November 30, 2009

ウォーターボーイズ

   
  
 ウォーターボーイズ
 Waterboys
  
 
  監督:矢口史靖
  脚本:  〃
  出演:妻夫木聡 (鈴木:水泳部の部長)
     玉木宏 (佐藤:元バスケ部員)
     三浦哲郁 (太田:マッチョ志向のダンス少年)
     近藤公園  (金沢:ガリ勉君)
     金子貴俊  (早乙女:乙女チックな少年)
     平山綾
     竹中直人
     眞鍋かをり
 
       2001年 日本
  
  
今時、男子高が舞台の映画なんですと! それも水泳部ですよ。 男子生徒たちが、男だてらに(!)シンクロナイズドスイミングに挑むんです。 日焼けした男子らの一糸乱れぬ演技、水面にキラメク競泳パンツ・・・・ってそんなモン一体誰が見たがりますかて~の!?
  
 
※ それぞれの理由で(部員一名のみで廃部寸前の)水泳部に集結した五人。 行き掛かりから、学園祭への参加を目指してシンクロナイズドスイミングの練習を始めることに・・・・
 
 
見ず知らずの世界に図らずも首を突っ込み、そのオモシロさがようやく判って来たところで挫折。 それが悔しくって、発奮して、頑張り抜く姿を明るく描くコメディ・・・・というのは、同じ矢口史靖監督のスウィングガールズと同様のパターンですね。(製作順では「ウォーターボーイズ」が先になりますけれど)

ウォーターボーイズのリーダー、鈴木を演じるのは、後に2009年のNHK大河ドラマ(先日最終回を迎えた)「天地人」で主役の直江兼続を演じた妻夫木聡さん。
一際ガタイの良い佐藤役に、後に「のだめカンタービレ」(実写版)で指揮者・千秋真一を演じた玉木宏さん。
後にトップの座を得た二人も、本作の頃は未だ駆け出し時代。
この映画では世に出る前の姿、俳優としての出発点(二人とも、これがデビュー作というわけではないですが)を追い駆けることの出来るのが興味深いです。 三つ子の魂百までじゃあないですけれど、ここはお二人の持って生まれた個性を見届けてみたいって気持ちにさせられますからね。

妻夫木聡さん。 映画の主役として当たり前かも、ですけれど、流石にこの頃から光り輝くものがありますね。 少しも大げさなところはなく、極々自然体に振舞いながら、でも、どのカットでも隙を感じさせられません。
鈴木の素直で、しかし優柔不断な性格は、「天地人」での直江兼続の青年時代に通じるところがありますね。 いや、これは言い換えれば、そのキャラに併せたかたちで兼続像が創られたということか。
ともあれ、妻夫木さん持ち前のキャラはこの当時、既にしてハッキリと打ち出されていたのだと想います。

さて玉木宏さん。
ここでは、後に「のだめカンタービレ」の千秋役で見せたスマートさは未だ出現せず。
この当時と現在とのギャップという点で言えば、妻夫木さんを遥かに上回っていますね。 玉木さん、この後大化けを果たしました。
本作に見る玉木さんは、荒削りで如何にものムサクルシイ男子で、佐藤の、何事にも中途半端な性格も預かって、二枚目って感じですらありません。
後のイケメン男優も、この当時は未だまだ原石の状態だったんですね。 とは言え、コメディまでイケる器用さがあり、演技に瞬発力を感じさせられます。
そして後のスターとしての片鱗をチラリと見せてくれる、冴えたカットも時折あって、それを見つけるのもまた、映画を視る愉しみの一つかと想います。

たっぷりとあるギャグシーンはしかし、時に「スベッてんじゃないの?」と思わせられるところもあるのですけれど、でも構図など一々キレイで、実に好く計算されている。 隅々にまでコダワリや美意識が通っているのを感じさせられます。 つまり、とっても完成度が高いってワケで、だから、繰り返し見ても面白いのです。
中でも、「伊勢佐木町ブルース」のシーンは、演出から構図までもう最高でした。 背景の、頭上を走る電線まで(ある意味とても美しく)その存在を主張していて。

幾多のトラブルを乗り越え練習を重ねたウォーターボーイズが、ようやく迎えたクライマックスの学園祭。
シンクロナイズドスイミングのお披露目シーンですけれど、これがもう実に愉しかった!
結構長いシーンなのですけれど、でもあっという間に終わってしまった気がします。
この映画がここまでオモシロくなかったという人でも、このシンクロの見せ場で十分に元が取れる筈・・・・ええ、多分。
通常のシンクロ競技と比べてウォーターボーイズのは、とにかくなんでもかんでもアリの演出。 男子高校生らしいおバカさと、若いパワーが炸裂して魅せます。
 
映画の終盤。 全ての演技を終えて、プールから上がるウォーターボーイズ。 満場の拍手を受け、高揚感に包まれた中で、さらりと終わるラストシーンが実に好かったです。 青春の一区切りって感じのする余韻がネ。
 
