
ゴジラ対ヘドラ
Godzilla vs. the Smog Monster
監督:坂野義光
脚本:馬淵薫、坂野義光
音楽:眞鍋理一郎
出演:柴俊夫 (若者)
麻里圭子 (その恋人・ゴーゴーガール)
山内明 (駿河湾を調べる海洋生物学者)
川瀬裕之 (その息子・研)
木村俊恵 (その妻)
1971年 東宝
ゴジラ映画の十一作目は「ゴジラ対ヘドラ」です。
あ~、とうとうこの作品が来ちゃいましたね~!
シリーズきっての問題作(!)を俎上にするその時が。(笑)
なにしろ怪獣映画ですから(映画の)造り手は本来、子供たちが喜びそうな娯楽作品に仕上げて来る筈。
街を壊して廻る怪獣、それへと反撃する自衛隊、そして怪獣同士のプロレス (^ァ^) などなど。
ところがこの作品、その(怪獣映画の)常識を見事/痛快無比なまでに打ち破って見せました。
すなわち、当時の社会問題から目を背けず、世相に鋭く切り込んでいるんです。
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過激(!)とも言える<攻め>の姿勢で造らている本作。(それこそ、シリーズ第一作「ゴジラ」(1954年)ばりの)
思えば「ゴジラ」は本邦初の特撮怪獣映画であり、それ故のパイオニア精神/創意工夫で満ち満ちていました。
ストーリーの方も、核兵器/世界大戦への恐怖というものが通低していましたし。
それが本作「ゴジラ対ヘドラ」(1971年)では(この当時、タイムリーであった)ヘドロ、光化学スモッグなどの公害問題と真正面から取り組んでみせています。
また、演出技法の方も、前作(「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」)で試みた子供視点の明朗路線から、当世若者風俗を取り入れたアングラ路線へと、アッと驚く(笑)大転換を見せます。
難解な(ちょっと、子供に判るとは想えないような)シーンや、前衛的な表現、ブラックな笑いをも織り交ぜて来ていて、こんなの、シリーズ中で他に類を見ないですよ。
正に問題作/意欲作!
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深刻な公害問題と戦い続けた六十~七十年代の日本。
静岡県の富士市・田子の浦を中心に、その極めて深刻な被害がクローズアップされたヘドロ公害や光化学スモッグなどは、静岡/清水市(当時)で少年時代を過ごしたワタシの記憶にさえあります。
て言うかワタクシ、そもそも「田子の浦」という地名からして(「田子の浦ゆ打ち出でてみれば~」って万葉集の歌からではなく)先ずはこのニュースで覚えた筈です。(^^ゞ
その、無残に汚染された海の姿。 映画にも登場しますけれど、これが(美術スタッフによって)正視に耐えない程のリアルさで再現されています。(>_<)
「ゴジラ対ヘドラ」。 正にあの時代/あの地域の公害問題をテーマとした、辛口の社会派怪獣映画でした。
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そして本作は、当時の(カウンターカルチャーとしての)若者文化を大胆に取り入れてもいます。(以前から、エレキブームを取り入れていたゴジラ・シリーズではありますけれど)
地下のゴーゴー喫茶(その、サイケデリックなファッション!)にこもって踊り狂う、イカレタ若者たちを捉えた前衛的な演出。
主人公(と思しき)若者・柴俊夫の抱え込む閉塞感。
酒でもロックでも癒すことの出来ない、もって行き場のない焦り。
彼はやがて、憎っくきヘドラに一矢報いるべく、ある行動に出るのですが・・・・
主題歌は、麻里圭子唄う「かえせ!太陽を」。
サイケデリックな映像をバックに、泥沼に咲く一輪の花のような感じがして、これも好きだなァ。
前作(「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」)の時以上に吹っ切れており、メッセージ性の強さを感じさせられます。
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さて、まるで当時の公害問題を体現して見せたかのような怪獣ヘドラ。
全身がヘドロで出来ているらしく、ヨレヨレになるまで使い込んだ雑巾かモップのような、捉えどころのないデザインです。
工場の煙突からモクモク吐き出される黒煙を、スパスパと旨そうに吸い込む姿は、これもブラックユーモアなのか・・・・
静岡県富士市、田子の浦から上陸して、辺り構わず暴れ廻り始めるヘドラ。
なにしろ汚物の塊のような怪獣ですから、行く先々で周囲に硫酸ミストを撒き散らして金属を腐食させますし、光化学スモッグを浴びせられた人々は、バタバタその場に倒れてゆくばかり。
ヘドラ。 ただ、そこを居るだけで周囲に被害が及ぶという、まことにタチの悪い奴でした。(>_<)
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そして、そこに突然現れるゴジラ。(研くんの、心の叫びが通じたんでしょうね)
待ってました!
ここに、シリーズ最悪(!)の敵、ヘドラとの一騎打ちが始まります。
が、これが、いつもの怪獣映画とは一味違ったアクション・シーンでした。
なにしろヘドラは有害物質の塊です。
相手に触れただけで、こちら(ゴジラ)の身体が傷ついてしまいますから。
こんな奴とは、組み合うのもイヤでしょ。(^^ゞ
ホント、「こっち来ンな」って言いたくなるよ。(笑)
蹴ったり殴ったりしてもノーダメージ。 放射能火炎も効かないヘドラを相手に、それでも、傷つき・ボロボロになりながら戦うゴジラの姿が、いっそ痛々しい。(>_<)
でも、これが公害問題の深刻さってコトなんだと想います。
それこそ、シリーズ上かつてない、もう、なりふり構ってられない程の、どろんこのラフ・ファイトがスクリーンに(それも長々と)展開しまして、見るのが実にしんどかったァ。(^^ゞ
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この映画、主人公は柴俊夫かと想って観ていたら、どうやら違ってたみたいですね。(だって、その扱いが (>_<) )
因みに、海洋生物学者・矢野の奥さん(研君のお母さん)を演じたのが木村俊恵。
この女優さん、どっかでお見掛けしたような、と想ったら「仁義なき戦い」(1973年)で、金子信夫(山守親分)の奥さん役を演ってた方なんですね。
あれ、スゴク好かったです。(^ァ^)
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今度のゴジラ。 前作と同様、なんかもっさりとしたデザインで、その演技も、なんか妙に人間っぽかったですねぇ。
この辺は、昭和ゴジラの楽しさでしょうか。w
そして、このゴジラ。
今回こそ、ヘドラと闘ってくれましたけれど、海や空をここまで汚してしまった人類に対して、これはもう明らかに(!)怒ってます。
未だ、激オコにまでは至っていないようですけれど。(^^ゞ
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