映画:男はつらいよ 純情篇
男はつらいよ 純情篇
Tora-san's Shattered Romance
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、宮崎晃
音楽:山本直純
出演:渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (さくら)
森川信 (おいちゃん)
三崎千恵子 (おばちゃん)
前田吟 (博)
太宰久雄 (タコ社長)
佐藤蛾次郎 (源公)
若尾文子 (マドンナ・明石夕子)
森繁久彌 (千造)
宮本信子 (千造の娘・絹代)
1971年1月 日本・松竹
「男はつらいよ」もこれで6作目。
今回、マドンナは若尾文子が務めます。
オープニングは、空撮で見下ろす江戸川~葛飾柴又の界隈。 これがまぁ、ラフな画質でカメラもブレブレなんですけれど、当時としては精一杯、頑張ったんだろうなぁ、ってしみじみ想わせられる昭和46年の空からの映像です。
相も変わらず旅ガラスの寅さんはどこでしょう?・・・・居ました、いました。 長崎は五島列島の福江島です。 また随分と遠くまで脚を延ばしたもんだ。
そこで出会う、宮本信子(お若い!)がとてもフレッシュです。 そして、出ましたモリシゲ!
名優三人が揃い踏みして、ここに繰り広げられる極上の芝居空間。 背景となる五島の風景とあいまって、これはもう、溜まりませんなぁ。
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さて、モリシゲ父娘の対面に立ち会って、すっかり里心がついてしまい、またまた柴又に舞い戻って来る寅さん。
寅さんって、第一作「男はつらいよ」以来、度々「とらや」に帰って来てはいるけれど、そのヘンなところ、設定のビミョーさにはみんな気が付いていて「そろそろ寅さんの帰って来る時期だね」とか、「寅さんの噂とか、しちゃダメ(したらホントに帰って来ちゃうンだから)」とか。 旅先の寅さんの身を案じつつ、同時にトラブルメーカー・寅さん襲来の恐怖にも怯えるワケです。
「男はつらいよ」シリーズも既に6作目。 これもマンネリ化の兆しのひとつかと想いますけれど、それを受け入れ、乗り越えようとしている姿勢が見て取れます。 また、そういうのがギャグになり得ている時期ではありました。
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さて、今度のマドンナは若尾文子。 ここでは、頑なに和装で通してくれています。
ですよね~。 なんたって若尾文子ですから~。
ここはもう、楚々とした着物姿で登場して貰う他には考えられません。
この和装設定は、果たして制作陣の意向が働いているんでしょうか。 ともあれ、ナットクの役造りです。
それに、これまでのマドンナとは、なんと言うか品格が違います。 とりわけ聡明さが光りますなぁ。 なので、和服の若尾文子を前にしたときの寅さんの舞い上がりっぷりにも気付いてしまうんです、あまりに賢いこのマドンナは。
これもまた、マンネリ化に対する挑戦のひとつだな。 そして周囲の誰もが、最初っから寅さんの失恋を規定路線のように見ているし。
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折からの好景気の中、タコ社長の印刷場も、目の廻るような大忙し!
そこに突然、博の独立問題というものが立ち上がります。 既に印刷工として充分なキャリアを積んでいるようですし、まぁ、シリーズを続ける中で、一度は触れておくべき問題ですね。
血気盛んな博、思慮深いさくら、万事にイイ加減な寅さん。 まぁ、そこにタコ社長も加わって、いつもの通り大騒動が巻き起こるんですが。
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終盤。 柴又駅のホームでの、寅さんとさくらとの別れのシーンが、しっとりとして、とりわけ好い感じです。
やはり、寅さんにとってさくらは特別の人なんですね。
寅さんの旅は続きます。
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