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July 30, 2015

小説:天地明察

 
 
天地明察
 
   冲方丁 著
 
      2009年   角川書店
 
 
小説やドラマなんかで、登場人物が科学者または技術者、あるいはそれらを目指す若者~子供。 すなわち理系の人という設定は、それ自体特段珍しくもなんともありませんよね。
しかしながら、ストーリーや台詞を追う中で、ナルホド! これは理系の人ならではの言動ですねって納得させられる作品、意外と少ないんじゃあないでしょうか。 ・・・・と言うのは、私の年来密かに(って何も隠すことはないんですけれど)抱えている持論でアリマス。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
この小説「天地明察」は、とりわけ序盤。 主人公の若き日を描くシーンが素敵でした。

江戸時代の未だ初めの辺り。
マニア/オタクというのは江戸の昔にも居たわけで。 囲碁を職とする家に生まれながら、根っから数学オタクであった渋川晴海です。

晴海の周囲には(算術と囲碁の)仲間あり、師あり、無論強力なライバルや挫折もありまして、それから恋も。
更に、彼の前には「壁」(それはまた「憧れ」と表裏を成すものでした)とも言うべき数学上の課題が立ち塞がります。 それを解くのに苦悶する若き日の晴海。

読んでいるコチラは、そんな主人公が苦悩を重ねながら成長してゆくのを見守ってゆく格好です。
すなわち、「天地明察」は江戸を舞台としたビルディングスロマンなんですね。

後に晴海のライフワークとなる、暦術と出会うのもこの頃。
とにもかくにも算術と暦に無我夢中、時々囲碁も(!)な、若き日の主人公です。

私が本書「天地明察」から理系の小説という印象を受けたのは、文中に具体的な理数系描写があるからとかではなしに(小説中に数式とか持ち出されても、読んでいるコッチがてんで判りませんからね~)主人公が全身全霊を掛けて難問に取り組む情熱が、無理なく共感出来るように書いてあるからなんです。

        ▽▲▽▲▽▲

駆け抜ける青春的な序盤と比べ、中盤以降はぐっと趣を変えて来るこの小説。
改暦という一大事業が、成長した主人公を待っていました。
暦の精度というのは、米の生産高にも関わって来る一方で、古くからの利権も絡んだ、高度に政治的なテーマなんですね。 こういう権謀術数、刺激的でとってもオモシロイです。

この小説は作中経過する時間が、主人公の若き日から晩年までと永く、またストーリーの方も、囲碁の家に生まれた者の生き方・算術の勝負・それから改暦の事業と(ライトな筆致で、軽く読める割に)多彩です!

序盤は(上述の如く)教養小説の趣き。
中盤は、当事としては先鋭的な事業を進めてゆく面白さ(プロジェクト・エックスの如し)。
そして国策レベルの政治ドラマから、終盤に至って大事業の完遂に取り組む主人公。
ライトな筆致とユーモア感覚から、気軽に頁をめくってゆけるんですけれど、読み終えてみれば、大河小説を読破したかのような充実感がありました。

        ▽▲▽▲▽▲

主人公がバカっ丁寧な性格で、ひとつコトにこだわり、長年掛けて(周囲の人々の助けられつつ)遂に結果を出すあたり。 先日読んだ 三浦しをん の「舟を編む」と似たところがありますね。
「舟を編む」のマジメさんは言葉に拘ったわけですが、一方「天地明察」の主人公・渋川晴海は(本業は囲碁の棋士ながら)和算に夢中の数学オタク。
明朗さと爽やかさと。 二つの小説から、相通じる読後感を得ました。
 
 

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Comments

お久しぶりでした^^
お忙しいことは何よりです。

どちらかと云えば男性好みの小説のようですね。
〔舟を編む〕と共通したものがあるとすれば気にかかる作品です。
書店に出向いた際に〔天地明察〕探してみましょう。
いい本、好みの本に出合えると人生得した気分になりますね^^

Posted by: おキヨ | July 31, 2015 at 11:00 AM

>おキヨさん
 
ごぶさたしております。(^^ゞ
しばらくの間、某資格試験の準備にかまけておりました。
 
主人公が若き日に経験した数学難問対決やら天体の運行 = 科学への興味。 そして壮年期に取り組む巨大プロジェクトの運営などなど・・・・なるほど「天地明察」で描かれる世界は、ある意味男性的と言えそうですね。
 
そうは言っても、ライトな文体と、主人公の至って柔和な(優柔不断とも言えます(笑))性格。 時代小説らしからぬところが、また本書のオモシロイところと想いました。
お薦めの一冊でアリマス。(^ァ^)

Posted by: もとよし | July 31, 2015 at 09:44 PM

おはようございます

 この本読みましたよ~
本屋大賞一位になったんですね。
映画化もされてますね。
映画は岡田准一、宮崎あおい主演でしたね。
映画も観てます^^。
囲碁の達人でありながら学者としての彼の姿、面白かったです^^。
意外と知らない日本の暦が作られるまでの過程、興味深かったです。

Posted by: みい | August 01, 2015 at 10:48 AM

>みいさん
 
江戸時代の和算や、暦法に関するトリビアが愉しい小説でしたね。(^ァ^) なにせ私など、暦には旧暦と新暦があるって程度の意識しかありませんでしたので。 新鮮な驚きの連続でした。(^^ゞ
 
和算・囲碁・改暦と、それぞれをテーマにして、面白い小説のひとつが書けそうな内容でしたね。 が、「天地明察」はそれらをまとめて一篇の小説にしているんですから、なんともゼイタクと言うか、いや渋川晴海という人の人生がそれだけ濃いものであったと言うべきか。(笑)
 
みいさんは映画の方もご覧になったんですね。
私も、今度観てみます。(^ァ^)

Posted by: もとよし | August 02, 2015 at 12:48 AM

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