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February 02, 2019

読書:カレーライスを一から作る

 
 
カレーライスを一から作る
 
   ~岡野吉晴ゼミ~
 
 
    前田亜紀 著
 
      2017年  ポプラ社
 
 
みんな大好きカレーライス!(^ァ^)
本書は武蔵野美術大学・岡野吉晴先生の授業、その一年間を追い掛けた同名のドキュメンタリーを書籍化したものです。
岡野先生の授業、その内容は一食のご飯(ここではそれがカレーライス)すべてを自分たちの手で一から作ってみるというユニークなもの。
美術とはあんまり関係は無さそうですけれど、ともあれこれも美大の授業のひとつ。
岡野ゼミに集まった、それぞれ専攻(絵画、デザインなど)の異なる学生さんたちが、一皿のカレーライス作りに取り組みました。

        ▽▲▽▲▽▲

学生たちにはカレーの素材、お米・野菜・お肉・スパイスから更には食器に至るまで、既製品に頼ることなく、自分たちの手で<一から作る>ことが課されます。

普段我々があたりまえに食しているご飯、それが供されるまでには、一体どれほどの仕事が必要であることか。
ご飯の材料・食材について、出来上がったものを買い求めることがアタリマエになっている現代人に、食に付いて改めて考えてもらおうという課題。

こんなこと、同世代の若者であっても、普段からやり慣れている人に掛かれば、ナンてことも無いんでしょうけれど。
でも、ここは美大。 集まった学生さんたちの大半は、包丁すら握らず、土いじりひとつした事もありません。

慣れない農作業・調理に驚き戸惑う学生さんたちの姿。
この先の展開、おおよそ読めてきました。(^ァ^)

        ▽▲▽▲▽▲

さて授業は、これから作るカレーライスを一体「なにカレー」にしようかって相談から始まりました。 わくわく。(^ァ^)

若者たち、お肉の入っていないカレーなんて承知しません。(ベジタブルカレーにしておけば、まだラクチンなのにね (^^ゞ )
で、協議の末にチキンカレーを選択。(この決定が後々、学生さんたちのカレー作りのハードルを一気に上げてしまうワケですが、あるいはこれは吉野先生の狙いだったかもしれません)

美術とはまるで縁の遠い内容で、戸惑い気味に始まった吉野ゼミですけれど、まぁ読んでいるコチラとしては、この先の展開/授業の狙いが判り易いです。

ともあれ、これをやるのが芸術系の大学ですよ。
それぞれが他に絵を描いたり、専門分野を持っている学生さんたち。
そこでこういう授業を設ける武蔵野美大。 なかなかヤルな、と想うワケです。

そして、この岡野吉晴ゼミで課題に取り組む学生さんたち。
皆さんそこそこにマジメで、意欲的(意識ばかり高く (^^ゞ )で、でもちょっとヘタレで、まるで自分の学生時代を見ているようでした。(^ァ^)

        ▽▲▽▲▽▲

さて、お米作りです。
今回、学生さんたちが鳩首協議した末に選んだ品種は、カレーライスに特に適した希少種なんだそうで、でもその分、栽培は難しいんだそうな。
なんで素人が(生産性とか失敗のリスクとか重視せずに)イバラの道を歩もうとするのかって想っちゃうんですけれど、でも皆さん妙に意識(だけ)が高い、この辺が学生さんだねぇ。(^^ゞ

        ▽▲▽▲▽▲

カレーに投入する野菜作り。
ニンジン、ジャガイモ、スパイス等など。
が、そこは意識高い(^^ゞ学生さんたちです。 無農薬に拘るもんだから、想うように育たなかったり、雑草相手に苦戦したり・・・・
そう、最初は有機肥料さえ与えずに始めちゃうんです。
菜園の前で首をひねる学生さんたち。
そうして、無農薬栽培で一番大変なことは草むしり、と思い知るのでした。

        ▽▲▽▲▽▲

そして(問題の!)お肉です。
来ました。
やっぱココでつまづくんですね。
早速トリ(ウコッケイとホロホロ鳥)の飼育に取り掛かった学生さんたちですけれど、数ヵ月の後、直面する事になる大問題(!)を予期し得なかったのか?

ここで学生さんたち、スーパーで清潔(!)なパック入り、グラム幾らのお肉を買い求めていては、決して知ることのない、シビアな現実と向き合うことになります。
つまり、お肉を得るためには、雛から大切に(ある意味、愛情を持って)育て上げ、そしてお終いにはシメて、羽をむしらなくちゃならないってコト。

いざ屠るという段階になって、躊躇・尻込みしてしまう学生さんが続出。
・トリたちはこのまま(ペットとして)飼い続けて、カレーはもう肉無しでイイのでは?
・そう言うけど、じゃあ家畜とペットとの違いって何?
学生たちの間で議論が交わされます。
このテーマ、重過ぎて(どうかすると)本全体を支配してしまいそうなほど。
 
食肉用の家畜に、名前を付けちゃダメ。
学生の自由にやらせる主義の先生から、珍しく指導が入りました。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
食器も自前で作ります。
土をこね、焼いてお皿に。 スプーンは竹を削って。
皆さん、なにしろ美大生ですからね。 こんなのお手の物でしょ、と想ったら意外や苦戦しています。 陶芸のクラス、授業って無かったんでしょうか?
それと、美大生ならではの斬新なデザインの食器とか造りだすかと期待したんですが・・・・
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
数ヶ月を掛けて、素材のすべてを用意し終え、いよいよ調理に取り掛かる吉野ゼミ・カレー。
田植え、除草の労苦、あれこれ工夫して育て上げた野菜、そしてトリさん・・・・
 
こうして出来上がったカレーライスのお味、果たして如何ばかりであったでしょう。
因みに、二種作ったカレーの内、片方は調理に失敗したってことで、オチまで付きました。(笑)
 
とっても好い授業になったと想います。
本来、それぞれ他に専攻を持つ美大生たち。
そこで、こういう授業をしてくれる大学って良いナ。 と羨ましく想いました
本編のドキュメンタリーの方も、是非観てみたいところですけれど、生憎とそちらは未見です。
 
休日の午後、一気に読み通してしまった好著です。
 
 

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Comments

授業料を払っている親からすると、「それは何のための学問でしょうか?」と苦笑しそうなカリキュラムでありますね。関野先生の講演をどこかで聞いたことがあるような気がしますが、文化人類学は私のような理系おっさんには理解が難しいです。でも、もう一度大学に行くとしたらこういう関野ゼミを受けてみたいですね(笑)。

Posted by: weiss | February 14, 2019 05:28 PM

>weissさん

武蔵野美術大学の学生さんたちも、まさかこういった実学がカリキュラムにあるとは、予想もしなかったのではないでしょうか。(笑)

各々の専攻とはなんの関係も無い内容ですけれど、それでも皆さん楽しんで取り組んだようですね。 こんな授業、私も受けてみたいです。(^ァ^)

Posted by: もとよし | February 18, 2019 09:32 PM

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