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May 03, 2015

小説:舟を編む

 
 
舟を編む
 
 
  三浦しをん 著
 
 
     2011年    光文社
 
 
国語辞典をはじめとする、辞典/辞書/字引の類。 気が付けば、これらが身辺から姿を消してしまって久しいですね。
学生の頃なんて、国語・漢和・英和・和英それから古語と、辞書一通りは常に手元に置いあったもんですけれど。
 
90年代の中頃、初めて我が家へ迎えたパソコンに、早速インストールしたのが国語辞典ソフトでした。
調べたい言葉を入力すれば、国語辞典の該当欄を一発で表示。 それだけの機能でしたけれど、あの当事はそれが痛快でね。 すっかり味を占めて、百科事典ソフトまで入れましたっけ。
いろいろと試した末に、でも一番便利だったのは Microsoft Office のオマケに付いていた簡便な国語辞典ソフト。 あれが、なにしろもの凄く軽くて使い易かった。
 
その後、インターネット環境の充実に併せて、PCの辞書ソフトを立ち上げる機会も激減しましたね。 今使っているPCには、もはや辞書ソフトのインストールすらしていません。
なにしろ、判らない言葉/気になる用語が現れても、即座に検索出来ちゃうんですから。
ネットからの情報ゆえ、出典とかは曖昧だったりしますけれど、そうは言っても便利なのは確か。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
さて、辞書を基にした文芸作品と言えば、赤瀬川源平さんの「新解さんの秘密」がありましたね。

権威ある国語辞典で(知的に)遊んじゃえ! みたいなスタンスが痛快でしたし、単に茶化すんではなしに、そこには文化論があり、かつ小粋であったが「新解さん~」の凄いところでした。

私など、この作品を読んで、数多ある辞書のそれぞれに、編者らの意見/主張から人生観までが込められていることを知りましたし。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
枕が長くなりました。
 
世に天職というものがあるとすれば、本書の主人公、玄武書房 辞書編集部・馬締光也にとっての国語辞典「大渡海」編纂と言う職務こそが、まさにそれなのでしょう。

星の数ほどある言葉のひとつひとつから、その正しい意味を汲み取り、分類/整理することに掛けては、余人の追随を許さぬ執念をみせるんです。

その名に偽りなしの超マジメ人間で、仕事となれば我を忘れて打ち込むものの、普段はボンヤリして・・・・と言うかあんまりにも世間ずれしていて、見てくれもパッとしません。

どうにも人望があるとは想えぬ男ですけれど、それでも辞書編纂の仕事を続ける内に、周囲の同僚(それまで辞書なんてものにはまるで無関心だった)達を、辞書造りという、おっそろしく地味で、神経を磨り減らし、なおかつ容易には結果の出ない(永遠に続くかのような)仕事の魅力に引きずり込んでしまう辺り、中々の人物かもしれません。

一冊の辞書を造り上げるまでには、とにかく途轍もない時間が要ります。
こういう、中々結果の出ない事業っていうのは、当節もっとも(社内的に)風当たりの強そうな分野ですですよね。
それでも、いろんな障害を乗り越え、少しづつ、着実に「大渡海」を完成へと近づけてゆく辞書編集部。

        ▽▲▽▲▽▲

一冊の辞書を出版するまでの顛末と、辞書編集部員らそれぞれの夢と人生までを、三浦しをん さんらしい、優しい視線で描いたこの小説。

途中巻き起こる、いろんな問題/トラブル、辞書造りにまつわるトリビアも豊富で読ませますし、なにより、軽やかな筆致(「辞書」からイメージされる重厚さとは対象的に)でグングンと読ませてくれるのが好かったですね。
 
 

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Comments

〔舟を編む〕は本、映画とも見ました。
三浦しおんの作品は多分この2冊だけと思いますが、どちらも三浦しおんファンが多いわけがうなづける作品でした。読み手をからみとる面白さが作品の構成、文体にあります。
本屋大賞に多く選ばれている作家なので若い人寄りの作者と思っていたのですが私が読んでも面白い作品でした^^

Posted by: おキヨ | May 03, 2015 at 12:30 PM

>おキヨさん
 
本屋大賞って、ここ十年程で急速に伸びてきた文学賞ですね。
既存の(権威と伝統ある)文学賞がアテにならなくなってきて、だったら読者ともっとも接点のある本屋さんが選んじゃえ! っていう一種の現場感覚(?)がオモシロイですし、時代ともマッチしている気がします。
  
自分とはあまり関わりのない賞と想っていましたけれど、今調べてみたら、私も既に受賞作を何冊か読んでいました。(笑)

Posted by: もとよし | May 03, 2015 at 04:35 PM

おはようございます

 私もこの本は読みましたよ。
映画もTVで見ました^^。
三浦さんの本は結構読んでるかな。
お仕事小説?の名手みたいね^^。

Posted by: みい | May 06, 2015 at 11:18 AM

>みいさん
 
映画化されているんですね。 是非観てみたいです。(^ァ^)
小説ではイマイチ実感し難かった、「大渡海」出版までの歳月の経過を映像でどう表現するのか興味シンシンです。(^ァ^)
 
悪人とか出て来ないし、実直で正直者の主人公らがシアワセを攫むと言うのもイイ。 誰にでもお薦めできる好コンテンツですね。(^ァ^)

Posted by: もとよし | May 09, 2015 at 04:52 AM

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