラ映画だからして、音楽は全てモーツァルトその人のスコアから。 但し、台詞も歌詞も英語による。
舞台を古代エジプトから、第一次世界大戦を思わせる、二大陣営の相対する塹壕戦の真っ只中に持って来た。 タミーノとパパゲーノは兵隊であり、三人の侍女は従軍看護婦である。 更に、ザラストロと夜の女王はそれぞれが両軍の指導者と言う設定。 ここでのザラストロは、民衆の好きリーダーとして描かれるのが印象的。 この演出が、フリーメイソンとどう関わりがあるのか、それともないのか、私には判らない。
CG使いまくりの、凝りに凝りまくった演出だけれど、こちとらの体調の悪さが災いしたか、途中ちと退屈してしまった。 残念至極。

ジェームズ・コンロン指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団による演奏は、颯爽としたなかに繊細さを併せ持つ、21世紀のオペラ映画に相応しい現代的なモーツァルトを表現。 これで低弦をもっと効かせてくれていれば尚好かったけれど、あるいは映画館の音響バランスがイマイチだったのかもしれない。
キャストでは特に女声陣が、夜の女王、三人の侍女、タミーナの順で素晴らしかった。

せっかくのオペラ映画、それも「魔笛」だというのに、今ひとつすぐれない体調のお陰で、充分に愉しむことが出来なかったのが残念である。 この映画は、そのうちに、DVDなどでじっくりと鑑賞し直したいところ。
 

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October 28, 2007

ミリオンダラー・ベイビー

 
  ミリオンダラー・ベイビー
  Million Dollar Baby
 
    監督:クリント・イーストウッド
    出演:クリント・イーストウッド
        ヒラリー・スワンク
        モーガン・フリーマン
 
           2004年 米国
 
 
クリント・イーストウッドの監督、主演で、女子ボクシングの世界を描いた映画。

落ちぶれた老トレーナーと、未だ無名のボクサーが出会い、トレーナーの老練さと、ボクサーの負けん気を武器に、勝ち進んでゆくと言う、ボクシング映画として好くありそうなシンデレラ・ストーリー。 その女子版。

老トレーナー役にクリント・イーストウッド。 そんな彼のことを、誰よりも好く理解する旧友の元ボクサー役にモーガン・フリーマン。 そして、30代と遅咲きだが、ボクシングに全てを捧げる一途なボクサー役に、ヒラリー・スワンク。

※トレーナーのフランキーに弟子入り志願するマギーは既に30代。 「女には教えない」、「今からでは遅すぎる」、「ボクシングはタフなだけじゃダメだ」と、すげなく断るフランクだが、マギーの覚悟は生半なものではなかった。 ようやく弟子入りを許可されたマギーは滅法強く、各地の試合で連勝街道を突っ走る・・・・

これが前半。 もしもここで終わっていたなら、この映画は女ロッキーになり得たろう。 それが、後半に至って驚天動地の展開を見せる。 いや、ホントにびっくりしました。 三人の演技が素晴らしくて、見終わってしばらくの間、シーンや台詞を心中で反芻してしまった。 そして、様々なプロットが絡み合って、因果関係を形造っている脚本も見事。
 
 
※以下はQ&A風に

面白かった?:とても面白うございました。

オススメ?:前半の痛快さに比べて、後半はおっそろしくへヴィーなので、誰にでも是非、とは言いません。

印象に残ったシーンは?:沢山ありますよ。
1.マギーの弟子入りを断った時、泣き出されるんじゃないかとうろたえたフランキー。
2.夜遅く、ボクシング・ジム帰りのバスの中でパン(?)を齧るマギー。 未来への希望に満ちて、充実した時間。
3.フランクから海外遠征の話しを告げられ、狂喜乱舞するマギー。
4.フランキーと盟友スクラップの友情。
5.マギー「ヒ・ゲ・の・ば・す・の?」
6.レモンパイ。

また、見たい?:また見るかもしれません。 でも、見るにはそれなりの覚悟が要ると想うので、機会は限られて来るでしょうね。

見終わって、どう?:とても好い映画を見たと言う充実感と共に、心の中に、なにか澱みたいなものが溜まっているのを感じます。

問題作と言える?:問題だけれど、なかなか答えが出せない類ですな、これは。

で、好い映画だった?:それはもう、間違いなく。
 
 

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July 23, 2007

マトリックス

 
 
 マトリックス
 THE MATRIX

  監督:アンディ・ウォシャウスキー、
      ラリー・ウォシャウスキー
  出演:キアヌ・リーヴス、
      ローレンス・フィッシュバーン、
      キャリー=アン・モス

        1999年 米国


子供の頃など、いろいろと妙ちきりんな空想に耽ったりしたものである。
例えば、今自分がいるこの世界は、何処かよその世界で眠っている、誰かの夢の中の出来事に過ぎないんじゃあないかって想った。 だから、次の瞬間、ぱっと眼が覚めると、別の世界の人として覚醒した自分がいたりする、なんて・・・・・かなりヘンな子供だったかもしれない。

