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January 18, 2015

映画:南極料理人

  
 
南極料理人
The Chef of South Polar
 
 
 監督:沖田修一
 脚本:  〃
 原作:西村淳 著 「面白南極料理人」
 出演:堺雅人  (西村淳:調理担当)
    生瀬勝久 (本さん:雪氷学者)
    きたろう (タイチョー:気象学者)
    高良健吾 (兄やん:大学院生)
    豊原功補 (ドクター:医師)
    古舘寛治 (主任:車両担当)
    黒田大輔 (盆:通信担当)
    小浜正寛 (平さん:大気学者)
 
    西田尚美 (西村みゆき:西村の妻)
    小野花梨 (西村友花:西村の娘
 
 
         2009年   日本
 
 
 
連戦連勝、もはや向かうところ敵なしの感さえある堺雅人さんが主演したコメディ(と呼んでイイですよね?)です。

南極観測隊と言えば昭和基地が有名ですけれど、この映画の舞台「ドームふじ基地」は、そこから1000Kmほど内陸側へ行ったところにある、十人未満程度で運用されるとっても小さな基地です。 
標高は3810メートル! 雪と氷の他、まったくなんにも無い世界。 一年の平均気温がマイナス50度を下回り、生きものなど動植物はおろか、ばい菌すらも居ないという極めて過酷な環境です。
 
この基地の調理担当係りを(心ならずも)拝命した海上保安官・西村淳は、八名の越冬隊員たちのための料理造りに奔走する日々(凡そ一年余りにも渡る!)を過ごすことになります。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
とてもラッキーなことに、私は以前、宮嶋茂樹さんの「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」という、南極観測隊を取材したノンフィクションを読んでいました。
不肖・宮嶋、その取材の中でこの「ドームふじ基地」を訪問しているんですね。
そのため、この基地の置かれた極めて特殊な環境、隊員たちのおかれた厳しい状況というものが理解し易く、映画の世界に入ってゆき易かったです。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
映画は、そのほとんどのシーンが「ドームふじ基地」で展開します、が、その割には撮影にあまりお金を掛けていないのでは(多分、オール国内ロケ)ないかと想われますね。
なにしろ手に汗握るアクションやパニック、壮大なスペクタクルとかいった、ドラマチックなシーンなど一切ありませんし。
 
でもね、これが、とっても面白いんです。
日々の職務、暮らし、余暇、それから食事を、小さなエピソードでつないでゆく中、何気ない台詞のひとつひとつが中々に味わい深い!
それから絶妙のアンサンブルに支えられたお芝居の「間」、これがなんとも可笑しいんですね。

南極大陸の内陸部。 世界から隔絶された八人きりの小さな基地という、究極の非日常空間における日常系ドラマ、とでも言いますか。

        ▽▲▽▲▽▲

近所にスーパーもコンビニもない(あたりまえ!)南極では、何事も自分たちの力でやりくりしてゆかねばなりません。
メンバーに医師が加わっているのは当然として(まさかのトラブルってことがありますから)通信(昭和基地との)と車両(雪上車、発電機も)の各エンジニアも欠かせません。
でも、調理担当にわざわざ専門家一人を割いているのには、ちょっとオドロキました。

ドームふじ基地の隊員はぜんぶで八名。
これって、科学者四人の研究を支えるために、上記四人の専門家(医療、通信、車両、調理)が居るってことになりますね。
もちろん、各員とも専門以外の諸作業(例えば雪を切り出しての造水作業)まで兼務するわけですけれど。 ともあれ、この要員バランスは中々面白いと想いました。

        ▽▲▽▲▽▲

身体の健康の為には医師が居るとして、問題はメンタル面ですね。
なにしろ周りは一面の雪原。 越冬隊員たちは、狭くて殺風景な基地の中(ローアングルを駆使した撮影がナイスです)に、一年余りに渡って幽閉されるようなモンです。
これは、精神的に来ますよ。 逃げる場所なんて、どこにも無いワケですから。
それでも、任期の間は耐え抜かねばならないわけです。
というか、こういう処で一旦気持が折れてしまったら、もうオワリでしょう。

娯楽のための各種オモチャとか、あれこれ持ち込んでいるけれど、それも心身の健康を保つため。
この、いい歳のオッサンたち。 余暇活動ともなると、かなり過激にアソビます。
この辺の、世間の眼の届かない処で永く暮らす内に、だんだん世間の常識からズレてゆく現象は、「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」でも描かれていましから、結構リアルな話しなのかもしれませんね。

が、それでも心身の健康(とりわけ心の)に一番効くのは食事なんですね。
今にも折れてしまいそうなキモチを、最後の一歩手前で救うのは、懐かしい(そして心のこもった)日本の味。
主人公の奮闘の結果、ドームふじ基地の食卓の豊なことと言ったら、もう。
隊員ならずとも、ココが南極であるという現実を、しばし忘れてしまいます。
 
        ▽▲▽▲▽▲
 
はじめ、この映画は気の置けない小品くらいに想っていたのですけれど、その後何度か再見した結果、とっても味わいの深い佳作として、自分の中での評価がぐんぐんと高まっています。
 
 
 
  「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」 宮嶋茂樹著 (不肖・宮嶋もドーム基地を訪れていました)
 
 

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Comments

この映画の面白さが伝わってきました。
狭い範囲での人間の心理、行動を表現するのに南極は最も適した舞台背景でしょうね。

俳優たちの顔ぶれをみても軽妙洒脱な演技が楽しめそう。。。
堺雅人はこれまでにない不思議な表現力を持った役者ですね。

Posted by: おキヨ | January 19, 2015 at 11:24 AM

>おキヨさん

繰り返し見て、ますます面白くなるこの映画。
狭い基地内が舞台ということで、なるほど、この作品には密室劇的な即面がありますね。(^ァ^)

この仲間たちと、堺さんの料理があるなら私だってやってゆけそう・・・・とは言え、越冬隊員の任期は一年以上ありますしねぇ。(@_@)
南極の大雪原にはロマンを感じますけれど、でも途中で嫌になったからといって、そうそう簡単には逃げ出せない場所に居るって事実が、なによりプレッシャーになりそうですね。(^^ゞ

Posted by: もとよし | January 20, 2015 at 02:24 PM

こんばんは。

奇抜なストーリーがウリの映画と違って、演技で楽しませる映画って何度観ても面白い、ってところですね。

それにしても、もとよしさんは優れた筆力をお持ちですね。この映画、観たくなったじゃありませんか。

Posted by: weiss | January 22, 2015 at 05:52 PM

>weissさん
 
私も、先日再見したばかりですけれど、既にまた観たくなっています。(笑)
この映画は、なんといっても脚本が優れていると想います。
何気ないシーンの、ちょっとした会話の中にも含みがあって、そういう(一度目に観た折には気付かなかった)部分を、再見する中で発見したりするのが愉しいですね。
もちろん、演じる役者さんたちが個性的で、アンサンブルが巧みであったってこともあります。(^ァ^)
 
機会がありましたら、是非ご覧になってみて下さい。(^ァ^)

Posted by: もとよし | January 23, 2015 at 12:02 AM

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