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August 24, 2019

小説:苦役列車

  
 
苦役列車
 
 
   西村賢太 著
 
 
      2010年   新潮社
 
 
 
 
   ・苦役列車

   ・落ちぶれて袖に涙の降りかかる
 
 
 
 
少し前に話題となりましたね。
この小説で、著者は芥川賞をゲット、映画にもなったそうでケッコウなこと。

        ▽▲▽▲▽▲
 
 
・「苦役列車」
 
 
小説の一行目、その劈頭からして、かつてないタイプの難読な文章の世界に放り込まれます。
パッと見、悪文ですか?(笑)
なんか、ワザワザ難しい漢字を突っ込んでくるし。 
この歳になって始めて目にしたような単語が、幾つも出て来ましたよ。
文章も、ストレートな叙述を避けて、妙に捻じ曲げて来たりするし。
でも、こういう文体、嫌いじゃないです。
 
          ▽▲
 
※ 一九歳の主人公(♂)。 過去の不幸な経験のため、学業/定職に付かず、その日暮らしの日々を送っています。
金に困れば、その都度日雇い仕事に(渋々ながら)出て行き、その場を(持ち金の無くなるまで)しのぐ日々。
交友関係・学歴・資格など一切持ちあわせず、世を拗ねて自堕落に過ごす毎日。(若いのにねぇ)

ある日(イヤイヤ入った)日雇い仕事の現場に、同い年の学生アルバイト君が現れます。
至極平均的な若者、笑顔の爽やかなナイスガイと出会って、自然、彼我を比べてしまう十九才でした。
これまで、他者との交流を一切拒んで来た主人公ですけれど、そこは同い年同士です。
(その境遇の、あまりにも異なる)二人はすぐに打ち解けあうのですが・・・・
 
          ▽▲
 
これって、私小説に分類されるらしいですね。
だとすれば、もう超絶級(!)に自虐的な内用ではあるんですけれど、徹底して客観的に描かれていることもあって、読んでいても私小説とは思い至りませんでした。
なにしろこの作品、主人公に対する共感・同情ってものが一切ありません。

徹底的にクズな主人公の、自堕落そのものな暮らし。
でもね、これ、面白いんです。 ついつい、先へ先へと読み進んでしまう。
なにしろ、どうしようもない主人公の行動、悲惨な顛末。
それが、これだけ延々と続くと、もう呆れるのを通り越して、だんだんと笑えて来ます。

なにか中毒性があるんですね、この小説。
自虐趣味っていうのとも、ちょっと違うけれど。 手足に出来た小さな傷口を、弄い始めたら止まらない的な・・・・

そして、この著者独特の文体のお陰も、ひとつにはあると想います。

        ▽▲▽▲▽▲
 
 
・「落ちぶれて袖に涙の降りかかる」
 
 
上掲の小説の続編です。 第二章みたいなもんですな。
 
          ▽▲
 
※ 主人公、既に四十代になっています。

今では小説家(但し、まるで売れない)として、糊口をしのいでいる模様。
その彼が、酷いギックリ腰に罹って途方に暮れているところから、このお話しは始まります。
ホント、この男、いつも散々な目にあってるよなぁ。(笑)

そんな彼に、川端康成文学賞の候補にってハナシが舞いこんで来ました。
願ってもないビッグタイトルを目の前に、期待を(あさましくも)ふくらませる主人公なのですが・・・・
 
          ▽▲
 
毎度、止せばイイのにって方向に向かってしまう主人公。
そして、その挙句、ダメなんだね。(やっぱり)
付いて廻る、星回りの悪さは相変わらずです。

でも、ここまで生きてきた。 流れてきた。
がんばったね。 って、オレは誉めてやりたいよ。(オレもまた、この自堕落な主人公みたいなもんだし)
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
特異な魅力を放つ一冊でした。
主人公の生活観/行状が、余りといえば余りにアレ(^^ゞだし、その悪文(?!)ぶりもあって、どなたにもお勧めとはいきませんけれど。
 
 

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