 
男子シンクロの映画。 結論として、ヒジョーにオモシロかったです!
映画的に、実にイイところへと目をつけたモンですね。
散々笑わせくれて、でも高校三年の夏・・・・高校生でいられるのも、もうあとほんのわずかという、その切なさ甘酸っぱさも味わい深く。
 
妻夫木、玉木両人気男優のデビュー当時、その未だ子供っぽさを残した姿を確認することの出来る貴重なフィルム。
矢口史靖監督のこのタッチは、この後「スウィングガールズ」へと引き継がれることになります。
  
  

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November 24, 2009

NHK大河 天地人 最終回

 
 
今年のNHK大河ドラマ「天地人」が最終回を迎えました。
この後、十一月末から十二月いっぱいに掛け、同じ枠を使ってスペシャルドラマ「坂の上の雲」を放送する関係で、今年は例年よりも早目の幕切れです。
それにして毎年、NHK大河の最終回イコール年の瀬という感覚でいましたから。 なんだか調子がクルってしまいますねえ。
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
上杉謙信の養子景勝に仕えた忠臣、直江兼続の生涯を描いた今年の大河。
弱肉強食の戦国の世にあって、どこまでも義を貫こうとする上杉家を描いたのはイイんですけれど、やはりあちこちムリが出てしまったと想います。
(最終回のひとつ前なんて、<義の上杉>ならぬ、<義の真田>になっちゃってるし)
なにしろ、直江兼続の為すことはす常に正しく一点の瑕疵もない・・・・・そんな大前提が成り立っているかのようなドラマ展開なので、作品の奥行きがなんとも浅く感じられて。 結構シラケちゃう部分もありましたね。
特に、関が原~大阪の役では、一人家康だけを悪モノにして済ませているし。
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
ともあれキャスティング。
また、気に入ったところだけ書いてみることにしましょう。
 
上杉家の家老直江兼続役、妻夫木聡。
老境に入っての、吹っ切れたような笑顔が印象的でした。
少年時代を演じた加藤清史郎クンの人気は、今や社会現象になっていますね。
 
その主、上杉景勝役、北村一輝。
歳月の経過と共に貫禄の増してゆくのが頼もしかったです。
 
兼続の奥方お船役、常盤貴子。
ドラマの前半では、この方の立ち姿と所作の好さについて触れましたけれど、奥勤めするようになったドラマの後半では打ち掛け姿が多く、こうなると魅力半減しちまったですねえ。 まあ、しょうがないんですが。
 
上杉謙信役の阿部寛と織田信長役の吉川晃司。 共に見事なハマリ役でした。
 
  
と、この辺までは前回も書いたのでしたね。
さて、物語の後半に至って登場した人々の中では・・・・
 
豊臣秀吉役の笹野高史。
ご本人もインタビューで語ってられましたけれど、素のお顔からして秀吉(の肖像画)似の笹野さんです。
ひょうきんで、賢くて、そしてコワいお人。 周囲の人間をたらし込む、手練手管の演出も好かった。 文句なしに、歴代秀吉役者ナンバー1選出です!
 
徳川家康役の松方弘樹。
権謀術数の限りを尽くす、どこまでもヒールに徹した家康です。
でも、どこかに憎めないんだな。 この人なればこそ、三河衆も命を託して仕えたんだろうと、そう納得させられるスケールの大きさを感じるんですね。
腹黒ヒョーキンな家康像を打ち立てて、ベテラン役者の至芸を見せて頂きました。
そして、そんな家康を中心とした創業期の徳川幕府、その重臣たちとの会議シーンの緊張感。 もしもその座敷に居合わせたなら、胃が痛くなるのは必定の緊迫感!

伊達政宗役に松田龍平。
この方については今まで存じ上げなかったんですけれど、如何にも役所を心得た感じで、センスの好さが伺えます。
家康とはワルコンビ結成。 キツネとタヌキというか、騙し合いの腐れ縁で、ある意味、このドラマの中で一番オモシロい二人でした。
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
さて、来年の大河ドラマは幕末もの、「龍馬伝」です。 ネタとしてはあまりにも定番ですね。 岩崎弥太郎の視点で描かれるのが新趣向。
でもその前に、「坂の上の雲」が気になる私です。
 
 
     NHK大河 天地人 
 
 

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November 20, 2009

喜劇 駅前旅館

 
 
 喜劇 駅前旅館
 Kigeki ekimae ryokan
 
 
  監督:豊田四郎
  脚本:八住利雄
  原作:井伏鱒二
  出演:森繁久彌 (生野次平:柊元旅館の番頭)
     フランキー堺 (小山欣一:旅行代理店の添乗員)
     淡島千景 (お辰:番頭たちの行きつけ、辰巳屋の女将)
     淡路恵子 (於菊:次平のかつての恋人)
     伴淳三郎 (高沢:次平とは旅館の番頭仲間)
     森川信 (柊元三治:柊元旅館の主)
     市原悦子 (修学旅行中の女学生)
 
       1958年 日本
 
 
先日惜しくも亡くなられた森繁久彌さん。
その出演映画の代表作に数えられる、駅前シリーズの第一作を見ました。
昭和の三十年代に、上野駅界隈の旅館を舞台として造られた人情もの。 もちろん当時の上野駅の映像も登場します。 リアルALWAYSですね。

