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March 20, 2017

映画:沈黙 サイレンス

 
 
沈黙 ~ サイレンス ~ 
Silence
 
 
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス
   マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作 「沈黙」(1966年)
出演:アンドリュー・ガーフィールド (セバスチャン・ロドリゴ)
   アダム・ドライヴァー     (フランシス・ガルペ)
   窪塚洋介   (キチジロー)
   イッセー尾形 (井上筑後守)
   塚本晋也   (モキチ)
   笈田ヨシ   (イチゾウ)
   浅野忠信   (通辞)
   リーアム・ニーソン      (クリストヴァン・フェレイラ)
 
 
     2016年     米国
 
 
既に公開は終わっている頃でしょうか。 少し前のことになりますけれど、私はマーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙 ~ サイレンス ~」を観て参りました。

フランシスコ・ザビエルを嚆矢として、あの当時、ヨーロッパから、未だ神の恩寵に預からぬ国(しかもその地での布教は困難を極め、主人公の旧師は棄教さえしたと言います)、遥かな日本へとやって来た宣教師たち。

長い月日を掛け途轍もない距離を、遭難のリスクを承知の上で大海原を越えて、しかも生還の可能性はわずかという。 今で言うなら、火星移住計画の募集に申し込みますかってレベルですよ。

これはもう、宗教家と言う以前に、冒険家とでも呼ばねばならないのではないでしょうか。 ともかく、この時代の人間のスケールの壮大さには圧倒されます。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
実にしっかりと造られた映画でした。
微に入り細に渡って配慮の行き届いた演出・美術・撮影等々には、もう感服するしかありません。

キャストは序盤(日本国外)のシーンと、宣教師役等の数名を除いて、そのほとんどが日本人俳優で占められます。
世界的大監督とスタッフ、ハリウッドの製作システム、邦画とは桁違いの大資本。 しかも、日本文化に対する理解とリスペクトを受ける中で、役者魂が炸裂!
日本人キャストが奮起! 頑張っちゃうところは、「ラストサムライ」(2003年)の折りと同様でしょうか。
ともあれ、極めて良質の芝居空間を創り出してくれました。

中でも、老獪な奉行に扮したイッセー尾形。
温和にして冷徹、無邪気で知的、ユーモラスでかつ無情。
私は、この方の一人芝居を度々テレビで見て来ましたけれど、長年続けた人間観察・表現の成果がハッキリと感じられる、奥行きのある演技が素晴らしかったです。

この「沈黙 ~ サイレンス ~ 」は無論、キリスト教徒である米国人マーティン・スコセッシ監督の作品ですけれど、ドラマ中に見る 主人公 VS 奉行 間で繰り広げられる問答を描くシーンの、その視点は至極公平に見えます。 政治経済軍事から歴史までも踏まえた東西文化の衝突は見応えがありました。

それから映像のクオリティの高さ。
アジアの空気を感じさせる(台湾での撮影と言います)島の風景、慎ましい漁村の佇まいは、そのまま主人公であるポルトガル人宣教師らの孤独感を物語るようです。
夜のシーンなど、そのまま一幅の宗教画のようで。 漆黒の闇に松明、貧しい漁民と殉教者と静寂と・・・・もはやジョルジュ・ド・ラ・トゥールの世界です。

さて、映画の映像は斯様に素晴らしいのですけれど、音の方もそれに負けないくらい雄弁でした。
それでは音楽はと言えば・・・・まるで無い、わけではないですけれど、でも、ほんのわずかしかありません。
その替わりに自然音の繊細な演出。 風になびく草木、打ち寄せる波、虫の声などなど・・・・夏の日差しから、草木の匂いまで伝わって来そうでした。
その音響の効果は目覚しく、見知らぬアジアの島国に来て、次第にその地の自然・文化へと取り込まれてゆく、西欧人の孤独・不安感が立ち現れます。

地道な布教活動、苛烈な拷問の末に辿り着いたのは、「この国は沼だ」と言う、あまりにも皮肉な結論。
すべての宣教師が捕らえられた後も、草の根レベルで伝えられ、やがて日本風にカスタマイズされてゆく教え。
外国語の典礼文も、意味は判らずとも音だけはそのままに、土着の信仰として永く残ってゆくのですけれど。
でもこれ、ローマ・カトリック的には歓迎すべからざる展開でしょうね。 その昔、原作を読んだ当時は、そんなこと考えもしませんでした。

終盤は布教云々よりも、主人公個人の信仰の問題へとテーマが移ってゆきます。 そして映画オリジナルのラストについては、私はとても好いと想いました。

        ▽▲▽▲▽▲

骨太のテーマとがっぷり四つに組んだ、極めて良質な作品として、この映画は長く見続けられ、語り続けられることと想います。 初見の折りには未消化であったため、私としては珍しく(シン・ゴジラの折もそうでしたけれど)二度鑑賞しています。
 
 

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