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May 25, 2012

しゃべれども しゃべれども

 
 
しゃべれども しゃべれども
 
 
     佐藤多佳子 著
 
 
           2000年   新潮社
 
 
CDを聴いて落語好きになって。 一頃は寄席に通ってみたりもした私ですけれど、このところさっぱり足が遠退いてしまっています。 
歳と共にフットワークが鈍くなっているのは、我ながら寂しいものがありますね。
ネットでいろいろ視聴出来てしまうからってこともあるんですけれど。

さて本書、若い落語家が主人公のお話しです。
読んでみたら、これがあんまり面白くて! 夢中になってしまいました。

        ▽▲▽▲▽▲

今時珍しいくらい一本気な性格の二つ目、今昔亭三つ葉。

その性癖は直情径行にして単純明快。
なにしろ落語は古典しかやらないし、高座以外のプライヴェートでも365日和服を着て通します。
その上せっかちこの上なくて(喋りが仕事の落語家なのに)言葉よりも先に拳骨が出て来るタイプです。
だからその分、ちと(生き方が)不器用でもある。

そんな三つ葉の落語が、このところすっかり伸び悩んでしまっているのですが・・・・
話し方に悩む噺家だなんて、ったくもうシャレんならないって!

        ▽▲▽▲▽▲

この小説、主人公三つ葉の一人称視点で語られます。
その台詞は、如何にも江戸前の噺家らしい、滅法歯切れの好いもの。
使う言葉と、三つ葉の性格とがイコールなんですね。

なので、この小説は読んでいてまことに気持ちがヨロシイ。
のっけからお終いまで、ず~っとそのスタイルで終始して、とにかくお終いまでブレない。 ソコが好い!
言葉の端々に織り込む表現/語彙も、一々気が利いていてオモシロい。
流石は噺家、粋なモンです。

        ▽▲▽▲▽▲

三つ葉が自宅に開いた私設落語教室(?)に縁あって集まったのは、現在の三つ葉と同様、<話し方>に悩む、しかし互いに全く接点のない四人。(自信喪失したテニスクラブのコーチ、無口なOL、口下手なプロ野球解説者、そして関西弁の小学生)
皆、元々落語への興味なんてこれっぽっちもなく(おい)、話し方教室の積もりでやって来ていますから、三つ葉にしたってやり難いことこの上なしです。

話しのプロであるべき三つ葉ですけれど、彼らを一体どう扱えばイイのか、まるで判らない。
江戸っ子気質の三つ葉らしくもなく・・・・いやだからこそか? 三つ葉は悩みます。 生徒らのため、自分自身のため真摯に、律儀に悩み抜いて、時には相手と激しくぶつかり合うのです。

        ▽▲▽▲▽▲

読んでいて、落語教室に集う五人に寄せる作者の優しい視線が堪りませんでした。
ホント、心暖かくってですねぇ。 参ったよ。

終盤は切なかったなぁ。 もう少し、この小説世界に浸っていたかったし。
三つ葉と四人の弟子たち、三つ葉の祖母、師匠、兄弟子、同輩の二つ目・・・・
先へ先へと(面白いから)読み進んじまって、その分残り少なくなってゆくページが恨めしかったです。
 
 

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Comments

もとよしさんはいったい、どうやって、そのような面白い本を見つかられるんでしょう。
私がただいま寝室用にして読んでいる2冊は2ページも読むと寝てしまいますので(^^ゞ自分の趣味ではないことは明らかです。
以前にも、今年春の芥川賞作家のもので、一冊は〔例の方〕の作品。読むには読みました。たしかに、引き締まった巧みな文章力はわかりましたが・・・私の趣味ではない。。。問題はもう一冊のほうです。これが私の拙い読書力では判らん!途中放棄してしまいました。物見高い性格ゆえ世間で騒いでいることに首を突っ込みたがるんですね。
本が好きですが賢い読書家とはいえませんね。

今一冊は女性流行作家のおひとり。こちらも睡眠導入剤です。健康上役には立っている本ですが。。。(-_-)zzz

Posted by: おキヨ | May 28, 2012 at 11:27 AM

>おキヨさん

本に関しましてはハズレをひく事も度々、であります。(^^ゞ
なにしろいつも通う図書館で、当たるを幸い無差別に借りては読み、借りては読みの無節操ぶりですから。
そうやって見つけて来た中から、このブログでご紹介するところまで残るのは、3~4冊借りて、その内1冊くらいでしょうか。 あんまり打率の好くない読み方です。(^^ゞ

「例のお方」(^^ゞ、なかなか得難いキャラで(笑)私も興味津々でしたけれど。
話題作はイマイチでしたか。
世評の高い本が、いざ読んでみたら期待ハズレってのは私も多々経験があります。(^^ゞ

睡眠導入剤でしたら、我が家にも強力なのを常備しております。!(^ァ^)!

Posted by: もとよし | May 29, 2012 at 02:09 PM

こんにちは~
 ああこれって、映画化されてましたよね、
観たいなと思いながら観られなかった作品です。
もとよしさんの書評拝見して読んでみたくなりました。
面白そうですね^^。
本屋さんで探してみようかな。

Posted by: みい | May 30, 2012 at 01:21 PM

>みいさん

この小説、お薦めです。(^ァ^)
普段高座の上でしか見掛けることのない落語家の、普段の生活が垣間見えるのも興味深かったです。

映画になっているんですね。
原作の映像化って言ってもどこかに違和感が出来るでしょうから、私は観たくないかな・・・・でも観たい。(爆)
たった今公式サイトを訪問して、予告編まで観て来ちゃいました。(^^ゞ

Posted by: もとよし | May 30, 2012 at 10:33 PM

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