さて、私(ばかりではないでしょうけれど)の場合、子供の時分からテレビやラジオを通して培ってきた森繁感というものがまずあって、たとえば俳優/コメディアンとして活躍していても、あるいは知床旅情を唄っても、そこにある種インテリジェンスや大人の風を感じ、また碩学の演劇人、有徳の士という印象があります。 だからして、どんなドラマに出てもコメディーをやっても、それは只の役者ではない、文化人・森繁が演じているという意識が付いて廻るんですね。

この映画での森繁さんも、只々面白可笑しくして笑わせる、というばかりではないですね。 それに、(撮影年度からして当たり前ですけれど)とってもお若いのです。
上野駅前、柊元(くきもと)旅館のベテラン番頭生野次平に扮した森繁さんは私の中の森繁像、後年の貫禄に充ち満ちた熟年ではありません。(映画が始まって暫らくの間、出演者の内一体誰が森繁さんか判然としなかったくらいです)
また、メガネもヒゲもなしで、どちらかと言えばのっぺりした顔が、如何にもインパクトに乏しいのですよ。 今時の俳優/タレントによく見られるような、いわゆる濃い顔とは正反対な、当時の森繁さんです。

         ▽▲▽▲▽▲

高度経済成長期の日本。 東京の東の玄関は上野駅。
その駅前に集結する数多の旅館は、永らく上京の旅人が宿を取るのに欠かせぬ存在でした。
が、高度成長に伴い、その客層はかつてのような個人客から、修学旅行(女学生役、若き市原悦子さんのぶっ飛び加減!)や社員旅行などの団体客へと移り変わりつつあります。

いきおい旅館の方も、個人客のリピーターよりも団体客相手をメインにと経営方針がシフトしてゆくわけで。
こうなって来ると、海千山千の番頭が腕を揮ってきた職人芸的な客寄せの手管や、肌理細やかなサービスなどはもはや過去の遺物。 なにしろ旅館としては、旅行代理店が次々に団体客を突っ込んで来るのを受けて、スピーディに捌いてゆけばそれで好いんですから。
と言うワケで、老舗旅館へ怒涛のように押し寄せる団体客。 その喧騒の日々。 昭和三十年代のエネルギーがスクリーン一杯に横溢します。

この映画、題名に喜劇と銘打ってはいますけれど、大笑いできる肩の凝らないコメディーを期待してはイケマセン。 一途に笑いを求める方には向かないのじゃあないかな。
都会の片隅でしたたかに生きてきた者たちが、時代の流れに押され、次第に居所を失ってゆく。 そんな日々の哀歓。
中でも哀の側がとても印象的で。 ユーモアよりは、ペーソスの配分がハッキリ勝っていますね。
それから(もう決して若くはない)男の意地。

笑いどころなど、今日とはもはや感覚がズレてしまっているのか、ストレートには笑えないシーンもあるし。 それよりも、当代一流の芸達者らによる芝居、その練達のアンサンブルを賞味すべし、そして繰り返し観て愉しむ価値のある映画と想いました。
森繁さん、やはり偉大です。
 
 

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November 13, 2009

間宮兄弟

   
  
 間宮兄弟
 The Mamiya Brothers
 
 
  監督:森田芳光
  脚本:森田芳光
  原作:江國香織
  出演:佐々木蔵之介(間宮明信)
     塚地武雅(間宮徹信)
     常盤貴子(葛原依子)
     沢尻エリカ(本間直美)
     北川景子(本間夕美)
     中島みゆき(間宮順子)
 
        2006年 日本
 
 
以前ここでもご紹介したことのある、同名の小説を原作とする映画です。
あの小説を私は、女流作家が女性読者向けに書いた、言わば女性視点の作品として見て、それへの違和感(だったら読むなってハナシではあるんですけれど)を申し述べたのでしたっけね。

さて、映画の方は監督・脚本が森田芳光さん。
果たして、小説とは正反対の性格に仕上げられていると想いました。

齢三十代にしてどちらも独り身を通し、仲良く二人暮らしを続ける間宮明信・徹信の兄弟。
長男・明信役に佐々木蔵之介さん。 そして次男・徹信役に塚地武雅さんという、見事なまでに対照的な体型の二人。(見ればみるほど納得!なキャスティング)

諸事律儀な間宮兄弟。 日々の仕事では何事にも手を抜かず誇りをもって取り組み、生活のあれこれや、沢山ある趣味の一つひとつにも至極真面目に取り組む暮らしぶり。 そして、なにより家族を大事に想う二人です。
人間関係にも誠実・・・・というか、ハッキリ言ってこちらについては二人とも至って不器用ですね。

明信の奉職するビール工場、その見学コースの風景に私は見覚えがありました。 このシーン、以前私も訪ねたことのある、サッポロビール千葉工場で撮影したようです。

多趣味かつ凝り性な兄弟の住まうマンションの室内は、本やビデオ、ボードゲーム、雑多なコレクション、果ては自作紙ヒコーキなど、これまで二人して愉しんできた宝物で一杯です。(美術担当の労作。 その凝りまくりぶりが見もの!)
男の子の部屋が、そのまま大人向けになったようなもので、いわば大きなオモチャ箱(ただし趣味好く整理されて、とても居心地の好さそうな)の中。 しかも、そこかしこからアナログ的でどこか懐かしい雰囲気が漂ってきます。 二人の部屋の在り様そのものがあまりにも雄弁で、見れば、間宮兄弟というものタチドコロに判る仕掛けなのです。

そんな、世にも奇特な兄弟の部屋を興味シンシンで(というか完璧にキョーミ本位で)訪れることになった妙齢の女性たち。 でもこれ、兄弟にとっては空前絶後の大事件なんです。 彼らの住まいを、母親以外の女性が訪ねてくれるなんて!

