映画:モスラ対ゴジラ
モスラ対ゴジラ
Mothra vs. Godzilla
監督:本多猪四郎(本編)
円谷英二(特撮)
脚本:関沢新一
音楽:伊福部昭
出演:宝田明 (酒井市郎:新聞記者)
星由里子 (中西純子:カメラマン)
小泉博 (三浦:生物学者)
藤木悠 (中村:新聞記者)
田崎潤 (丸田:編集部デスク)
藤田進 (陸自ゴジラ対策本部長)
佐原健二 (虎畑:悪徳実業家)
田島義文 (熊山:ハッピー興業社社長)
ザ・ピーナッツ(小美人)
1964年 日本
通勤電車の窓から、新作ゴジラの広告を見る今日この頃。
なんでも近々、ゴジラの新作が公開されるのだそうで、ファンとしては心強い限りですね。
さて今回は怪獣映画の名作、1964年版の「モスラ対ゴジラ」を見返してみました。
▽▲▽▲▽▲
大型台風が日本を通過した翌日のこと。 とある漁村に、途轍もなく大きなタマゴが流れ着きました。
巨大タマゴは、インファント島に棲むモスラのものでした。
ここにゴジラを登場させれば、タマゴを守るためモスラ(成虫)が飛来して、バトル開始! これで怪獣映画の一丁上がりです。
でもこの映画は、それだけにはしなかった。
前作「キングコング対ゴジラ」で娯楽映画を極めた製作陣としては、そこから一歩進めた、メッセージ性の高い怪獣映画を目指したんじゃあないかと想います。
今日、名作怪獣映画として語り継がれる「モスラ対ゴジラ」。
込められたメッセージには、いささか中途半端の感がありますけれど、でも映画としては実に面白いんで、一視聴者として文句なしです。
▽▲▽▲▽▲
この浜で獲れるものは、すべからく漁民の財産。 そういう理屈で、流れ着いた巨大タマゴの所有権を主張する地元民。
一方、そのタマゴに観光資源として目をつけ、漁民から買い上げるのは、如何にも胡散臭い興行師。 そのバックには、悪徳実業家の姿が見え隠れします。
ここに現れるのは、誰も彼もが強欲で、オノレの欲望のままに突き進み、邁進する人々です。 高度成長期の映画らしい社会風刺と言えるでしょうか。
悪役コンビを演じるのは、東宝特撮映画の常連、佐原健二と田島義文。
いつもはイイ人役の二人が、この映画では悪役を好演。 これが愉しい。
普段とは正反対の役を、本人らが愉しんで(ノリノリで!)演じている様子が伝わって来ます。
▽▲▽▲▽▲
それにしても、鄙びた漁村の浜に引き上げられた巨大なタマゴと、それを取り囲む人間たちってのが、なんとも奇態な構図ですなぁ。
怖れと好奇心と欲の入り混じった、人々の視線。
▽▲▽▲▽▲
漁民の純朴さに付け込み、巨大タマゴを手中にした、佐原健二と田島義文の悪人コンビ。
その前に現れたのが、モスラを守護神と崇めるインファント島から来た小美人(ザ・ピーナッツ)。 今回はモスラ(成虫)をタクシー代わりに使っての極秘来日です。
ザ・ピーナッツ(ユニゾンで) 「タマゴを返して下さい」
それにしても、ザ・ピーナッツ演じる小美人って、怪獣映画史上最高の当たり役ですね。 改めてそう確信しました。
その歌声については言わずもがな。
小美人二人の台詞と所作のシンクロした演出が神秘的だし、悪人コンビを不安そうに見上げるたたずまいがまた素晴らしい。
ですが、世にも貴重なモスラのタマゴです。 悪人コンビがそうおいそれと手放す筈も無く、あまつさえ、小美人を捕えて見世物にしようと画策する始末。
あえなく交渉決裂です。
▽▲▽▲▽▲
そうこうしている間に、強引な干拓事業(これまた社会風刺の対象)を進めていた倉田浜にゴジラが出現!
干拓地の土がもりもりと盛り上がって、尻尾からドーンと現れるゴジラの登場シーンはインパクト絶大です! 歴代のゴジラ登場シーンのなかでも、特筆ものの素晴らしさじゃあないでしょうか。
今回のゴジラは、身体の造りのしなやか(頭部とか尻尾とか)さがステキです。
自衛隊は対策本部長(藤田進)を中心に、ゴジラ対策を講じますけれど、果たして勝ち目はあるのか?
そうだ、モスラに来て貰おう!
