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June 16, 2011

魔弾

  
 
魔弾
The Master Sniper
 
 
  スティーブン・ハンター 著
  Stephen Hunter     1980年
 
     玉木亨 訳    新潮社
 
 
今回は冒険小説らしい冒険小説に出会えて大満足であります。

第二次世界大戦の末期、敗色濃いドイツ軍が隠密裏に開発した革新的な狙撃システムと、それを操る天才狙撃手と、対するは連合国軍側の後方にあって閑職をかこつ米軍士官の闘いです。

原題の The Master Sniper は、マイスタァシュッツェと呼ばれた敵役のドイツ軍きっての狙撃手のこと。
「マイスター」という言葉に込めたであろう、著者の想い入れを感じますね。

主人公は連合軍のアメリカ人士官。 皮肉屋のイギリス人上司と自堕落な部下に挟まれ、後方(ロンドン)で過ごすまったく張合いのない日々。
敵役・・・・というより、もう一人の主人公は冷徹なドイツ軍中佐。 この人が狙撃の名手 = マスタースナイパー = マイスタァシュッツェ というワケです。

熱血漢VS冷徹漢(?)という、この手のドラマに好くありそうな対立構図。 それがここではハッキリと、そして解りやすく描かれているんですね。
この場合、敵役の冷徹さんには、強いが上にも強く、もう圧倒的な存在であってくれなければドラマが面白くなりません。
その上、(敵役ながら)カッコ好いなら更に効果的。 序盤で不遇をかこつ主役(熱血野郎)が、その分引き立って、ドラマもより盛り上がるってモンですからね。
その点、マスタースナイパーのレップ中佐に関してはもう合格点以上。 超人的なまでの狙撃と、鋼のプロ意識を見せつけてくれます。

一方熱血側は序盤から中盤まで、一向火の点かないボヤキ野郎でして、まったくもってもどかしいったらない。
ま、その分ラストの追い込みが激しく、読むものをしてコーフンさせるんですけれどね。

冒険小説として必要な要素が、一冊にギッシリと詰まっている気がするのは、本書が処デビュー作という著者の気負いが込められているお陰でしょうか。

・平素はとんと冴えない主人公、嫌味たっぷりな上司、呆れるほど怠惰な部下 -> が、実はヤル時はヤル連中だった。
・味方陣営(連合国軍)内の不協和音。 最前線~後方の人間模様。 大戦末期の絶望、虚無感。
・超一流の狙撃手にしてクールであり、悲劇属性をまとった敵役。
・銃器/メカにまつわる凝った描写と、狙撃シーンの壮絶さ。

ふむふむ、古今この手のドラマに(日本のマンガ/アニメにも)よくありそうな黄金パターンが見て取れますな。
こういう勘所をしっかりと押さえているんですから、なるほど面白いワケです。

けれど、女性の描き方はイマイチ中途半端だった気がしますね。(著者としては、その辺あんまり興味がなかったのじゃあないかと想いますね)
ともあれ、読んでいて途中から止められなくなったのは敵役のマイスタァシュッツェ、ドイツ軍武装親衛隊レップ中佐のダークな魅力によるところ大でありますな。

傑出した冒険小説ですけれど、惜しむらくは邦題がいまひとつですかねぇ。
「魔弾」なんてするよりも、原題の The Master Sniper を生かせば好いのに。 えーと例えば「狙撃のマイスター」なんて題にしてみたらどうだ?
 
 

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Comments

>「魔弾」なんてするよりも、原題の The Master Sniper 例えば「狙撃のマイスター」なんて題にしたら
おっしゃる通りですね。
もとよしさんのブログで、魔弾と来たから、余計にウェーヴァーかと思いました。

> スティーブン・ハンター 著
この人の「真夜中のデッド・リミット」は物凄い傑作ですよ。
某所からの帰りの電車で、狂ったように読みふけった記憶があります。

Posted by: 晴薫 | June 17, 2011 at 11:25 PM

>晴薫さん

>魔弾と来たから、余計にウェーヴァーかと思いました。

ですよねぇ。 魔弾とくれば、どうしても「魔弾の射手」を連想してしまいます。(笑)
おまけに舞台(の一部)はドイツときていますし!
こいつはどっかで件のオペラが絡んでくるんじゃあないかって、お終いまでそう想いつつ読み進めました。(^^ゞ

スティーブン・ハンター。 本書「魔弾」の他に、傑作を幾つも世に送っているようですね。
晴薫さんお勧めのも含めて、追っ掛けてみたいと想います。(^ァ^)

Posted by: もとよし | June 18, 2011 at 12:16 AM

こんばんは~
 あら、今回はオペラ?なんてわたしも思ってしまいました^^。
冒険小説だったのですね。
わたしは未読ですけれど、原題の方がかっこいいなと思いますよ。

Posted by: みい | June 18, 2011 at 07:03 PM

>みいさん

そうですよね。 原題の方が余程カッコイイのに!(^ァ^)
想えば私、外国語から翻訳された小説を読むのって実に久しぶりのことで、最初はちょっと文章に慣れませんでした。
でも途中からどっぷり、我を忘れてハマリ込みました。 面白いですよ~。(^ァ^)

Posted by: もとよし | June 18, 2011 at 07:52 PM

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