ドラマは時にドキュメンタリータッチに切り替わったり、また素で会話しているとしか想えない瞬間があったり、不思議~ファンタジックな描写になってみたりと、何分とりとめが無いのですけれど、こういう変化球を交えた作風、私は結構好きなのです。
間宮家にやってきた女性たちを帰した後、兄弟して執り行う反省会(!)のはしゃぎっぷりときたら!
これって、放課後の男子同士が交わすバカ話しそのものですよ!!

兄弟の母親役にまさかの中島みゆきさん。 サスガの存在感で、このキャスティングも秀逸と想います。

そして、葛原依子先生に常盤貴子さん。
綺麗なんだけれど、でもどこかヘンな小学校女教師を好演。
この方、所作がとってもイイんですね。 今年のNHK大河ドラマ「天地人」での、主人公直江兼続の奥方お船役でもそう感じたのですけれど。 その歩き方や、なにげない仕草がいちいちとても雄弁で、葛原依子先生という人物のユニーク(!)さが伝わってくるのです。

あと、DVDにオマケとして付いていたオーディオコメンタリーが取り分けイイ出来でした。
森田監督ってオモシロくってサービス精神旺盛な方ですね。
コメンタリーの中で脚本と演出の工夫、伏線の数々、製作上のコダワリが次々と開陳されるので、映画が倍愉しくなりました。

アクションとかウットリするようなロマンス、それにそもそもクライマックスなんてもののの無い、ローテンションで小ネタの連続する映画です。
生きていれば、悲しいことや上手く行かないこともあるけれど、でも、失敗しても傷ついても、いつも傍にいて支えあう人のいること。 毎日を大切に生きること。 それがなにより。
モテナイ男でどこが悪い? なんて、痛快に言い切ってくれている気がしました。

女性視点で描かれた原作に対する、この映画は男性視点からの見事な回答です。
 
 

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October 25, 2009

時代屋の女房

 
 
  時代屋の女房
  Jidaiya No Nyobo

 
     監督:森崎東
     脚本:森崎東、荒井晴彦、長尾啓司
     原作:村松友視
     出演:渡瀬恒彦
        夏目雅子
        津川雅彦
        大坂志郎
 
           1983年 日本
 
 
小生、学生の頃そして社会人となってのかなり長い期間、合唱団で唄うことにどっぷりと、それこそ身も心もハマっていた時代がありました。 今は、もう止めてしまったのですけれどね。
その頃、相次いで所属した幾つかの合唱団(活動形態やメンバー構成、その目指す音楽など各々異なる)の内の一つに、品川区を拠点に活動する混声合唱団がありました。
 
その団では週に一度ある練習の会場として、品川区は大井にある小学校の教室を借りていたものです。
練習が何曜日にあったのかなど(あの頃、熱心に通ったくせに)もはやハッキリと想い出せなくなっていますけれど、でも、いつもJR大井町駅から件の小学校まで、商店街続くの緩い坂を歩いて通った、その道程は善く覚えています。
合唱の練習を終えての後、テノールとベースのメンバーを中心に呑み歩くのが恒例でした。 いえ、あの界隈は廉くてイイお店が幾らもあってサ。 本当によく呑んだなぁ。 そういうのが、ひたすら愉しかった頃だったんですね。
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
この映画の原作たる小説「時代屋の女房」は、第87回直木賞を受賞した村松友視の代表作。
そのモデルとなった骨董店・時代屋は、大井町駅から小学校に往く経路上、大井三つ又の地に実在した小さな一戸建ての店舗です。 1983年に撮影されたこの映画の中では、まさにその時代屋の建物、つまりホンモノがロケに使われています。

品川の合唱団に通っていた私は、ですから大井町駅から練習場所のある小学校への往き返り、週に一度は時代屋の店舗を目にし、その前を歩いていたわけです。 残念ながら、お店の中に入ったことはないのですけれど。
ともあれこの作品、私にとって、自分の一時代を振り返るようなカットが幾つもあって、見ていて堪らなく懐かしい気持ちになってしまうのです。
 
時代屋の主人安さん役に渡瀬恒彦さん。 こういう寡黙な男をやらせると、やはりピタリとハマリますね。 漂わす渋さもさすが。 もっとも、真弓からは「ダンマリスケベ」などとあっさり看破されてしまう安さんです。

