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September 19, 2013

小説:カレーソーセージをめぐるレーナの物語

 
 
カレーソーセージをめぐるレーナの物語
Die Entdeckung der Currywurst
 
 
   ウーヴェ・ティム 著
   浅井晶子 訳
 
 
     1993年   ドイツ
 
       河出書房新社
 
 
 
路上のスタンドで手早く調理したものを、その場で供するというのですから、我が国の「たこ焼き」みたいな位置付けでヨロシイのでしょうか。 カリーヴルスト(Currywurst)。 本書ではカレーソーセージと訳されています、戦後ドイツのB級グルメ。

ドイツ北西部の港湾都市ハンブルクで、長年に渡りカレーソーセージの屋台を切り回してきた老婦人レーナが、第二次世界大戦の末期から戦後に掛けて過ごした日々を、カレーソーセージ誕生秘話に絡めて昔語りします。

        ▽▲▽▲▽▲

戦争の末期。 ドイツの敗戦が目前に迫っていた当時のこと。
ふとした縁から、ドイツ海軍の脱走兵(息子ほども若い)を独り住まいのアパートに匿うことになった主婦レーナ。
秘密の(そして束の間の)同棲生活の始まりです。

若者は、脱走兵としての身分がもしもバレれたならば、重罪は免れません。
つまり、この戦争が続く限り、レーナの部屋から一歩も出る事が出来ないということ。
しかしながらレーナの幸せは、その一点により辛うじて保たれているとも言えるのでした。

程なくしてドイツは敗戦。
が、アパートの最上階に閉じこもって暮らす若者に、その事実は伝わりません。
若者との別れをおそれて、戦争の終結を告げることの出来ぬレーナでした。
やがて、最上階にあるアパートの窓から見下ろす街の様子が、これまでとは微妙に変わりつつある事に気付き、訝しむ若者。
そうは言っても、戦争は未だ続いていると信じていますから、これまで通りアパートに隠れているしかありません。
若者は、図らずも主婦レーナの虜囚のようなものになっていたのですね。

        ▽▲▽▲▽▲

世にも数奇なカタチの愛と、そしてそれを成り立たせる為に、お互いがつかねばならなかった幾つかの嘘。
去る者があれば、来たる者もあり。
何があろうと動ぜず、逞しく暮らしたレーナ・ブレッカー夫人の姿に、復興する戦後ドイツを重ねてみたくなります。

先行きの見えない戦時の不安、その後の敗戦による社会の激動、街の支配者たちの交代(ナチス関係者から連合軍士官へと)、などなど。 ドイツ庶民の視点から見た第二次世界大戦という面からも興味深かったです。

肝心のカレーソーセージへとなかなか辿り着かないレーナの昔語りはしかし、終章に至って快進撃を始めます。
穏やかな筆致で綴られた小説が、お仕舞いへ来てブレイクする、この痛快さ!
全篇に渡る、端正で緻密な訳文も素敵でした。
 
 

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Comments

これは面白そうな本ですね。
戦争という泥沼地にもあだ花の様な愛が芽生える。。。
読んでみたい本のひとつになりました。〔作品名、出版社メモメモ。。〕

今年は韓国、中国の長編に続き、ドイツの作家も読む機会に恵まれたようです。感謝wink


Posted by: おキヨ | September 19, 2013 at 11:49 AM

こんばんは~

 カレーソーセージ、カレー味のソーセージ?なのかな。などと思ってしまいましたが(笑)

うん、面白そうですね~
というかなかなか深い内容なのですね。

本屋さんで探してみます!

Posted by: みい | September 20, 2013 at 09:48 PM

>おキヨさん

戦中から終戦直後に掛けてのドイツについては、これまで殆ど知る機会がありませんでしたので(あっても戦争映画とか(^^ゞ。 それも、連合軍サイドから見詰めた(^^ゞ(^^ゞ)この小説の描写はとても新鮮でした。

敗戦と共に、街の要職を占めていたナチス関係者が姿を消し、連合軍にとって代りますけれど、支配者層が誰であれ、シブトク逞しく生きてゆく、ドイツ庶民のしたたかさ。

派手さの少しもない、むしろ淡々とした展開ですけれど(終章を除いて!)、主人公らを待ち受ける運命は、なかなかにドラマチックでした。(^ァ^)

Posted by: もとよし | September 20, 2013 at 10:45 PM

>みいさん

カリーブルスト。 ドイツではB級グルメの代表として、実際に人気があるようですね。
ソーセージにケチャップを絡め、そこカレー粉をふりかけたものなんだそうで。(レーナ流のレシピだと、もっと細かいようですけれど)
読後、私もさっそく自宅で調理を試み、その味を確かめてみたのは、言うまでもありません。(爆)

それにしてもカレー粉とドイツのイメージとが、どうにも結びつかないんですけれど。(^^ゞ
でもカレーのスパイシーさが、彼の地の気候には合っているんだというレーナの説明を想い出して、勝手に納得しています。(笑)

Posted by: もとよし | September 20, 2013 at 10:47 PM

昨日書店でこの本の取り寄せをお願いしたところ在庫がなく取り寄せできませんでした。残念!!

あとは地道に数か所の図書館探しですねcoldsweats01

Posted by: おキヨ | September 25, 2013 at 11:52 AM

>おキヨさん

当節、ドイツ文学は人気がないんでしょうか?
まぁ、気軽に愉しめるエンターテインメントってワケでもありませんし。(^^ゞ
でも、細く永く読み継がれてくれたらって、願ってしまう良品です。

そういえば今時の図書館は、インターネットを使って自宅で蔵書検索が出来たりするようで。(^ァ^)
私も、地元の図書館で借りて読むことが出来ました。(シックで、とっても素敵な装丁です)

Posted by: もとよし | September 26, 2013 at 01:13 PM

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