映画:風が強く吹いている
風が強く吹いている
Feel the Wind
監督、脚本:大森寿美男
原作:三浦しをん 「風が強く吹いている」(2006年)
音楽:千住明
出演:小出恵介(10区 ハイジ)
林遣都 ( 9区 カケル)
森廉 ( 6区 ユキ)
中村優一( 1区 王子)
内野謙太( 8区 キング)
ダンテ・カーヴァー
( 2区 ムサ)
橋本淳 ( 5区 神童)
川村陽介( 7区 ニコチャン)
斉藤慶太( 3区 ジョータ)
斉藤祥太( 4区 ジョージ)
2009年 松竹
今年、2021年の箱根駅伝ではマサカの大逆転劇が演じられましたね。
一月二日の往路は、有望視されていた青山学院大学がマサカの失速を来たす一方で、創価大学が大健闘。
三日の復路では、その創価を追い上げる駒澤大学が10区に至って劇的な逆転。 そして優勝。
私は、二日の往路こそお終いまで観ていましたけれど、三日の復路は(忙しくって)完全に見逃しました。(地域のお仕事あれこれに追われて、すっかり忘れていたんです orz)
一番イイところ、それも滅多に無いような(それこそ十年に一度レベルの)名場面を見逃してしまったわけですね。 ホント、馬鹿な見方したよなぁ。^_^;
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※ 寛政大学の新一年生、カケルは(ワケあって)重度の金欠。
独りで(内気で不器用な性格もあいまって)困り果てているところを、四年生のハイジに声を掛けられ、オンボロ学生下宿「竹青荘」に連れて来られます。
あちこち老朽化が酷いものの、居心地好く、学生がなにをやっても怒られない(床を踏み抜いても w、煙突みたいに煙草吸っても (>_<)、床が抜けそうになる程漫画を持ち込んでも ^_^;)、しかも栄養満点の賄い付きという好条件のアオタケ(竹青荘のことを、住人たちはこう呼びます)に住まいも定まり、これでカケルも一安心です。(^ァ^)
しかし、世の中タダより高いものは無いワケで・・・・(笑)
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そのアオタケの住人らは、いずれもクセのある、そして健康この上ない九人の男子学生。
皆、部/サークル活動などとは縁もなく、それぞれに学生生活をエンジョイしていました。
先住の八人の学生らに、新入りのハイジを引き合わせて、これで十人になったと(何故か ^_^;)妙に嬉しそうなハイジ。
アオタケってのは(学生下宿と言うのは世を欺く仮の姿で)実は寛政大学陸上部の合宿所だったのです。(爆)
カケルは高校時代(とある事件で挫折するまでは)陸上部で長距離に取り組み、将来を嘱望されたランナーでした。
ハイジがカケルをアオタケへと誘ったのは、その人並外れた、驚異的な脚力を見込んでのことです。
それにしても、若い奴らが10人集まっての下宿暮らしなんて、そりゃもう愉しいに決まってますよ。(笑)
その夜、アオタケの一室で催されたカケルの歓迎会の席上で、ハイジは立ち上がり、そしてこう宣言しました。
「オレたち十人で箱根を目指す!」
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それにしても、三浦しをん の原作「風が強く吹いている」(2006年)。
あの、箱根駅伝がテーマのスポ根・・・・と言うより、いっそファンタジーと言って好いくらいの、大胆な展開をみせたお話しを、よくぞここまで忠実にドラマ化してくれたもんです。
なにしろ登場人物が大勢(寛政大学の陸上部員だけでも十名)に渡りますし、主要キャストのひとりひとりに異なる個性を発揮させ、またそれぞれの見せ場もありまして、これは実写映画として構成する上で、さぞかし難しかったのでは? なんて、いろいろと想っちゃいます。(^ァ^)
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箱根駅伝に出ようだなんて、はじめは冗談としか取れなかったアオタケの面々ですが。
しかしハイジは本気でした。 そして、それを実現させる為の精緻な計画も立案済みです。
でも、カケルにだけは判っていました。 それが、実際はどんなに険しく困難な道かってことが。
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箱根駅伝をテーマとする映画だけあって、ランニングのシーンは見事(いささかも手を抜かず)に撮られています。
中でもカケル役・林遣都の走る姿のキレイな事といったら!
これだけでも、この映画を見る価値があると想う。
小出恵介演じるチームのリーダー・ハイジも好かったし。
それまで走ることにはまるで関心の無かった(カケル、ハイジを除いた)面々が、やがて、ハイジの巧みなリード/指導を得てどんどん(そこは、皆若いですし (^ァ^))変わってゆきます。
ランナーとして、短期間の内に飛躍的な成長を遂げる彼らでした。
そして予選会に勝ち抜き、遂に箱根駅伝への出場権を獲得する寛政大学陸上部!
