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October 21, 2013

小説:ナ・バ・テア

 
 
ナ・バ・テア
None But Air
 
 
    森博嗣 著
 
 
        2004年  中央公論新社
 
 
 
子供の頃の私は、飛行機のこととなるともう夢中でした。
造るプラモデルは航空関係オンリー。 親にねだって、航空雑誌(それも大人向けの)を買って貰ったりして。

中でもご執心であったのは(そこは男の子のことで)古今東西の軍用機です。
子供の吸収力というのは侮れないもので、雑誌に載っていた各国航空機の数々、その名前やら機能など、大概諳んじてしまいました。 今でも結構覚えていますよ。

学校はもとより世間に対しても、まるで役に立たない知識を沢山溜め込んで(そして親を嘆かせて)いたんですから、今で言うオタクの予備軍てところでしたね。

        ▽▲▽▲▽▲

本書「ナ・バ・テア」は、前作「スカイ・クロラ」に続くシリーズの2冊目。
時系列的にはしかし、「スカイ・クロラ」よりも以前のこと。 「スカイ・クロラ」で強烈な印象を残した草薙の、新人パイロット時代のお話しになります。
架空の世界(レシプロ戦闘機が飛び回り、日々闘いに明け暮れる)で、戦争請負会社に雇われたパイロットたちの日々を描きます。

他者との交わりを頑なに拒んで、飛行することの他、何事にも関心を示さぬ草薙。 大切なのは「今」だけ。 生きるに値する場所は空にのみある、と考えるからです。

その飛翔、そして空中戦の描写は、前作「スカイ・クロラ」と同様、読ませます。
その昔、軍用機大好き少年であった私にとって最高にエキサイティングな戦闘シーンはしかし、硬質の美文で描写されており、不思議な静謐感で満たされています。

パイロットの多くは、(主人公の草薙も含めて)科学により生み出された「キルドレ」と称する不死の人種。
とは言え、敵戦闘機に撃墜されれば(「キルドレ」と言えども)死は免れ得ません。
けれど草薙は(勝負に負けることへの強烈な怒りはあっても)死に対する恐怖というものを持ち合わせない様子です。

生物学的に「老いる」ということのない草薙の場合、時間に対する感覚/記憶に対する価値観/なにより死生感が常人と異なるようで、その言動や生への執着の希薄さからは、己の死を希求している様子さえ見受けられます。

本書の眼目は、卓越した能力を持ちながら、未だ精神的に未熟な草薙の、戦いに明け暮れる日々の中での心象の移り変わりです。
が、それ以外に、人類究極の願い「不老不死」を図らずも手に入れた者の人生観/死生観も描かれており、それが実に興味深かったですね。 いささかネガティブな顛末ではありますけれど。
 
 
 
   「スカイ・クロラ」 (シリーズの1冊目)
 
 

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