そして、その女房真弓役に夏目雅子さん。 一世を風靡した、早世の惜しまれる名女優ですね。 けれど私は、何故か惹かれるものをあまり感じないのですよ。 特段苦手とか嫌いとか、そういうワケではないんですけれど、演技力とか存在感などとは別のところで、どこか相合わないものがあるのかもしれませんね。

原作の小説も(もう随分と昔に)読みましたけれど、あちらと比べて映画の方は全体の質感(音楽なんか特にね)がかなりウェット、多情多感気味。
描写が生々し過ぎて、いささか下世話に感じてしまうのです。 もっとしっとりと、会話や雰囲気を主にして進めればいいのに、とも想います。 ベッドシーンなんて要らないからサ。
原作ではもっとずっと洒落ていて粋や軽み、そしてどこかうら哀しい空気感があったと想うのです。
 
そうは言っても、安さん真弓夫婦と友人達との台詞のやりとりや、大井界隈の風情など、その生活感漂う描写はとてもイイ。 この辺りは映画ならではですね。
そして、真弓の標榜する「何も言わず、何も聞かずが都会の流儀」に対して、そうはいかない安さん・マスター・今井さん達それぞれの抱える未練の描き方などストレートで判りやすく、映画は映画で非常に面白かったです。
私がちょっと原作に拘り過ぎているのかも、ですけれど。
 
今回ネットで調べて知ったのですけれど、時代屋の建物は既に取り壊されてしまっているそうですね。 大井三つ又のあの狭い敷地へと綺麗に収まって、なかなか風情のあるお店でしたけれど。 諸行無常。
この映画の公開当時、「時代屋の女房」のポスターが当の時代屋の店舗にまで貼ってあったのがなんだか面白可笑しく、未だ印象に残っています。
あの当時は小説に関心がなく、映画も見ずじまいだったのですけれど、今頃になって何気にDVDを鑑賞して時代屋と再会した私は、あの頃あの界隈の風景一々が恋しくてなりません。
 
 

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September 21, 2009

ヱヴァ破、ふたたび

 
 
絶賛ロングラン公開中の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」に続いて、エヴァンゲリオンの新劇場番二作目となるこの映画もヒットのようです。

一度観ただけでは飽き足らず(いずれDVD化されることは無論承知の上で)二度、三度~更にさらにと、何度も映画館へと脚を運ぶ熱心なファンの少なくないのが、他のヒット映画とは違うところです。

で私も、映画館のスクリーンで見ることの出来る今のうちに、と想ってまた観てきましたよ。
やっぱり今度も面白かったです。 二回目ともなると、台詞のひとつひとつをよく噛み締め、映像の細かい描写まで確認出来る分、映画をより一層愉しむことが出来ますからね。 リピーターさんの大勢いることも、大いに納得がゆくのです。

俯き加減の中学生・碇シンジ君の登場から、壮大なヤシマ作戦に至るまでの作品世界、その台詞/カットの一々について(まるで神話の語り部の如く)「新世紀エヴァンゲリオン(以下、前作)」に忠実になぞらえてみせた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」に対して、前作の世界感を構成してきたキーポイントを次々に書き換えて来た本作、破の段。

         ▽▲▽▲▽▲

今回観て私がオモシロいと感じたのは(本筋とはまったく関係のないところですけれど)背景に描き込まれた電力設備の描写でした。

SFものでは大概、電子/機械工学、そしてコンピュータ関連の映像が多い、というかSFものの製作者がもっともハリキルのがこういった部分の描写ですよね。 前作だと、エヴァンゲリオンとシンクロする際のサイバー・パンクな描写も印象的でした。

それが、新劇場版では背景に電力関係の描写が多々見られます。 ええ、電子ではなくて電力。 電子装備満載の近未来世界に、なぜかプリミティブな部分が目立つんです。

それは思えば、序の段のクライマックスに描かれたヤシマ作戦でも顕著でした。
日本中の電力全てを一本のビームに収束させて一大血戦に臨むという、燃える(!)クライマックスの描写は巨大電力設備の大集合。 人力と電力を掻き集めての総力戦でした。

で、本作の舞台となる第3新東京市の描写では、街中に張り巡らされた配電線。 電柱と建物を行き来するアレの描写が印象的です。

従来、景観を破壊するとされ、また諸外国(といっても主として欧米でしょうけれど)と比較されて・・・・こんなのは日本だけみっともない・・・・みたいに言われてきた街中の電柱とその間を複雑に行き交う架空電線。
とても近未来の日本、それも使徒迎撃専用要塞都市としては似つかわしくないと想うんですけれど。
でもそれを、わざわざ描きこ込んできたのはとても興味深いこと、とこう想ったわけです。

街中の電線たち。 改めて眺めると景観の一部として、なんだか人々の暮らす生活圏に張り巡らされた血管のようにも見えてきます。 そんな生命観を、新劇場版の作品世界にも持ち込みたかったのでしょうか。
ところで私、こういった街の配電線や電柱。 実を言うと、これはこれで嫌いではないのですよ。
こうして電線の張り巡らされた風景を、ある意味キレイとさえ想う、そんな感覚があります。

