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January 03, 2016

映画:新・男はつらいよ

  
 
新・男はつらいよ
Tora-san's Grand Scheme
 
 
監督:小林俊一
脚本:山田洋次、宮崎晃
音楽:山本直純
出演:渥美清   (寅次郎)
   倍賞千恵子 (さくら)
   森川信   (おいちゃん)
   三崎千恵子 (おばちゃん)
   前田吟   (ひろし)
   太宰久雄  (タコ社長)
   佐藤蛾次郎 (源公)
   笠智衆   (御前様)
   財津一郎  (泥棒)
   佐山俊二  (蓬莱屋)
   二見忠男  (弁天屋)
   栗原小巻  (マドンナ・春子先生)
 
 
      1970年    日本
 
  
 Photo
 
 
「男はつらいよ」シリーズの四作目です。
山田洋次は第三作に引き続いて脚本へ廻り、本作の監督はテレビ版でも演出を務めた小林俊一が務めます。

        ▽▲▽▲▽▲

ご存知「とらや」は、葛飾柴又は帝釈天参道沿いで六代続くという老舗です。
商店街に店を構える以上、そこにはお店同士、店主たちの付き合いってものがあり、無論おいちゃんにだって、他所の旦那衆から「とらやさん」とか呼ばれる店主としての顔がある筈です。

このシリーズではこれまで、寅さんをはじめとする「とらや」の面々と、ご近所とのお付き合いってものが端折られて来ました。
「人情に厚い下町」って概念だけ提示しておいて、具体的なところは描くことなく(タコ社長と、その従業員らとの交流を除いて)済ませて来たとも言えそうです。

この「新・男はつらいよ」は、そこのところにスポットの当てられた、シリーズ中でもユニークな一本と言えるんじゃあないかと想います。

小林俊一監督は帝釈天参道沿の商店主たちを描くにあたって、その役割を佐山俊二(蓬莱屋店主)と二見忠男(弁天屋店主)と言う、二人の老練な喜劇人に委ねました。
これが芸達者で凄く好いんですね。 笑わせられると共に、葛飾柴又のイメージが豊かに拡がります。 それにしても寅さんって、どこへ行っても人気者だね。

        ▽▲▽▲▽▲

競馬で大儲けをしてのけた寅さん。
孝行がしてみたかったんでしょう、おいちゃん・おばちゃんを旅行へ招待すると言い出します。 それも、夢のハワイへ!

唄は世につれとか言いますけれど、映画もまた世相を反映するもの。
「新・男はつらいよ」は、それまで庶民にとって夢物語に過ぎなかった海外旅行が、そろそろ現実的になり始めた頃の作品なんですね。
昭和35年(1960年)の出国者数が119,420人に対して、昭和45年(1970年)になると936,205人と言います。(出典wiki) なんたって万博のあった年だものね。
「とらや」の壁を飾ったJALのハワイ旅行ポスターの眩しさよ!(場所が場所だけに、違和感ありまくりですけれど(笑))

この界隈で初の海外旅行と言うことで、浮かれまくり大騒ぎする葛飾柴又の人々(御前様まで一緒になって)。 こういうところ、下世話に下町風でイイ感じです。
それに、この一事を見ても、当時の庶民の海外に向ける視線・特別感が判るってもんです。

しかし、好事魔多し。 ワケあって渡航直前にハワイ行きを断念する破目となる(やっぱりね)寅さん一行。 深夜コッソリと(そこはやはり、ご近所の眼をはばかるわけです)「とらや」に舞い戻ります。
戸締りした店内に、五日後の帰国予定日まで潜伏することで、ご近所の眼を誤魔化そうと言う計略です。 でもそこは、人と人との距離感の密な下町のこと。 巧く隠しおおせる筈もなく・・・・

一同のやりとり、ドタバタと演技のアンサンブルが秀逸でした!

        ▽▲▽▲▽▲

ハワイ旅行の一件で(例によって)大喧嘩をやらかした末に「とらや」を出て行った寅さん。
久々に帰ってみたら、「とらや」の下宿人となっていたのがマドンナの春子先生(栗原小巻)です。

至って控えめで、なにやら複雑な家庭の事情を抱えている薄倖の美女なんですけれど、寅さんも「とらや」の人々も、そんな春子先生の内面、悩み/孤独については、遂に知らず仕舞い。
まぁ、春子先生がザックバランな葛飾柴又の人々とは正反対なタイプであったって事情もあるんですけれど。
ともあれ今作のマドンナは、寅さんや周囲の人々との関わりが薄く、また掘り下げも物足りないと想いましたね。

傷心の春子先生を慰めるべく、寅さんが印刷工場の労働者諸君(!)を巻き込んで画策した水元公園でのデートとか、演出はいろいろと頑張ってます。 冬景色で、視覚的に今ひとつパッとしないんですけれど。

それでもちゃんと見せ場は用意してくれていて、森川信が諄々と語って聴かす「婦系図」は、けだし絶品なり!

        ▽▲▽▲▽▲

今回は葛飾柴又の界隈、「とらや」周辺のみに地域限定されたお話しでした。
舞台にあまり拡がりのないのと、前半(ハワイ旅行編)・後半(マドンナ編)と言う二部構成になっているのとで、如何にも小品と言う感じがしましたね。 その分お話しが判り易く、また、葛飾柴又の世界がコッテリと描かれてもいるんですけれど。

ともあれ、葛飾柴又をホームとする寅さんの世界は(監督が替わろうと)確固として揺ぎなし。
寅さんは寅さん。 そう認識させられる良作でした。
 
 

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Comments

栗原小巻のマドンナ・・・このシリーズは観た記憶があります。
寅さんが日本人に人気があるのは、一人一人の底辺に触れる何かがあるからでしょうね。
誇張されていても、どこかで自分にもありうるかもしれない部分とか、自由で気ままな人生のへの憧れとか、美女との出会いとか。。。(^^♪

余談ですが、わが夫の父親が、寅さん的性格をもっと生々しくしたような人物で、葛飾に女性と居を構えておりまして、1度だけあいさつに行った時、柴又帝釈天にお参りしましたhappy01

Posted by: おキヨ | January 04, 2016 at 12:55 PM

>おキヨさん
 
自分でもいつか行ってみなければと想いつつ、未だ実現していない帝釈天詣り。(^^ゞ
当地から、さほど離れているわけでもなく、行ってみれば間違いなく愉しい筈なのに。
こういうところ、どうにも腰が重いんですよね。σ(^^ゞ
 
老舗団子屋の二階に下宿する栗原小巻。 立てば芍薬座れば牡丹・・・・を地でゆくようなキャラが、下町の住人達の中にあって、違和感ありまくりでした。(笑)
小林俊一監督もそれを狙った上で、あえて栗原小巻を起用したんでしょうね。
 
その下町の空気感、やはり一度は味わっておかなければと想います。(^ァ^)

Posted by: もとよし | January 04, 2016 at 06:10 PM

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