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December 13, 2013

小説:横道世之介

 
  
横道世之介
 
 
   吉田修一 著
 
 
       2009年   毎日新聞社
 
 
題名に、なにやら惹かれるものを感じまして、本書を手に取りました。

バブルの勢い盛んなりし80年代のこと。
故郷・長崎を離れ、東京の大学へと進学した青年がいまして、その名を横道世之介。
憧れの大学生活をスタートさせてはみたものの、特段勉学に励むワケでなし。 また、他にやりたいこととか、明確な目的意識など、これといってあるわけでもありません。
田舎出の、如何にもノンビリとした(し過ぎ、と言えるかもしれません)青年なんです。
右も左も判らず、戸惑うことばかりの中で始めた東京暮らしも、そこは若さ故の柔軟性と吸収力で、みるみる馴染んでゆきます。

大学ではサンバ・クラブに(行き掛かり上、仕方なく)入ってはみたものの、サボってばかり。 妙にリッチな彼女も出来るけれど、特に燃え上がるんでもなく、どこまでもスローなお付き合い。

およそ贅沢とは無縁に育って来て、基本、安上がりに出来ている世之介ですけれど、そうは言っても東京暮らしは何かとお金が要るもの。 先輩の紹介で、割りの好いアルバイトにありつきました。(挙句、シフトを入れ過ぎたりするわけですけれど) 当時絶好調にあったバブル景気の余禄は、かくもボンヤリした大学生にさえ及ぶとみえます。

世之介(こうみえて、コミュ力あり)の友人らの中には、作家を志す者、好んでセレブと付き合って廻る者、更には起業してお金儲けを試みる者などなど、若者らしい野心を抱いたり、或いはクラブ活動に熱心な者も、いるにはいるのです。 けれども世之介ときたら、これといって目的も持たず、只々漫然と過ごしているようにしか見えません。
あ、一度年上の(そして謎の)美女に恋したね。 あの時はばかりは必死だったっけ。

主人公のクセに、中々動き出さない世之介。 それに本書は、描かれるエピソードのそれぞれが短く、また(ブツ切りみたいに)唐突な形で終わるため、読んでいての <中途半端感> は相当なもの。
世之介のボンヤリぶりと併せて、結構ジレッタイところのある小説と感じましたね。 取り分け、読み初めの辺りは。

途中、世之介の友人たちひとりひとりの、20年後(つまり現在)のエピソードが差し挟まれます。
決して順風満帆とは言えない、それぞれの人生。
当初、お気楽でライトな小説とみえたのが、読み進めるにつけ、結構へヴィーなことになって来ました。

        ▽▲▽▲▽▲

それにしても、若い日々というのは能天気そのものであったよなぁ。
未ださしたる目標も持たず、背負うものも無くって。
いえ、これは世之介に限らず、自分自身を振り返って、そう想うんです。(今だってノーテンキだろうって突っ込みも、当然あるでしょうけれど)

若い頃は、人は誰しも歳を取ってゆくものという、自明で不可避の事実さえ、滅多に意識に上ることがなかったですねぇ。
でも、後々になって、過ぎ去りし日々を振り返った折りなど、もはや二度とは帰って来ないあの頃の想い出こそ、なによりも愛しい、心に留めておきたい宝物であったのだと気づかされる。

あの頃、一緒になってワアワア騒いだりして、しかし現在はすっかり疎遠になってしまっている、幾人もの知己朋友。
今となっては時折想いだすくらいですけれど、旧い記憶ひとつひとつの中に居る彼ら彼女らは今も(そしてこれからも)宝物ですね。
ボンヤリ暮らしていたように見えて、あれはあれで一所懸命だったのだし。

日々是好日。 毎日を大切に生きてゆけばイイんですね。
人生なんて、一体どこでどうなって、いつどんな風に終わるのか、誰にも判らないワケですし。
 
 

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Comments

〔横道世之介〕味わい深い作品のようですね。
私も振り返れば女横道世之介だったような気もします。
とても一生懸命生きているのに傍かたみると〔なにやってんだか。。。〕だったと思うんですよ。

振り返ればいじらしいほど懸命に生きていた自分を誰もが発見することだと思います。
あらぬ事を考えていたあの頃がもったいない、ともおもうし、あれはあれで貴重な時代だったとも思えますね。。。

若き日の不安定な日々、今になって輝きだしますね。

Posted by: おキヨ | December 14, 2013 at 11:38 AM

>おキヨさん

>振り返ればいじらしいほど懸命に生きていた自分を誰もが発見することだと思います。

いじらしいほど懸命・・・・そうでしたね。 まったく同感です。(^ァ^)

小説中には、80年代を懐古するかのように、当時の流行/人気テレビ番組ネタなども出て来まして、あの当時を知る者にとっては、懐かしさ全開であります。(笑)

また、登場人物らのその後、およそ20年間がごく簡潔に記されている箇所がありますけれど、そこからの人生は、誰しもが山あり谷ありで・・・・折りに触れ、想い出すのは、やはりあの頃のこと。

そう言えば、「モラトリアム」という言葉が流行し始めたのも、この頃でしたでしょうか。(今頃になって想い出しました(^^ゞ)

Posted by: もとよし | December 14, 2013 at 09:08 PM

こんばんは~

 この本読んではいませんが、映画化されてましたね。
映画も予告編しか見てないけれど。

若いころって、今思うと何やってんだか・と思ったりしますよね。確かにその時は懸命に生きてたのかも。
歳を重ねると、猪突猛進なんて絶対無理ね(笑)
夢見る未来?があるって素敵な事、輝いていたかも・・・

でも大人には大人の素晴らしさがあるよね。
人生まだまだ楽しみたいですね^^。

Posted by: みい | December 14, 2013 at 09:39 PM

>みいさん

>映画化されてましたね。

早速映画のサイトに行って、予告編を見て来ました。
世之介も祥子ちゃんも、イメージより美し過ぎ~。(笑)
これは、観てみたいですね。(^ァ^)

>歳を重ねると、猪突猛進なんて絶対無理ね(笑)

猪突猛進。 確かにしでかさなくなりましたね~。(^^ゞ
その前に大丈夫かどうか、まず考えちゃう。 あるいは、一番ラクな側へと流れてしまいがち。orz
まァ、歳を取って、その分、思慮深くなったとも言えます。
その年頃也の生き方がありますからね。(笑)

Posted by: もとよし | December 15, 2013 at 01:21 PM

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