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May 13, 2011

赤穂浪士

  
 
赤穂浪士
 
 
      大佛次郎 著
 
         1929年  新潮社
 
 
小説「赤穂浪士」の新聞連載がスタートしたのは昭和二年のこと。 その翌年には完結を見、出版のされた昭和四年(1929年)といえば世界恐慌の年であります。

ご存知「忠臣蔵」の基となった元禄赤穂事件の顛末に、著者独自のフィクションを交えた本書は、旧来の(クラシックな)忠臣蔵のイメージを大きく書き換えた、新感覚のドラマに仕立てられています。
それ故でしょう、昔から親しまれてきた歌舞伎由来のお馴染みエピソードなど、ここではあまり扱われないのです。

         ▽▲▽▲▽▲

江戸城松の廊下で赤穂藩主浅野内匠頭が吉良上野介に対し刃傷に及び、世間をあっと驚かせたのは元禄十五年十二月十四日(1703年1月30日)のこと。
この事件に対して幕府の下したジャッジはと言えば、喧嘩両成敗という当時の通例を無視して、浅野にばかり咎の及ぶ(内匠頭は切腹、更に浅野家はお取り潰しなのに対して、吉良側は委細お咎めなし)、もう誰がどう見ても公平とはいえぬもの!

なんたる不道理!!
これってもう仇討ちするしかないでしょ! 絶対やるよね、浅野家家臣の皆さん?・・・・という、世論の高まり。
世間の関心と、そしてにわかに危機感を強める吉良家(と縁戚関係にある上杉家)の警戒網を掻い潜って、智嚢を傾け忍苦に耐える、仇討ちプロジェクト(PL:大石内蔵助)の始まりです。

それまでの「忠臣蔵」とは切り口を異にするこの小説。
中でも米沢藩・上杉家家老の千坂兵部を、大石内蔵助に比肩し得る戦略家として描いていることで、スゴク面白くなっていると想いました。
浪士の討ち入りが、この場合単なる主人の仇討ちに留まらず、政治レベルの駆け引きへと繋がっている理屈を、巧みに読み解いてくれるんであります。

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私がいささか残念に想ったのは、架空の(作者オリジナルの)登場人物(ニヒルな浪人・堀田隼人や盗賊・蜘蛛の陣十郎、謎の女・お仙ら)の活躍を描くのに、かなり頁を割かれている点です。(これらのパートも時代小説としてオモシロイんですけれど)

まぁ、こうした登場人物らのあるお陰で、松の廊下~討ち入りに至る過程を、事件第三者の(それも世の裏街道を往く無法者たちのシニカルな)視点を借り、現代人の感覚に従って読み解くことが出来るワケです。 そして、それこそがこの小説のセールスポイントであり、大きな魅力ではあるんですけれど。

でも・・・・・そう言っても、やっぱり私は浪士各々の活躍など、もっともっと読んでみたかったなァ。
例えば、赤穂浪士ネタとして昔から知られている逸話の数々など、大概は後世に創作されたフィクョンでしょうけれど、でも、そういった辺りを未読してみたかった私なのです。

         ▽▲▽▲▽▲

さて、小説「赤穂浪士」を一通り読み終えた今になって想うに、やっぱり私は、至ってオーソドックスな(歌舞伎ベースの)「忠臣蔵」を期待していたってことのようですねぇ。 それじゃあ自分がワルイって! 選ぶ本を間違えてますから!!

小説自体は面白かったですし、クラシックな忠臣蔵の定石を打ち崩した画期的な作品でもあります。
他の忠臣蔵ものなど、読んでみた後になるでしょうけれど、いつか再び本書を手に取る日が来るかもしれません。
 
 

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