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July 30, 2013

小説:官僚たちの夏

 
 
官僚たちの夏
 
 
    城山三郎 著
 
 
      1975年   新潮社
 
 
 
高度成長期。 わが国の経済の先行きを予見し、新政策の立案とその施行に向け奔走する、実在した通商産業省官僚(キャリア)らをモデルとして書かれた小説です。

城山三郎さんの代表作のひとつにあげられる本書ですけれど、(私にとって)なんと言っても印象的なのがその題名でした。
「官僚」という語句の冷徹さに、「夏」を配してみせた、取り合わせの妙。 う~ん。
私が地元の図書館の棚にあった本書を手に取ったのも、その秀逸なるタイトルに惹かれた故でした。

もともと経済問題に至って疎い私ですし、ましてお話しの舞台は1950~60年代の日本です。
果たして自分に付いてゆけるものかどうか(おい)懸念されましたけれど、いざ読んでみれば(知識不足のところも、やはりありましたけれど)これがとても面白く、そして興味深い内容でした。
なにより主人公はじめ各キャラクターの人間的魅力、簡潔な文体、迅速な展開などなど。 物語として実に巧みに造られていることに感心しました。

小説の冒頭、通産省のトップ官僚として、肩で風切る勢いで働く主人公の好漢ぶりを描いてみせるところが、特に好かったですね。
仕事には全力で取り組み、常に正面突破で当たる。 歯に衣着せぬ物言いで、どんな相手に対しても遠慮ってものが無い。 つまりは有言実行の人。
その一方、先のさきまで見通した人事を立案するなど、広い視野も持ち合わせている。
これは、さては痛快なるサクセスストーリーの始まりかと、つい早とちりしてしまったオメデタイ私でした。

しかし中盤以降へと読み進めるうち、かなり辛口の内容であると知れるのです。
主人公とその部下たちが実現に向け、文字通り心血を注いでまでして目指したのは、民間企業の経済活動一々を政府が指導してゆこうという、官僚主導型の経済政策。
しかしながら、これ、時流を読み切ったものではなかったんですね。
幾つかの成功と挫折を味わった末の、すっきりとしない終盤。 実話ベースということもあってか、仮借の無い展開です。

本書は小説としてさほどの長編というワケではありません。
が、ムダの無い簡潔な文体によって戦後昭和史、政治経済の変転、当時の通産官僚/政治家たちの人生などなどを怜悧に描き切っており、読み終えての感慨はちょっとやそっとではなかったです。
 
 

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Comments

題名からして男性の好む作品のような気がします。
城山三郎は著名な作家にもかかわらず一度も読んだことがないのです。
社会的な内容のものでも作家によって私のような非社会的人間?でも楽しめるものもありますが、ま、城山三郎は無理かも。。。coldsweats01

Posted by: おキヨ | July 31, 2013 at 11:18 AM

>おキヨさん

常にアクセル全開、しかもエンドレスで働くのが気風となっている主人公ら通産キャリアたち。 確かに、これは徹底した男性視点で描かれた小説ですね。(^^ゞ

でもそんな、年がら年中仕事浸けで家庭を顧みる暇もなし、といった働き方に対する疑問も、著者は書き記しています。
作中、主人公とはまるで正反対の人生観を持つ若手官僚。 頁が進むにしたがって、その存在感が増してゆきます。
城山三郎の描く男たちの世界。 なかなかに奥が深いようです。(笑)

Posted by: もとよし | July 31, 2013 at 10:43 PM

こんばんは!

 この本は未読だけど、確かNHK/TVドラマ化されていましたよね。
確か通産官僚たちのお話ですね。
もとよしさんの解説で読んでみたくなりました^^。
男たちの世界覗いてみたい(笑)

Posted by: みい | August 01, 2013 at 10:52 PM

>みいさん

ドラマ化された「官僚たちの夏」。 さぞや、男臭い世界が描かれているんでしょうね。(笑) 機会があれば見てみたいです。

この小説は簡潔な筆致で書かれているんですけれど、通産省の内部組織が結構複雑でして、しかもお話し的に、省の組織立てというものが深く関わっていると来ています。 
なので私の場合、読みながらアタマをひねるコト再三でした。(^^;
と言うわけで、難解な部分もありながら(^^;、しかしドラマとしてはとっても面白かったです。(^ァ^)

Posted by: もとよし | August 03, 2013 at 12:27 AM

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