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December 17, 2015

小説:白いへび眠る島

 
 
白いへび眠る島
 
 
  三浦しをん 著
 
 
     2001年  角川書店
             (初出時の題名は「白蛇島」)
 
 
三浦しをん 作品。 私はこれまでに「まほろ駅前多田便利軒」、「風が強く吹いている」、「舟を編む」などを読んで参りました。 本書「白いへび眠る島」は、それらとはかなり違います。 ライトタッチなホラーと言うか、あるいは伝奇小説と言いますか。
読んでみて、ストレートに不快感を与えるようなシーンや極悪人の見当たらないところは、やはり三浦しをん。 「まほろ~」や「舟を編む」のようなドハマリはしませんでしたけれど、、ゆっくり/じんわりと愉しめました。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
※ 拝島。 近海に浮かぶ、この小島にあって、「奥」と俗称される、ごく小さな集落に生まれ育った、主人公の悟史。
人とは異なる感受性を持って生まれた彼は、拝島に古くから棲むと言う、妖異らや もののけ の存在を感じ取れてしまうんです。

そういう特異な体質ゆえ、内省的な少年へと育った悟志。
見たくもない妖異が見えてしまう、この鋭敏に過ぎる体質に悩む悟志はやがて、島から逃げるように本土の高校へと進学して、寮生活を送ります。
自然、島とは距離を置くようになって、今では年に数回帰省する程度に。

悟志、高校三年生の夏休み。 この年は地元・荒垣神社で十三年毎に行われる大祭にあたり、更に神主が代替わりすることもあって、「奥」集落中がこれまでにない昂ぶりに包まれていました。
そんな中に帰省した悟志は・・・・

        ▽▲▽▲▽▲

この小説、一篇の中に青春ものの要素と、ホラー要素の同居しているところが特徴です。

お話しの舞台となる「奥」は、ごく小さな集落故、人と人との繋がりは極めて濃厚です。
が、それを殊更窮屈に感じるでもなく、古くからの仕来りも、ごく当たり前のこととして継承してゆく若者らの姿。
そこには暗さ/閉塞感ってものがありません。(じわじわと迫り来る過疎化にも、危機感がないですしね)
なにより、こういう穏やかな環境/恵まれた自然の中で暮らす光市たちの日々って、実に愉しそう。 私は素直に、羨ましい人生だなァと想いました。
こういう温和な空気感を描くのは、三浦しをん ならではですね。
 
ともあれ、本書に登場する若者らが、残らず飾り気なく質朴で居る中で、屈折した心情を抱えているのは主人公・悟志のみ。 この結果、読者の大部分は悟志にこそ感情移入し易いのではないでしょうか。
この辺が、本書の青春もの要素。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
それから、ホラー要素。
島の(精神的な)中心には荒垣神社が存り、その傍には荒神様がまします。
そして人々から「あれ」と呼ばれる、極めて邪悪な存在。
互いの力が拮抗した<三すくみ>みたいな関係はしかし、手際好く描かれており、読んでみると意外に判り易かったです。
 
邪悪な存在と闘う神主の息子・荒太と、彼に付きまとう犬丸。 この小説が純粋なホラーであれば、この二人がヒーローのポジションでしょう。
この二人だけでも十分面白い小説になったと想いますけれど、悟志・光市とのコンビネーションでより奥深いものになっていると想います。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
作中で幾つも提示される島の謎ですけれど、お話しの最後に至って、何もかも綺麗に解き明かされるかってワケでもない。 お終いに至っても、いろいろと未解決なままなんだけれど、それはそれで悪かぁなかった。
不思議を不思議として、あるいは畏怖すべき存在として、素直に受け入れる感覚が、むしろ自然に感じられました。
どうやら私も拝島・・・・三浦しをん の創造した作品世界の魅力に引き込まれてしまったようです。 
 
 

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Comments

物語のすべてを作者が解明せず、読者にゆだねるという手法もまたいいですね。
もとよしさんのおすすめもあって、私も三浦しおんの作品を2,3読みましたが後味のいい作品ばかりです。
作家の本質みたいなものを感じますね。
この本書店でまた探すことになりそう^^

Posted by: おキヨ | December 18, 2015 at 11:52 AM

この本は読んだことがありませんが、三浦しおんさんの年齢から考えて、2001年発表となれば相当わかいころの作品ですね。実年齢が近い分、青春ものとしてはさぞや生き生きと描けているものと想像できますね。

作家になりたてのころはどちらかといえば奇抜なストーリーや道具立てにはしりそうなもの。登場人物に感情移入ができるくらいの筆力がある、とのご評価ですから、早熟の素晴らしい才能があるのでしょうね。
私も読みたくなりました。

Posted by: weiss | December 18, 2015 at 05:47 PM

>おキヨさん

これ、作中で提示される要素のすべてに解答を求めたりすると、ガッカリな作品かもしれませんね。(^^ゞ
作品の世界にそっくり身をゆだねてしまえばイイんですけれど。 でも、そういう気にさせてくれるような包容力/優しさが、三浦作品に共通していると想います。(^ァ^)

Posted by: もとよし | December 19, 2015 at 06:39 AM

>weissさん
 
プロットはどれも(悪く言えば(^^ゞですが)何時か何処かで読んだり観たりした気のするもので、如何にもいろんな作品から、要素を持って来たって感じです。 この辺は、初期作品ならではでしょうか。(笑)
 
主人公(彼一人が内省的なのに対して)を取り巻く親友/妹らが皆、無類に気のイイ奴。 と言うか、島の住民に共通するホノボノとした雰囲気が好くって、ずっと浸っていたい気にさせられますね。(笑)
後の(私がこれまでに読んだ)諸作品にも通じる、三浦作品らしい要素かと想います。

Posted by: もとよし | December 19, 2015 at 06:55 AM

こんばんは

 三浦作品は、好きです。
何冊か読んでますが、これは未読です。
ホラーの要素、なんだかおもしろそうですね!
今度本屋さんで探してみますね。

Posted by: みい | December 19, 2015 at 07:16 PM

>みいさん

三浦しをん 作品、面白いですよね。(^ァ^)
本書は、私がこれまで読んだ三浦作品はどれもシリアス系でしたので、こういう(ライトな)ホラー・タッチというのは新鮮でした。 近作には見られなくなった、初期作品ならではのスタイルでしょうか。 三浦しをん の足跡を見届ける意味でも、読んでみて好かったと想います。(^ァ^)

Posted by: もとよし | December 20, 2015 at 01:36 PM

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