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そして映画の後半は、まるまる箱根駅伝のシーンで占められます。 こりゃ、大変なモンですよ。(笑)
それにしても、よくぞ我が国でこれだけの規模の映画を撮ったよナァ?! なんて、ワタシャひたすら感心しました。w
中でも、駅伝のコースを俯瞰してゆくシーンなど、沿道で応援する観客として大勢のモブを投入。 よくこれだけ集められたモンです。 流石は駅伝の国、日本。(笑)
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長距離走の経験など皆無のシロウト集団(カケル・ハイジを除いて)が、箱根駅伝に出場するってぇ?! (@_@)
これって無論、スポ根漫画でしかありえないようなトンデモ展開、ファンタジーです。
これがアニメならば、まだしも上手くゆくカナって気もしますけれど、でもこれは実写映画。 そこにはそれ相応の、確かな説得力が要求されます。
ではこの、現実ではありえないお話しに、如何にして説得力を持たせるか?
この映画は、”走りのシーンに拘ること” でその難題を実現させました。
若い十人の役者たちは、とにかく走ります。 走って走って走りまくって、ランナーに成り切ります。
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そして、駅伝シーンは特にリアルに徹しました。
なにしろ、映画を見る我々(の多く)は、毎年正月にテレビで箱根駅伝を観戦しており、こと駅伝に関しては眼が肥えていますからね。(笑)
ちょっとしたアラでもあろうもんなら、たちまち見付けてしまいます。
寛政大学の十人はもとより、他大学の陸上部員、大会の関係者、更には取材の車両、そして、なんといってもコース沿いを埋め尽くす観衆まで、実際の箱根と同様です。
こうして、お正月の(テレビで見る)駅伝中継と寸分違わぬものにすることで、映画の説得力が際立ちます。
伝統の箱根駅伝。
新参 & 弱小・寛政大学陸上部の奮戦振りを通じて(テレビ中継などでは観られない)その舞台裏の様子も垣間見え来て、なかなか興味深かったです。
なにしろ部員が十名しかいない寛政大学です。
ランナーのサポートをするメンバーが絶対的に足りません。
なので、往路を走り終えた選手は、即座に移動して今度は自分がサポートに回らねばなりませんでした。
正月二日の箱根に向かう初詣客に混じって、電車移動する陸上部員たち。(笑)
経験・人材・ノウハウ・お金・時間。 なにもかもが圧倒的に不足しており、ギリギリのところで戦わねばならない寛政大学。
学生たちの行動の細かな描写が、そのまま緊迫感につながります。
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体力不足からチームのブレーキとなりがちの王子。
彼を描くパートが意外と(!)良かったですね。
趣味の漫画ならば、一日中でも読んでいたい彼です。
でも、走るのは好きじゃなかった。(>_<)
それでも、キツイ練習に耐えてここまでやって来た王子。
彼って(我々のような)一般人の代表ですね。
学生の頃やらされ、苦しかった長距離を思い起こさせる(作品中での)役割だったんだってことに、今頃になって気が付きました。(こんなこと、原作を読んだ際には想いもしませんでしたけれど ^_^;)
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でも、バカな双子(ジョータ、ジョージ)のブレーキ描写 w。 アレはまったく不要だと想うんだよね。(笑)
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カケル(林遣都)。
この映画は(陸上部の他のランナーもそうだけれど)とりわけカケルの疾駆する姿が素晴らしく綺麗で、ひたすら見とれてました。
なんたって、その走るフォームの美しいこと!
彼が天才長距離ランナーって設定も、なるほど、これならばピッタリ来ます。
筋肉は嘘をつかないですね。(^ァ^)
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そしてハイジ(小出恵介)。
高校時代は陸上部のエースだったが、ワケあって引退した男。
そして今、不可能を実現させた男。
終始一貫して熱く、しかし怒らず・威張らず・嫌味なく。
シロウト集団を巧みに指導して、ついに箱根へ連れてゆくという、極めて頼もしいキャラです。
絶妙な按配で態度がデカイ(笑)ってのも好いね。
但し、レース終盤での大ブレーキ(寛政大、なにかとブレーキの多いチームです ^_^;)はちょっとね。(>_<)
ゴール目前で(観ているコッチまで)気が急いている場面だけに、ジレッタクなって共感する余裕も無くなっちゃった。orz
(ここに限らず)ブレーキ場面(?)に関しては、あるいは原作を無視しても好かったのでは? ^_^; なんて想いました。
人気の無い土手道を、独り黙々と走る青年の姿。
そんな、走ることの原点から、緊迫した駅伝シーンまで。
華やかな場面ばかりと限らず、地道に努力する姿までをしっかりと描いていたのが好かったです。
箱根駅伝を真正面から描いたこの映画。
(まぁ、拙いところもあったけれど ^_^;)総じてとっても好かったです。
これから箱根駅伝の中継を見るたび、彼らのことをも思い出す事でしょう。(^ァ^)
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