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October 29, 2014

小説:女信長

 
 
女信長
 
 
   佐藤賢一 著


      2006年  毎日新聞社


我が国の歴史上の人物の中でも、とりわけ人気の高いのが織田信長。
古今の歴史小説/ドラマ中で、さまざまな視点から、いろんな信長が描かれて来たわけですけれど、本書「女信長」の場合は、織田信長が<実は男装の女性であった>という、意表を突いた(というか、そうとう強引な(笑))設定となっています。

まぁ、男装の女性が活躍するお話しと言えば、フィクション/ノンフィクション含めて、古今いろいろと(ベルバラとか)ありますからね。 その中に織田信長を加えてみるってアイデア自体「むべなるかな」って感じですけれど。

が、そうは言っても戦国武将。 中でも文句なしにナンバーワン人気のこのお方を女性化してしまおうってのは、大胆不敵と言うか、とにかくぶっ飛んだ発想と想います。

        ▽▲▽▲▽▲

※ 父、織田信秀からその資質を見込まれ、娘でありながら嫡男として育てられた信長こと御長(おちょう)。
無論、その秘密を知るのは、ごく身近に居る者たちに限られます。
若いころからうつけを演じた御長は、やがて織田弾正忠家の家督を継ぎ、まずは尾張地方の平定に乗り出します。

そもそも織田信長を女性としてみると、(従来の、一般的な)信長のイメージからくる、暴君ぶり、癇癪も、女性ならではの感情の高ぶりなどで説明できるんですね。
信長は女であったという虚構ひとつをアタマに入れて読み始めた本書「女信長」ですが、小説の世界が理詰めでしっかりと構築されているのに感心しました。

さて、日頃から男装を通している女信長ですけれど、女性ならではの感性を捨て去ったわけではありません。 そしてなにより、男どもが(オトコ故に)持つ短所の類とは無縁です。
男性的な功名心に囚われませんし、まして戦の興奮に我を忘れるなんてバカなこともありません。 銭勘定に敏いところも、また強みです。
そして時には女の武器(!)の活用も辞さぬ冷徹さまで併せ持ちます。(というか、女信長、色仕掛けに頼りすぎの感も(サービスシーン(!)かもしれないけれど)ありますな)

その反面、女性ならではの依存心や仮借のなさ、また強過ぎる執着心(浅井長政のハクダミの件で発揮)など、マイナス面も、またありまして。(今に伝わる織田信長のユニークな振る舞いの数々も、女性とすれば説明がつくと言うワケ)

このように、女性ならではの観点に立って織田家を引っ張り、序盤では快進撃を見せる女信長ですが、それが小説の中盤以降に入ると自分を見失ってしまい、もうズブズブで・・・・
年下の浅井長政に惚れ込んで、政治/戦略的判断を大きく誤ったりするなど、手痛い反撃を喰らいます。
女信長。 他の歴史小説/ドラマに登場する雄々しい(男の)織田信長とは違い、女性らしい弱みを幾つも抱えているんです。

        ▽▲▽▲▽▲

さて、そこで明智光秀の存在ですよ。
他の歴史小説/ドラマでは、マイナスイメージの先行しがちな光秀ですけれど、本書での存在感は圧倒的です。
数多ある歴史小説/ドラマで、常に不遇に扱われて来た光秀に対する印象が、これで吹っ飛びました。
とてつもなく優秀(自ら天下を望んでも不思議ではないほど)でありながら、己の栄達はまるで望まぬ無欲恬淡ぶり。
織田信長の覇業は、天才・光秀の献身的なサポートがあってこそでした。
その光秀と女信長の愛憎・・・・

        ▽▲▽▲▽▲

一体、私はなんの為に戦っているのか・・・・
天下統一が完遂に近づくと共に、だんだんと(気持ち的に)壊れてゆく女信長。
そりゃ、大変でしょうよ。 戦国武将を女性が、演じる(!)ってのは。
なにせ障害は山積。
それを、曲者揃いの家臣たち(その中には、秀吉のような超絶級の切れ者もいるわけで)を率いてクリアしていかなけりゃならないワケだし。

小説の序盤は、女信長の強さの理由づけとして、女性であることが強調され、そこがいささか強引に過ぎて、私としてはイマイチと感じました。
けれど、光秀が存在感を増すあたりから、お終いのエピローグまで。
これは、いったいどのようにして本能寺まで引っ張ってくれるのかと、ワクワクしながら頁を捲りました。

それにしても、中盤以降の女信長は、もう惑いっぱなしの、ブレっぱなし。
戦国大名というお仕事(!)は、土台、女性には無理なハナシですって、著者は言いたげです。(これってハッキリ男性視点ですね)
女性を主人公にして説得力を持たせ、しかも滅法面白くて、お終いまでハラハラさせながら読ませる歴史小説! とはいえ本書、あくまで男性読者向けだなと想いました。
 
 

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Comments

こんばんは

 本は読んでませんが、TVで放映されたの見ましたよ。
確か信長を天海祐希が光秀を内野聖陽が演じてたと思います。
確かにちょっと無理があるような・・・
そんな感じがしましたよ。
舞台では、黒木メイサが演じたようですね。
まあ~仮説だからいいか(笑)

Posted by: みい | October 29, 2014 at 07:32 PM

>みいさん

信長が女性であったという設定。 小説はともかく、映像での再現はなかなかハードルが高そうですけれど。


>確か信長を天海祐希が光秀を内野聖陽が演じてたと思います。

そうか! 宝塚(の男役出身者)という手がありましたね。(^ァ^)
肖像画などで今に伝わる、信長さまの美貌。(^ァ^)
天海祐希さんならナットクですね。(笑)
ドラマ版の方も、機会があったら見てみたいです。

Posted by: もとよし | October 29, 2014 at 08:48 PM

世の職業で最も嘘つきは作家と画家だそうで、巧みな嘘つきほど成功率が高い・・・らしいです。
たしかにまともな話だけでは面白みに欠けますね。
奇想天外をまことしやかに組み立てる能力、これは小説家に必要かもしれません。
思いもしない発想は人を惹きつけますね。

う~ん、時間があれば読みたい一冊。。。

Posted by: おキヨ | October 31, 2014 at 12:16 PM

>おキヨさん
 
ホント、大仕掛けな嘘でした。(^ァ^)
著者が本書に組み入れたプロットの数々はすべて、織田信長=女性 という、その(とってもハードルの高い)フェイクひとつに真実味を持たせる為の素材であった、という気がします。
その素材一つひとつが、また面白いんですよね。(^ァ^)
 
著者について調べたところ、ヨーロッパを舞台にした歴史小説の数々をものしているそうで、そのうちに読んでみたいと想っています。

Posted by: もとよし | October 31, 2014 at 07:05 PM

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