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October 25, 2020

読書:なぜ時代劇は滅びるのか

 
  
なぜ時代劇は滅びるのか
 
 
 
    春日太一 著
 
 
        2014年   新潮社
 
 
 
  第一章 時代劇の凋落
    ・映画ブームの終焉
    ・主戦場はテレビへ
    ・レギュラー枠消滅の過程
    ・『水戸黄門』の終了
     他

  第二章 時代劇は「つまらない」?
    ・「時代劇=高齢者向け」という固定観念
    ・物語のパターン化
    ・そして高齢者だけが残った
    ・「時代考証の通り」は「正解」ではない
     他

  第三章 役者がいない?
    ・次世代の時代劇役者がいない
     他

  第四章 監督もいなくなった・・・・・・
    ・教養なき監督たち
     他

  第五章 そして誰もいなくなった
    ・余裕のないプロデューサーたち
     他

  第六章 大河ドラマよ、お前もか!
    ・大河の朝ドラ化
     他
 
 
 
同じ著者による『時代劇は死なず!』の出版されたのが2008年のこと。
それは、かつての邦画斜陽期、当時の時代劇映画人ら(製作スタッフ、出演者)が悪戦苦闘の末、テレビ界に活路を見出し、生き残りを賭けて闘い抜いた顛末を、熱く(しかし平易な筆致で)語ったもの。
時代劇全盛期を知らない世代に属する著者による、ありったけの時代劇愛を込めた一冊でした。
 
若い著者が、ではどのように時代劇に親しんだかと言うと、それは主として少年時代に観たテレビ時代劇の再放送からと言います。
つまり、学校から帰ってテレビのスイッチをひねれば、そこにはいつも、再放送の時代劇が映っていたのだそうで。
あ~、そういう時代だったんですね。 私なんか(著者よりも年上ではありますけれど)にも、まるで同じ記憶がありますよ。(^ァ^)

しかし、そんな(とりわけ初期の)テレビ時代劇の舞台裏では(当時、ボンヤリ眺めているばかりだった)僕なんかの想いも知らなかった「生みの苦労」というものがありました。
『時代劇は死なず!』に活写された、当時の時代劇スタッフらの悪戦苦闘/創意工夫の記録は、実に興味深く、またオモシロかったです。(^ァ^)

そしてそこには、衰えたりと言えども、まだやって行ける。 ダイジョウブ! という感触/実感があった!
そう簡単に参るような連中じゃあない。 時代劇、まだまだやれるゾと。
それが『時代劇は死なず!』(2008年)。

あれから六年が経過しています。
時代劇は、果たしてどうなっているのか?

        ▽▲▽▲▽▲

この本の出版された2014年。 時代劇を取り巻く状況は、悪化の一途を辿っていました。
悪くなる一方。 なにしろ人気が振るいません。orz
映画の方は相変わらずで、時代劇作品は滅多に造られませんし、一方テレビもレギュラーの時代劇番組は激減。 年に何本かが(特番扱いで)放送されるのみというていたらく。

そりゃそうです。 なにしろ視聴者がゴッソリと離れてしまったし、そもそもスポンサーが付かないんですから番組の造りようが無い。
では、どうしてこんなことになったのか?

        ▽▲▽▲▽▲

かつて、人気コンテンツとしてテレビのレギュラー枠を得、やがて(試行錯誤を経て)確かな固定ファン層を掴んでいった時代劇。

一般的なイメージとして「高齢者が好む時代劇」という図式がありますけれど、でも「年配の時代劇ファン」と言っても、誰もが歳を重ねてから突然(!)時代劇好きになったってワケじゃありません。w
お若い頃、全盛期の時代劇に親しんで来て、それが愉しかったからこそ、今も時代劇を観続けてるってだけのハナシですよね。

        ▽▲▽▲▽▲

テレビでの時代劇製作も、長く続けてゆく間には、造り手(邦画全盛期から活躍しているような人々)が次第に第一線を退き/引退してゆきます。
しかし、時代劇と言う、かなり特殊な分野にあって、リタイアした人々の後を継いだのは、時代劇に決して詳しくない(時代劇に不可欠な「教養」を持ちあわせない)人々でした。
こうなると、俳優・スタッフ共々、クオリティの低下は避けられません。orz
でも、それを受け入れて、そのままやって来た結果が、今の時代劇と言います。