宝田明・星由里子・小泉博らは、インファント島に棲むモスラ(成虫)に、ゴジラを退治させるアイデアを想い付きました。
▽▲▽▲▽▲
だけど、ちょっと待った。
そのお願いは、あまりにもムシが良すぎるのでは? と疑問符を投げ掛けるのは熱血新聞記者の宝田明。 ここで彼は、この映画の主演/ヒーローのポジションに居るヒトらしからぬ消極発言を開陳します。
だって、日本の浜に流れ着いた以上、タマゴはこちらのものだから返すことは出来ません。 でも、ゴジラが暴れて困っているから、日本まで来て助けて下さいってのは、あまりにも手前勝手な理屈じゃないですか、だって。(オレもその考えにはナットクだな)
そうは言っても、天下無敵のゴジラを相手にして、他に手の打ちようもないワケだし。 ここは無理を承知で、インファント島へ出向いてお願いするしかないよと反論する、こちらは科学者らしく現実的な小泉博。
宝田明 「僕は断ります」
田崎潤 「どうしてだ」
宝田明 「だってそうじゃないですか? 向こうの頼みは断っておいてですよ、こっちが大変だからって、頼みに行けた義理じゃあありませんよ」
小泉博 「インファント島の人たちは、僕たちを虫のイイ奴だと軽蔑するかもしれないけど、それは甘んじて受けるよ。 そして、心から頼んでみる積もりだ」
結局、三人はインファント島へと飛び、交渉の末、最後は星由里子の説得で、モスラ(成虫)を、ゴジラ討伐へと向かわせることに成功します。
小美人いわく、このモスラ(成虫)は寿命が尽きかけて余命幾ばくも無く、今ゴジラと闘えば、生きて島に帰っては来れないとのこと。
それにしても、欧米が南洋でやらかした原水爆実験のお陰で、猜疑心MAXになっている島の人々と小美人から、破格の好条件を引き出してみせた星由里子。 交渉の達人過ぎます。
▽▲▽▲▽▲
かくしてモスラは、ゴジラの暴れる廻る日本に飛来。
ザ・ピーナッツ(ユニゾンで) 「あたしたち、約束は守ります」
だって。(ちょっと皮肉っぽい?)
ここに、モスラ(親子)とゴジラとの、戦いのゴングが鳴りました。
怪獣映画ですから、このバトルも愉しいんですけれど、それよりも、そこへと至るドラマが何より面白かった。 今回は、大人の視点で見ていたワタシです。
それはそうとして今度の「シン・ゴジラ」、早く見たいよね。
« レバニラは中華 | Main | 東京散歩:皇居一周 »
Comments
1964年といえばこの私も十分に若~い乙女?でしたが、もとよしさんはゴジラに興味のあるお年頃の少年ではなかったかと。。。(^.^)
この映画は評判で興行的にも成功したようですね。
東宝のスターたち総出演のほかに飛ぶ鳥を落とす勢いのザ・ピーナッツの出演。子供に限らずみなさん観に行ったようですね。
今なら私も観てみたい映画です。
Posted by: おキヨ | July 01, 2016 11:31 AM
>おキヨさん
1964年の映画「モスラ対ゴジラ」。 私は子供時代の、どこかの時点で鑑賞しているのは確かなんですけれど、でも一体いつ何処で見たのかとか、まるで覚えていません。(^^ゞ
そうは言っても、巨大なタマゴや「モスラ~やっ」の唄はあまりにも印象的。 一度体験すれば忘れられません。(^ァ^)
人気絶頂のザ・ピーナッツをキャスティングしたことがまた、モスラの存在を際立たせていますね。 よくぞ怪獣映画に出てくれましたと感謝したい気分です。(笑)
Posted by: もとよし | July 01, 2016 07:42 PM
シン・ゴジラの公開にあわせていくつかの局でキャンペーン中ですね。モスラ対ゴジラもみたことはありますが、細かいところは忘れていました。これを大人の視点で観ようと言う、もとよしさんの着眼点が面白いです。大魔神はお好きですか?
Posted by: weiss | July 03, 2016 09:12 AM
>weissさん
大映の「大魔神」、私も見ている筈なんですけれど、内容については、ほとんど覚えていません。
子供心に只々怖くて、退屈だった(^^ゞことだけ印象に残っています。 それだけ大人向けの特撮だったってことでしょうか。
ってことは、今なら面白く見れるんでしょうか? 再会が楽しみです。(^ァ^)
Posted by: もとよし | July 04, 2016 06:31 AM