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October 26, 2019

映画:グラン・トリノ

  

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グラン・トリノ
Gran Torino
 
 
  監督/主演:クリント・イーストウッド
 
 
       2008年    米国
 
 
クリント・イーストウッドが自ら監督を務め、更に(一旦はこれで)俳優業のラストと位置づけていた2008年の作品。 あの「ダーティーハリー」から三十七年後の映画です。
 
 
※ 米国ミシガン州デトロイト。 地元フォードの自動車工場で、長年働いて来たクリント・イーストウッド。
既に現役を退いた元熟練工ですけれど、その風貌/振る舞いからは、かつては自信に満ちた腕利きの職業人であったことが察せられます。

その彼も齢を重ねました。
映画は、長年連れ添った妻の葬儀シーン(最高の女性であったと述会します)から始まります。

かつて繁栄を極めたデトロイトの自動車産業も、今では零落の一途。 すっかり低迷しています。
気が付けば、路上には日本車が氾濫。
息子の一人など、あろうことかトヨタのディーラー勤めです。

どいつも、こいつも・・・・(-_-メ)
今や世間は、アメリカ人としての誇り(かつて彼の世代が共有していた)を失って恥じない者たちによって大勢を占められています。
息子/嫁/そして孫たち(このところ、介護とか遺産の中身ばかり気にしている)に至るまでも、彼をイラつかせます。
身内さえ、ダメな奴ばかりなのか・・・・
すっかり偏屈な老人になっちまったクリント・イーストウッドです。(^^ゞ

彼の住む街もまた老いました。
住まい(郊外の瀟洒な住宅街)は押し並べて老朽化、次々と立ち去ってゆく昔からの住民。
なんか、主人公を取り巻く周辺の落日感がスゴイです。

そんな中、空き家となった隣家に越して来たのは、東南アジア系の移民一家でした。

        ▽▲▽▲▽▲

この映画で、保守的にして頑固一徹、徹底した外国人嫌いの老人を演じるクリント・イーストウッド。
言語も習慣も異なる隣人と、親しく近所付き合いしようなんて、ハナから考えていません。
新参の東南アジア系移民だって(彼の抱く)アメリカ人の誇りなんて、まるっきり理解出来ませんし。
一方彼の方も、若い頃朝鮮戦争に参加した(アジアを戦場にしてしまった)という負い目を(心密かに)抱えています。
慣れぬ(そして不器用な)者同士の相互理解。 中々容易ではありません。

        ▽▲▽▲▽▲

やがて、隣家の息子が彼の愛車(フォード往年の名車、グラン・トリノ)を盗みに入ったのを撃退(今時の若者じゃあ彼の相手になりません w)したり、移民不良グループから救ってやったのを切っ掛けに、東南アジア系一家の姉弟とやり取りするようになります。

老イーストウッド。 しっかり者/諸事ポジティブな姉から是非にと懇願され、ボンヤリして前途の思いやられる弟君を仕込むことに。(彼は毅然として前向き、ガッツ溢れるこの姉のことを、他の誰よりも気に入ったと見えます)

あちこちが草臥れて久しい家屋のメンテ、荒れ放題になっている庭の手入れ/掃除、昔馴染みの床屋の主人とのラフなやりとり、などなどを通じて、少年を男へと鍛え上げる。 イーストウッド流レッスンの始まりです。
かつての誇り高きアメリカ、彼の信じるアメリカ人としてのあるべき姿を(息子でも孫でもない)東南アジア系移民の弟君に、ひとつひとつ教え込んでゆきます。
 
 
クリント・イーストウッド:
「まず、この3つから始めるんだ。
こいつを持ってけ。 WD-40(潤滑剤のスプレー缶)とバイスグリップ。
それからこいつだ。 ダクトテープの一巻。
この3つがありゃ、まともな男なら家の中の大抵のものは自分で修理出来る」
 
 
映画を見終わって、洗面台の下に放り込んだままの工具入れを確認しに向かったワタシです。(笑)
 
        ▽▲▽▲▽▲

ある日、隣家の東南アジア系移民一家が催したパーティーに招かれたクリント・イーストウッド。
この男、これまで外人嫌いで通して来た頑固者なんですが。w
その彼が、一歩隣家の敷居を跨ぐと、この家の息子がお世話になった恩人として、完全にヒーロー扱いです。(笑)
根っから世話好きの、東南アジア系一族のオバちゃんたち(こういう親族のネットワークってスゴイ w)に、寄ってたかって給仕される彼。
酒も料理も慣れないものばかりだが・・・・ウン、悪くない。(笑)

かつて確かに在った「アメリカ」というもの。
クリント・イーストウッドが生涯を通して愛して来た「アメリカ」を構成する要素が、次々と姿を消してゆく代わり、気が付けば実の子/孫たちよりも、隣家の東南アジア系姉弟に心が傾き始めている自分が居ました。
俺の何より大切にして来たものを受け継ぐのは・・・・

そんな中、街に巣食う移民不良グループの乱暴狼藉が激化して、遂に最悪の事態に。
体調の悪化、そして病院での診察から、自分に残された時間の、そう長くないことを悟った彼は・・・・

        ▽▲▽▲▽▲

若き日にカウボーイ/ガンマン役で頭角を現し、その後バイオレンスな刑事役でブレイクを果たしたクリント・イーストウッドという大スター/名監督の、越し方を振り返る時・・・・そして、その果てにあるのがこの映画と想うと、万感胸に迫るものが。(/_;)
 
大スター/名監督の手掛けたとも思えぬ、驚くほどシンプルな、しかし心にずしりと響く傑作でした。

 
 

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Comments

この映画2度ほど観ました。クリント・イーストウッドは老年期に入ってからの方が断然いいですね。
イライラ顔の頑固ジジィ、けっこう素敵に見えました。(^o^)

Posted by: おキヨ | October 27, 2019 12:51 PM

>おキヨさん

イーストウッド。 ムスッとして、苦虫を噛み潰したような表情の絵になるタイプでしたよね。 ある種の可笑しさ、カワイさ(?)さえ感じる。
 
そういえば若い頃から(それこそダーティーハリーの頃から)そんな役者でした。
 
自分の魅力の活かし方を知りぬいているからこその、大スターなんでしょうね。(^ァ^)

Posted by: もとよし | October 28, 2019 04:40 AM

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