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August 20, 2018

小説:海賊とよばれた男

 
 
海賊とよばれた男
Fueled: The Man They Called Pirate
 
 
   百田尚樹 著
 
 
       2012年   講談社
 
 
欧米先進諸国に追いつけ追い越せとばかり、急ピッチで近代化を進めていた当時の日本。
産業の振興を進めるには石油が不可欠ですが、そこは資源に恵まれない我が国故、輸入に依存するしかない訳です。
しかし諸外国の採った輸出禁止政策(が一因となって)により、追い詰められる日本。 遂に太平洋戦争へ・・・・

石油。 各企業は競ってその独占を計り、時に国際政治のカードともなります。
なにせ <石油の供給ストップ> イコール <近代国家として機能停止> みたいなモンですから。
石油の確保というのは国家の一大事でもあったわけですね。
お金さえ払えば売って貰えるってもんじゃあ無かった。(ココ、大事!)

戦後、国内石油会社は次々と欧米大手石油会社の傘下に入り、石油の安定確保を図ります。
しかし、それは自国のライフラインを外資に委ねてしまうってこと。
こんなことでマサカの事態(有事とか)に対処出来るんでしょうか?
だがここに、欧米メジャーの軍門に下ることを断固拒否した石油会社があった!!

        ▽▲▽▲▽▲

本書は、モデルとなった出光興産の創業者一代記、あるいは出光の社史みたいになっていますけれど、「石油」という視点から見た日本の戦前・戦中・戦後史でもあります。

石油の供給を巡る企業間、時には企業 VS 国家(!)の闘い。
初めて(世界に先駆けて!)中東まで自社タンカーを派遣し、イランから直に石油を買い付けたんだってぇ?! こんな大冒険、もはや世界史の一頁に記すべきイベントじゃあないですか。

それにしても戦後(自分が生まれる少し前に)日本がこれほどヤバイ綱渡りをしていたとは!
ま、こんなこと(オレがものを知らないだけで)ご存知の方にとっては、周知の事実なんでしょうけれど。
大河ドラマなんかより余程オモシロイじゃん。(笑)(ドラマとしてあんまり取り上げられた例を聞かないのは、モデルとなったのが実在の企業であり、ご存命の方も多い故ですかね)

石油業界を保護主義に導こうとする通商産業省(経済産業省)の護送船団方式とは逆に、自由化こそが正しいと反論する主人公。
これ、以前に読んだ小説「官僚たちの夏」(城山三郎)とは逆方向から眺めた昭和史ですね。
本書は軍人・政治家・官僚でなく、商人の側から見た戦前・戦中・戦後ということで、私にはとても新鮮でした。

        ▽▲▽▲▽▲

さて、主人公(外資になびかず独立を貫こうとする気骨の人です!)の石油会社は途中何度か資金難、経営の危機に見舞われます。
が、その度に銀行等が援助を申し出て(交渉の末)会社はギリギリのところで救われる!
交渉相手のトップから、破格の好条件を引き出して見せる主人公の人間的魅力、凄すぎます。 って言うかこの小説、同じパターンを何度も使い過ぎ。(笑)

そんな主人公(の石油会社)の前には幾多のライバル会社が立ち塞がり、また役人から疎んじられたりもして、とにかく敵が多いんです。
その敵役というのが、揃いも揃って姑息で卑怯で、おまけに売国的な奴らに描かれていまして、なんか、とっても物足らなく感じました。
人間の描き方があんまり浅くって、なんかジュブナイルっぽいんですね。

また、全体的に感情表現や心理・内面の描写が下手過ぎですかね。
文章が稚拙に過ぎるのも気になりました。
以前、同じ著者の「永遠の0」を読んだ時はそうでもなかったのになぁ。

        ▽▲▽▲▽▲

ネットでこの小説の評判を調べてみたら、・主人公凄い。・この会社凄い。・自分もこんな会社で働いてみたい。 なんて、おそらくは若い人からの感想があがっていましたけれど、そうかぁ~?(笑)

小説では徒手空拳のスタート、何も無いところから自分の会社を立ち上げ、やっと中堅企業にまで育てたと想ったら、敗戦により全てパー。orz

戦後、どん底から這い上がって、艱難辛苦の末、遂に押しも押されもしない大企業となってメデタイわけですけれど、そこまでついて付いてゆくのって、大変だと想うよ~(笑)
って言うか、ゴール(未来)が見えないまま、ここまで突っ走れるってスゴイと想うわけです。

いろいろと文句を垂れてしまいましたけれど、本書は戦後の日章丸事件あたりから俄然、面白くなって来る。 手に汗握る展開!

石油から見た昭和史、なかなか読み応えがありました。
 
 

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