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June 26, 2014

金正日の料理人

 
 
金正日の料理人
 
   ~ 間近で見た権力者の素顔 ~
 
 
    藤本健二著
 
 
       扶桑社  2003年
 
 
北朝鮮による日本人の拉致問題。 今度こそどうにかなるのか、それとも・・・・と、何かと気掛かりな中で、私はこういう本を読んでいました。

都内で働く一介の寿司職人であった筆者が、北朝鮮へと渡ったのは80年代のこと。
紹介された仕事先が、偶々平壌にあったというだけで、その時はこの国に対して何の思い入れも無かったと言います。

それが、ふとしたことから当事の最高指導者・金正日の目に止まり、やがて専属の料理人として身近に仕えることとなります。
陽性で付き合い上手の藤本さんは、只お寿司を握るばかりではなしに、いつしか側近らや金正日その人とも親しく言葉を交わすようになりました。
一国の最高指導者に可愛がられ、特権階級の仲間入りをして、その国の最高水準の生活を享受する・・・・
元々政治的にはノンポリであった藤本さんですけれど、思想云々はともかくとして、この状況にはハマりました。
なんたって、日本ではごく平凡なお寿司屋さんであった身が、イキナリVIP待遇へと昇格ですからね。 むべなるかな。
それにしても、数奇な運命って、こういうのを言うんでしょうね。

彼の地の情報はいろいろと聞き及びますけれど、それは主として困窮を極める庶民レベルのお話が多いでしょうか。 藤本さんのように、自ら特権階級の仲間入りをして、実際に見聞きした日々の記録と言うのは、とても貴重と思います。

藤本さんが北朝鮮VIP層の間に順応出来たのは、仕事のウデの確かさ(本職のお鮨を握るだけではなしに、日本料理の数々を披露し、また食材の買い付けも担当しました)もさることながら、持ち前の、物怖じしない陽性な性格の故でしょう。
遊びの方も上手で、お酒・カラオケ・スポーツ・ギャンブルと、なにをやらせても周囲の人と一緒になって愉しむことが出来ました。(あちらの特権階級には、彼らが愉しむためだけの、贅を尽くした施設が用意されているんです) 抜群のコミュ力があった、ということですね。
あと、金最高指導者より、微妙に背が低かったというのも、もしかしたら好かったのかもしれないとも。
勿論、ひとつ下手を打てば首が飛ぶ(!)かもしれない、極めてオソロシイ世界ではあるのですけれど。

それにしても当時、諸外国が欲しくても手に入れられなかった北朝鮮内部の事情に詳しく、中でも最高指導者や側近、家族らの性格/素顔を知っていた唯一人の日本人が藤本さんだったワケで、ホント、凄い運命の人ですね。
後継者についても、金正恩と(長く金一家の傍に居た故)いち早く見抜いていたそうで、ここらは、マスコミや有識者も予見し得なかったところですね。 その金正恩からすれば、幼い頃から身近に居た藤本さんこそ、もっとも代表的な日本人像と言えるのかもしれません。

とはいえ藤本さん。 気が付けば北朝鮮の深部、容易には抜け出せないレベルのところまで、どっぷりと浸かっていたんですね。 北朝鮮からの脱出劇は、本書で一番スリリングな部分です。

本書に、藤本さんが北朝鮮で見聞きしたことの全てが書かれているってことは、まず無いでしょう。 ボカして記されている部分が、かなりあると想う。
そうはいっても「事実は小説よりも奇なり」です、やはり。 本書を読んで、つくづくそう想わされます。
読み物として滅法面白く、当時の北朝鮮を内側から見詰めた、唯一無二のユニークな冒険記でした。
 
 

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Comments

次々と面白そうな本を読まれてますね。
私は三浦しおんの(風が強く吹いている)を手にしたものの、その前に読みたい本が4,5冊。読破力のとみに衰えた昨今いつ読み切ることができるやら・・・の状態です。

でも書店でこの本を見かけたら間違いなく買うでしょうね(~_~;)

Posted by: おキヨ | June 26, 2014 at 10:59 AM

こんにちは

 興味深い本ですね。
北朝鮮という、ベールに包まれた国の、ほんとの内情を知ることが出来る(といっても全部ではないでしょうけれど)内容なのですね。

拉致問題は、解決するのは難しいでしょうねだからと言って諦めてはいけませんが。
怖ろしい国ですね~

そこからの脱出劇、どきどきです!
読んでみたくなりました。

Posted by: みい | June 26, 2014 at 12:18 PM

>おキヨさん
 
2003年に上梓された本書。 北朝鮮関連の情報源として、今となってはいささか古いでしょうかね。 それに、藤本さん自身も、その後いろいろと関連書籍を書かれているようです。
そうは言っても、本書は当事の平壌、金生日とその周辺をその目で見て来た藤本さんの、初めて記したレポートということで、とにかく生々しい迫力がありました。
 
「風が強く吹いている」、入手されましたか。 箱根駅伝ファンのおキヨさんがどうお読みになるか、楽しみです。(^ァ^)

Posted by: もとよし | June 26, 2014 at 06:48 PM

>みいさん
 
日本人拉致問題があった一方で、このような運命の日本人もいたのを知って驚かされました。
 
特権階級の暮らしを享受した藤本さんですけれど、ふとした行いで処罰(!)を受けてしまったり、また、親しくしていた政府高官が突然失脚することもあったと言います。
更に、偶の帰国の際は、不正規ルートで入出国せざるを得ないかったり、日本国内で警察関係者から逃げ回ったり。
決して好いことばかりじゃあない。 むしろ、怖ろしいですよね。(^^ゞ
深みに入り込んでしまった後悔と、脱出を決断するまでの心境の変化。 本書ではあまり語られていないそのあたりが、私は気になっています。

Posted by: もとよし | June 26, 2014 at 06:49 PM

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