数年前に大ヒットしたこの映画を、今頃になって始めて見てみたら、似たようなことを考える人が、やっぱりいるモンだと知ってビックリしたり、納得してみたり。

この映画では、久々にSFらしいSFを堪能した気がする。 その世界観を提示されて、胸がトキメクのをおぼえたもの。 電脳空間と言うものを、ここまでリアルに構築し、見るものに待ったなしで叩きつけてくる映画ははじめて見た。 こんなならば、もっと早く見ときゃ好かったな。
ネオがカプセルの中で覚醒したシーンなど、背筋がゾクゾクと総毛立ったモンね。 こういうのは、ブレードランナー以来の興奮だ。

どうにも気が滅入ってしまいそうな、なんともキツイ世界観なんだけれど、悲劇的な終わり方にはしないでくれるのもブレードランナーと同様。 そのお陰で、見終わった後、随分救われた気がする。
香港から世界一流のワイヤーアクション、殺陣のチームを招いたと言うだけあって、アクションでも思いっきり魅せます。 空を飛び、壁を歩き、銃弾をかいくぐり、更には本格手なカンフー・アクションまで。
現実世界からマトリックスにやって来た彼らだから、常人離れした、物理法則無視の動きが出来るんだね。 ラストに至って、覚醒したネオなど、無敵フラグが立ってしまうし。

それから映像美。 退廃的かつ妖しげなサイバー・パンクの世界。 惚れ惚れするような、スタイリッシュなカットが随所に差し挟まれて、実にカッコ好いです。
大ヒットのワケは、ハードSFとして評価されたと言うよりも、むしろこの辺がウケたのかもしれない。
音楽の方は、あまり印象に残らない。 いまひとつ凡庸かな。
極めて斬新で複雑な設定の割に、ストーリーそのものはスッキリしていて、実に上手くバランスが取れている。

極めて上質のハードSFとして、息継ぐ間もないアクションとして、刺激的でスタイリッシュな映像として、これは滅多に出て来ない傑作と想う。

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February 12, 2006

モーガン警部と謎の男

映画「モーガン警部と謎の男」 (1961年、日)
監督 : 関川秀雄
出演 : ジョン・ブロンフィールド、鶴田浩二、久保菜穂子、中山昭二

久々に時間が取れたので、川崎市市民ミュージアムで標題の映画を観た。 現在、同館では関川秀雄監督作品特集をやっていて、この映画もその一本なのである。

かつてアメリカに「モーガン警部」と言うテレビドラマがあって、我が国でも1958年から1960年にかけて放映されて人気を博していた。(再放送とかあったのかな? 私自身は観た記憶がないけれど)
これはその「モーガン警部」を日本に招いて撮った純然たる日本映画である。 ジョン・ブロンフィールド扮するモーガン警部の吹き替えは、低声の魅力で聴かす若山弦蔵。 この当時、お歳は幾つくらいだったのだろう。 それにしても渋い声音。

テレビドラマから発展した映画と言うのは今でもよくありますね。 「鬼平犯科帳」とか、「必殺!」とか、テレビドラマの設定はそのままに、スペシャル版と言う位置付けで。 でも、この「モーガン警部~」はもっと凄いと思う。 この時代、向こうのスターを役柄込みで連れて来て、オリジナルストーリーを造っちゃったんだから。

それにしてもこの映画、冒頭のアリゾナの荒野でのシーンはどうみても日本でのロケだったりして、今観るとアヤシイところだらけでタノシイのである!
鶴田浩二(若い!)扮する特攻隊上がりの流れ者風早が、中山昭二扮するかつての戦友中川刑事と再会するシーンの背景は、これはどう見ても皇居のお壕・・・・なんだけれどあの辺りって、この当時はおっそろしく閑静だったんだねえ! 東京タワーなんて、ものすごく高く感じるよ。 (都内に高層ビルがひとつもないのだ)
その風早が中川刑事の家に招かれて、お膳を挟んで中川夫妻と旧交を温め合うシーンも好かった。 60年当時の食卓風景だ。 え? もっとマジメに観ろって? ま、こういう発見のあるのも古い邦画の楽しみ方の一つだってコトで何卒ご海容願いまっす。

さて、ジョン・ブロンフィールド。 米国のスターとして、日本の役者陣の中でぽっかり浮いちゃうんじゃないかと懸念されたけれど、いやいや、そんなことは全然なかった。 そこは流石にプロの役者なのである。
鶴田浩二や久保菜穂子との共演もごく自然にこなし、中山昭二をはじめとする警視庁の捜査メンバーとの呼吸もバッチリだ。 風早との殴り合いシーンはボロボロになるまでやるし、ラストの犯人との銃撃戦では敵弾を避けるのに地面に這いつくばって進む。 その真摯な演技に、ストーリーの持つユルさが相まって、ホントに好い人なんだなあ、って感想を抱きましたです。 ハイ。
1950年代後半から1960年頃に掛けて、こういう人がスターだった時代があるんだね。
堂々たるB級作品でした。

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