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December 20, 2011

スカイ・クロラ

 
  
スカイ・クロラ
The Sky Crawlers
 
 
    森博嗣 著
 
 
        2001年  中央公論新社
 
 
戦争が続いていました。
誰の、何のための戦いなのか、殆ど説明がなされませんけれど。 どうやら戦っているのは国家/民族を代表する軍隊ではなしに戦争法人・・・・民間の軍事会社同士が日々戦闘を繰り返している模様です。

現実にはあり得ないようなことですよね。 そうです、これはパラレル・ワールドというのか、独自の設定を持つ小説世界でのお話し。
多くは語られず、説明不十分な状態のまま、話しが進められます。

幾つも謎を提示しておいて、そのまんま。 情報の出し惜しみ。
一体こういう要素は、読み手にストレスを溜めてしまいがちなものですけれど、それがこの小説の場合、不思議と不満を感じません。
文章の旨さ、設定(ストーリーよりも設定で読ませるタイプですかね)の巧みさ、そして静謐な雰囲気に堪らない魅力があって、それで読ませちゃうんですね。

主人公は戦闘機のパイロット・・・・この世界ではレシプロ・エンジンの戦闘機同士が飛び交い、戦っているんです。
ヒコーキ好きの男の子にとって、これはちょっと胸躍る情況だな。
(因みにジェット・エンジンは未だ実用化に至らず、レーダーも未発達という設定)
そして文章は、村上春樹(但しかなり潔癖性の)ばりとでも言ってみたくなる硬質かつ精緻な美文。
綴られている文章を読み続ける、そのこと自体が只々心地好くって、願わくはずっとこのまま飛揚していたいと想ってしまいます。 グルーブ感とでも言うんでしょうか。

戦闘機パイロットとして独り、空を飛ぶこと。
飛行と、それから空中戦の描写は(実際に小型レシプロ機の飛行経験があるかのように)リアルで読ませます。
こっちもヒコーキ大好きと来てますからね、惹きつけられてしまいます。
飛行経験のない素人の私が言うのもアレですけれど、航空機に関して、かつて読んだどの文章(パイロットの手記も含めて)よりも魅力的な描写です。

過去の記憶、未来への展望や不安など、どれも曖昧なままに飛び、戦い続けるしかないパイロット。
(ある科学的措置により)不老不死を手に入れ、そのことから独自の死生観、人生観を持つに至った人々の、無慈悲で哀しいお話しです。
詰まるところ、これってSF小説だったのか?

「スカイ・クロラ」、読ませますね。 完全にノックアウトされちゃいましたよ。
暗示的な事柄が多くて、それも多くの謎が未解決のままで終わってしまうんですけれど、それでいて読後感は充実しています。
これはどうやら連作で、他に何冊か続くようですね。 是非とも読んでみなければなりません。
 
 

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