レスラー
The Wrestler
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク (ランディ・ザ・ラム・ロビンソン)
マリサ・トメイ (キャシディ)
2008年 米国
かつて全米を熱狂させたプロレスラー、ランディ・ザ・ラム・ロビンソン。 必殺技は、ラム・チョップ!
が、往年の名レスラーも、寄る年には抗うことが出来ません。 今では試合の稼ぎも減ってしまい、地元スーパーのアルバイトで辛うじて食い繋いでいる始末。
長年に渡って酷使し続けた身体には、すっかりガタが来てしまっていますけれど、それでもリングを降りようなんてことは、これっぽっちも考えたことのない、根っからのプロレス馬鹿なんです。
この映画「レスラー」では、俳優として90年代以降を不遇に甘んじて過ごしたミッキー・ロークという人の人生と、どんなにボロボロになろうとプロレスラーとして生きるしかない、主人公ランディの境遇とが見事(?)なまでに重なって見えます。
で、観ているこちらは落ち目のロートル・レスラー、ランディの悲哀と奮闘ぶり、そして挫折にジンと来て、やがて乾坤一擲、古傷をおして大舞台に上がる主人公の姿に、熱い喝采を送ってしまうことになる、というワケ。
ランディを取り巻くプロレスの世界の描写がまたイイんです。
豊富にある試合のシーンもさることながら、試合前に相手と段取り(!)を打ち合わせたり、凶器や出血のギミックをこっそり仕込んだり、といった舞台裏の描写が(私には)なにより面白かったです。
それから同僚たち。
リング上では凶悪無比な面構えのレスラーも、控え室ではフレンドリーで義理人情に厚い。 その上若手はベテラン(とうに盛りを過ぎたロートル選手さえ)を敬うしで。 もう、実に気持ちの好い男たちなんです。
これならば、身体や暮らしが幾らキツクっても、マットを降りることの出来ないランディの真情が、好く理解出来るってモンです。
しかし、そうは言っても、長年に渡ってレスラーを続けたことの代償は過酷なものでした。
身体はボロボロ、お金や財産は無し、家族にも見捨てられ・・・・ シアワセの大半を逃してしまった男に残されたのは、やはりプロレスだけなのか。
あ~、それにランディよ。
百戦錬磨のレスラーも、一旦リングを降りると、これがもう、救いようの無いダメ男であり、ダメ親父なんですワ。
キレて乱暴を仕出かすし、アルバイトではヘマをやらかし、娘との約束ひとつ守れなくって、おまけに下半身もだらしない・・・・
この映画。 間違いなしに名作なんだけれど、でもどなたにもオススメ、とはゆきませんねぇ。
エロいシーン(美々しくも幸薄そう(!)なマリサ・トメイ)や、派手な流血(プロレス映画ですから)もあるしで。
要はプロレス馬鹿バンザイな、男の身勝手映画ってことですよ。 でも、そこがイイ。
ほろ苦いエンディングは、よく噛み締めて味わうべし。
ブルース・スプリングスティーンが訥々と唄う主題歌が、また沁みるんだ。
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