        ▽▲▽▲▽▲

そして『水戸黄門』のようなオバケ番組も登場。
これがヒット(それ自体は目出度いことですけれど)しちゃいました。

でも、そうなると、ドラマのフォーマットを、そっくり真似た作品が続々と現れるワケです。
なにしろ、現代に相応しい(よりリアルな)時代劇、(今の視聴者がナットクする程の)説得力あるドラマを創造するだけの人材(技量やパワーを持つ)がもう居ないんですから。(>_<)

こうなると、若い世代が寄り付かなくなるのは当然の成り行き。
こうして、時代劇を観る層 = 年配の時代劇ファン という構図が、より確かなものとなってゆくのでした。

若者の時代劇離れが進む分、視聴率が下がれば、番組のクォリティもまた下がる一方。
負のスパイラルの始まりです。orz

※ スポンサー離れに付いては、視聴率の調査手法が(家庭単位から個人単位へと)変更されたことも、その一因ではないかと著者は指摘します。

        ▽▲▽▲▽▲

要するに、時代劇のクオリティが、かつてに比べて(もう、壊滅的なまでに)下がってる。orz
この点については、誰しも異論の無いところと想います。

但しこうなると、もう若い世代は寄り付かなくなります。
だって、面白くないんですから。(そしてこの時代、オモシロいものなんて他に幾らでもある)(^^ゞ

これは、どんな分野にも言える事ですけれど、若い世代が入ってこないジャンルには、すべからく衰退した未来が待っている。 もう、これに尽きるワケです。(>_<)

変革を忘れ、年配の(全盛期の時代劇を知っている)視聴者に頼って来た、そのツケが廻ってきたって事でしょうけれど。
ともあれ、こうして「時代劇を観る層 = 年配の時代劇ファン」という構図が確かなものになってゆくのでした。
若者の時代劇離れが進み、視聴率も下がるとなれば尚の事、スポンサーは付かず、番組のクォリティも下がる一方ですし、有為の人材が(スタッフとして)入って来る事も無い。
なんとかして、この負のスパイラルから抜け出さなきゃならないんですが・・・・

『時代劇は死なず!』の時は、時代劇の未来に一縷の希望を繋いでいた著者ですけれど、今回ばかりはかな~り悲観的です。orz
 
 

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Comments

私も気が付いたら時代劇を観る高齢者となっていました( *´艸`)藤沢周平もののような深みのある時代劇がいいですねぇ。。。
以前は現代もののドラマを観ていたのですが、いつのまに逆転しちゃったのか・・・。いまはテレビでの現代劇ドラマには全く興味がわきません。今は夫婦で土曜日の寅さんを楽しみに観ています。
しかし総体にテレビはつまらなくなりましたね。

Posted by: おキヨ | October 26, 2020 01:58 PM

>おキヨさん

この本の著者は、テレビ時代劇の成功例として池波正太郎原作の諸作品を上げていますけれど、そういえば一連の藤沢周平作品がありましたね。
名作揃い。(^ァ^)

現代ものは、今時の風俗を次々取り入れて描かなきゃなりませんから、コッチとしても、だんだんと付き合う辛くなってゆくのかも知れませんね。
やっぱり時代劇が一番。(笑)
あと、私も寅さん大好きです。(^ァ^)

Posted by: もとよし | October 27, 2020 06:30 AM

こんにちは~
 時代劇私も好きですよ~もちろん現代劇も好き^^。
いいものはいいのですよね。
うちの夫は、時代小説に今はまってます(笑)
藤沢周平・葉室鱗・朝井まかてその他歴史もの等読破してます。
「やはり時代小説がいい」なんて言ってます。

Posted by: みい | October 27, 2020 10:17 AM

>みいさん

時代小説、イイですね~。
読むうちに知識が増えていって、どんどんハマっていくんですよね。(^ァ^)ご紹介の時代小説作家の内、藤沢周平は好く存じていますけれど、他のお二人は知りませんでした。
って、調べてみたら葉室鱗は「蜩ノ記」の著者なんですね。 役所広司主演の映画の方だけ観たことがありました。

Posted by: もとよし | October 27, 2020 10:17 PM

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