そういえば前作では、従来のアニメでは極力避けられていた日本語の文字表記(特に明朝体)をスクリーン上で多用して、そのカッコよさを世界にアピールしたものでしたね。
工場萌えが認知され出しているご時勢ですから、今度は電気関係がクルかもしれませんよ。
なんて、勝手にあれこれ考えて愉しんでます。
 
 

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July 30, 2009

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

 
 
 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
 Evangelion: 2.0 You Can (Not) Advance
 
 
    総監督:庵野秀明
    出演 :緒方恵美  (碇シンジ)
        林原めぐみ (綾波レイ)
        宮村優子  (式波・アスカ・ラングレー)
        石田彰   (渚カヲル)
        坂本真綾  (真希波・マリ・イラストリアス)
        三石琴乃  (葛城ミサト)
        山口由里子 (赤木リツコ)
        山寺宏一  (加持リョウジ)
        立木文彦  (碇ゲンドウ)
 
            2009年 日本
 
 
 
公開中の映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を観て来ました。

オリジナルのテレビアニメ、新世紀エヴァンゲリオン(全26話)の放映されたのが1995年~1996年のこと。
その後、新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2(1997年)、新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に(1997年)と続き、これらは未だ評価の高い超人気コンテンツです。

そして、新たな再構築の始まりとして前作 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 の公開されたのが2007年の夏。 掛け値なしの傑作でした。(私は二度劇場に脚を運びましたっけ) あれから2年経ったんですね。

今回も素晴らしい出来ですよ。 待ち続けた甲斐は、十分にありました。
オリジナルのテレビ版や前作映画のテイストを残していた序の段(再構築、リビルド版として新たに始まった物語の「序」として、それは実に正しい方向付けなのですけれど)とは異なり、今回は物語の造り諸々をこれまでとは異なるカタチに改めています。 まさに破の段。

映画館の巨大なスクリーンをフルに生かした画面構成。 ド派手なアクション・シーンや精緻な描写により、堂々たる娯楽作品として誰にでも(コアなファン限定ではなく)愉しめる映画に仕上がっています。
ヱヴァンゲリヲンと言えば、今ではアニメ界のみならず邦画の大看板。 見込める市場が大きく、注目度も高い作品ですから。 興行的にも、絶対に失敗できないでしょうしね。

従来、エヴァの魅力の大きな部分を占めていたある種の難解さ、物語としての収集のつかなさ(?!)、無節操なまでの衒学趣味など、それらは幾分矯められてきている(今のところは、ですけれど)と言って良いのではないかと想います。
だからといって、エヴァならではの魅力は尽きないのですけれど。
 
 
さて、ここから先の内容はネタバレになります。
映画を未見の方はご注意下さい。
 
 
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前作(テレビ版~映画)に時折差し挟まれた大胆な、いっそ前衛的ともいえる心象風景的シーンは、今回は少ないのですけれど、そんな中で、黄昏の中をガタンゴトンと往く電車は健在です。 このコダワリ。 あるいは、庵野総監督の原体験なのでしょうか?。
BGMや劇中歌に「翼をください」やら「三百六十五歩のマーチ」を使う(それも、凄惨な戦闘シーンの中で!)など、また、往年の特撮怪獣映画へのリスペクトなど、作者の世代を感じさせられ、個人的にハゲシク共感するのです。
 
 
 ・渚カヲル君、今回もイイ場面で登場
そういえば、序の段でもイイトコで登場していましたね。 今回も未だまだ謎を引っ張り続けますよ。
その台詞から、この世界(新劇場版)がテレビ版+前作映画の内容をまた繰り返している、リピート/ループの中にあることをそれとなく暗示。
そう、新劇場版はリメイクではなく、また2(続編)というのでもなく、再構築、リビルドということなのだと想います。
 
 
 ・碇シンジ君、強し!
初号機の鬼気迫る闘いぶり、リミッターの振り切れたラフ・ファイトは、シンジ役・緒方恵美さん入魂の熱演も相まって、シリーズ中でも最高レベルに達しています。

これまで、闘うことに意義を見出せず悩んできたシンジ君。
その彼が<ただ綾波のため>に渾身の力を振り絞って闘い抜きます。
そして綾波レイの名台詞「私が死んでも替りはいるもの」に対して、今回はあの(!)シンジ君がダメを出すのです。
不肖はこの瞬間こそ未来への希望、破の段のクライマックスと確信致しました、はい。
 
 
 ・綾波レイのキャラ、ややチェンジ
嬰児のように無垢で、未だ情というものを知らずにいる少女、綾波レイ。
その彼女の、前作(テレビ版)では終盤にまで及んだ情緒の覚醒が、今回は早くから始まります。

打ち解けられない碇父子の仲を取り持とうと(不器用ながらも微笑ましく)画策さえする綾波。 あるいは、母性の目覚めさえ始まっていたかもしれません。
前作(テレビ版)でも、シンジ君らとの交流により人間らしい情緒や自我を獲得しかけて、でも、あとわずかというところで、闘いの中に果てたのでしたね。 それが綾波レイ、薄幸の少女。

破の段での綾波からは、そんな前作よりも幾分、悲劇の色合いが薄らいでいるような印象を受けます。
綾波レイと言えばオリジナル(テレビ)版の放映以来、数多のスピンアウト作品に描かれてきたアニメ回屈指の人気キャラですけれど、しかしそこでは、落ち着いて佇む姿、あるいは和やかに微笑む姿などが多く、必ずしも悲劇のヒロインとしては描かれていませんでしたからね。
なにしろ年季の入ったファンの多いエヴァです。 取り分け好きなキャラには、情も移ろうというもの。
今回の変節は、あるいはそんなファンの想いが通じてのこと、ということもあるのではないでしょうか。
 
 
 ・アスカもまた
今回、ホントに思い切ったことをしてきたもので、エヴァ人気の一翼を担ってきた人気キャラ。 アスカの扱いを換えてきました。
それ故にでしょうか、姓も「惣流」から「式波」へと換わっています。 おそらくは前作(テレビ版)で描かれた彼女の出自/トラウマなども、なかったことにされるんじゃないでしょうか(と私は見ています)。

前作(テレビ版)の後半から終盤に掛けてあった彼女の疑心暗鬼~自我崩壊の顛末はもはや、ストーリーから外されたようですね。(ある意味エヴァで一番クラく、また現実的なテーマと言えますし)
こちらも綾波と同様、十数年を経てのキャラ変節といえるでしょうか。

綾波とアスカ、両ヒロインがやがて迎える結末は、案外と明るいものになるのかもしれない(破のラストでは、二人とも大変なことになっているんですけれど)、そう予感させられます。
ところで彼女、今回はいささか出番が少ないんですよね。 そこのところが残念至極。
 
 
 ・真希波・マリ・イラストリアス
今回初登場の新パイロットはシンジ君らとは違い、謎の多いネルフやゼーレの内情あれこれを知っている模様。 カヲル君と同様、謎のチルドレンです。
そして、戦うことについて一点の疑いも持たぬ、根っからの戦士タイプ・・・・というか命知らずで、しかもアスカとは違い、メンタル面もタフで隙のない様子。
でも、そこはヱヴァの登場人物ですからね、そう単純なキャラではない筈と想うのですけれど・・・・
 
 
 
さてもヱヴァンゲリヲン新劇場版:破の段、ファンがこれまでに体験してきたヱヴァの世界を大胆に掻き回してくれました。
この先、例えば人類保管計画なんて一体どんな形でケリをつけるんでしょう。
とまれ、残すは「Q」(「急」ではなかった!)と、そして「?」。
この続きが、とても愉しみです。
いくらだって待ちますよ。
 
 

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June 02, 2009

ラン・ラン・ピアノ・リサイタル

 
 
またまた、ご無沙汰をしております。
目下、某資格試験に向けて鋭意勉強中の私であります。 現実逃避がてら(こらこら)、ここらでちょいと書き込みをば。

今夜はNHK・FMの「ベストオブクラシック」で中国は瀋陽出身の若手トップ・ピアニスト、ラン・ラン(郎朗)のピアノ・リサイタルを聴きました。


 郎朗:pf

   シューベルト:ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D.959
   バルトーク:ピアノ・ソナタ
   ドビュッシー:前奏曲集から
   ショパン:英雄ポロネーズ

      2009年1月24日、サントリーホール


郎朗のピアノはどの演奏もエネルギッシュ! 一貫して隈取の濃い表現で通し、一音一音にハッキリとした意思を感じさせられます。
極太の筆を大胆にふるってぐいぐいっと、素早く躊躇いなしに描きあげる書画・・・・といったイメージ。
聴いていてワクワクさせられますよ。 とにかく始めっからお終いまで、一時たりとも退屈させないんだから!
そして勢いの善さばかりではなしに、緩徐楽章でも聴かせ/泣かせるのですから、これは大変な才能ですね。

でも逆に言えば、その表現に作為性・・・・幾分の「ワザとらしさ」を嗅ぎ取れないではない。
どの曲も作品に(作曲者に)委ねるでなしに、ランラン節になってしまうようなところがあって。
この個性の強烈さは、聴き手によって好悪が分かれるものかもしれませんね。

で、今宵の私はそんな郎朗のピアノを堪能させて貰ったのでした。
 
 

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May 14, 2009

天地人

 
 
「天地人」は今年、2009年のNHK大河ドラマ。 2007年の「風林火山」以来の戦国ものです。
上杉謙信の養子景勝に仕えた忠臣、直江兼続の生涯を描く長丁場のドラマも、そろそろ折り返し地点へと近づいた辺り。
ネットでは、時に芳しくない評価も聴こえてきますけれど、私は最初からずっと見ていますよ。

常々、NHKの大河ドラマには、私のありきたりな先入観を大きく打ち壊すほどのもの、その年ならではの作品であって貰いたいと想っています。
2009年の大河ドラマは、2009年にしか造ることのできない内容でなければ意味がない、と考えるのです。
どの年の大河でも、その時代の映像技術/世相を反映した意欲的な表現が見てみたいし、民放の歴史もの(お正月特番など)にありそうなお定まりのパターン、安定路線には進んでいって欲しくないですからねえ。
仮に試みの内の幾つかが不評に終わったとしても、(表現の)攻めの姿勢は崩して欲しくないですよ。 どこまでも、付いていきますから。

今年の大河は合戦シーンなど、あまり大掛かりなロケが見られなくて、戦国物としては大人しいという気もします。 けれど合戦場を空高くより俯瞰するシーンなど、CGを駆使した(CGでしか表現でき得ない)斬新なカットがあったりして、見せ場にも事欠かないのじゃあないでしょうか。

大島ミチルの音楽は、戦国らしい土俗的なテーマ曲は別として、劇中の音楽など妙に甘ったるい旋律や、時折ジャズっぽい和音が現れるなど、違和感が付いて回り、ちと弱ります。(それも、最近になってこちらが順応して来た気がしますけれど)

         ▽▲▽▲▽▲

それからキャスティング。
あえて、気に入ったところだけ書いてみましょう。
 
 
主人公、直江兼続役に妻夫木聡。 心優しく、誠実な気質(すぐ泣いちゃうんです)は好感度120%。
但し、その辺は事前に、それこそ妻夫木聡主演と聞いた時点で予想していた通りなので、(上述のように)新鮮味というのは無かったんですけれど。
いや待てよ、妻夫木クン持ち前のキャラはそのままに、主役を張らせたってところに意外性があるのか。
かつてない、草食系戦国武将の誕生ですね。
 
 
その主、上杉景勝役に北村一輝。
あまりにも偉大な上杉謙信の後継者としてのプレッシャーに耐える、極めて口の重い、しかしながら兼続の仕えるに相応しい名君という難役を好演。
言わねばならない、でもなかなか言葉の口に出ないモドカシサ、みたいな感覚の伝わってくる演技力はさすがです。
 
 
先代の上杉家君主、上杉謙信役に阿部寛。
激しさと高潔さ。 まさにハマリ役でした。
「天地人」の序盤は阿部謙信にすべて持っていかれたかの感がありますね。 いっそこのキャスティングで謙信を主人公にしたドラマが見たかった・・・・とは誰しも思ったんじゃないでしょうか。
 
 
心優しい兼続の気丈な奥さん。 お船役に常盤貴子。
この女優さん、元々あまり好みではなかったのですよ。 それが今年のヒロインとは、トホホ・・・・などと案じていたのですけれど。
いざ始まってみれば、お船の凛とした立ち姿と、キビキビとした所作の美しいこと。 もうそれだけで、お船という女性の人柄、イメージがしっかりと伝わってきます。
今では、兼続とは好対照のパートナー役として、ナイス・キャスティングと想っています。
 
 
織田信長役に吉川晃司。
こちらも素晴らしい! おそらくは意識してそうしているのであろう、ちょっと奇妙な台詞回し(イントネーション)や、何処か遥かなものを見通しているかのような視線からは、常人離れしたイメージが伝わってきます。
実際の信長その人も、おそらくはこんな風貌だったのではないかと想わせられて、個人的に歴代信長役者ナンバー1の座を差し上げたいのです。
 
 
羽柴秀吉役に笹野高史。
こちらも好キャスティング。
でも、(NHK大河の)マイベスト秀吉としては、既に「功名が辻」の柄本明がいますからねえ。
笹野秀吉の出番としては、信長没後からが本領発揮でしょうから、これからが見ものなのです。
 
 

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December 29, 2008

NHK大河 篤姫 最終回

 
 
今年のNHK大河ドラマ「篤姫」が最終回を迎えた。
徳川十三代将軍家定の正室篤姫(のちの天璋院)を中心に、徳川家の興隆をじっくりと描き切った。
それにしても、薩摩今泉島津家の娘に過ぎなかった於一の登場から、明治維新まで、一年過ぎることの速いことはやいこと。
と、なんだか去年の今頃と同じようなことを書いていますね。

私は篤姫その人についてまるで知らず、当初はどんなドラマになるか予想も付かなかったんですけれど、始まってみれば想定外の面白さで、結局一年を通してお付き合い出来ました。

お終いのあたりは、勝海舟(北大路欣也)の存在が特に好かったですね。
ドラマの終盤に至って、天璋院と海舟の居る距離が次第に近づいてゆく・・・・って男女のってやつではなくて、大御代様と一介の幕臣と、世が世ならばお目見えも叶わぬような間柄の二人の対面風景が、お座敷での改まった形から、縁側や庭での気の置けない談話へと移ってゆき、更に江戸が東京と改まってからは揃って市中を散策するなど。 そんなところに世相の移り変わりを感じさせられ、なんとも小気味の好い演出でした。
最終回、維新の後しばらくを経ての大奥同窓会(?)も愉しかったです。 「篤姫」では、全編の随所でこういった遊び/粋な演出が冴えていましたね。

さて、来年の大河ドラマは戦国もの、上杉家の忠臣直江兼続を描く「天地人」ですと。 徳川家康に噛み付いた直江状、そして前立に「愛」の字を飾った兜で名高いお方ですね。 今度は守備範囲内ですぜ。 よしよし。
 
 

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