« 東日本大震災・一ヶ月目の余震 | Main | またひとつ昭和は遠くなりにけり »

April 23, 2011

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

 
  
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
 
 
      米原万里 著
 
         2001年  角川書店
 
 
    1.リッツアの夢見た青空
    2.嘘つきアーニャの真っ赤な真実
    3.白い都のヤスミンカ
 
 
 
Photo
 
 
 
ロシア語同時通訳の第一人者として活躍された米原万里さんの自伝的三篇です。
1960年~1964年の間、当時十代半ばであったの米原さんが通ったのが、チェコスロバキア(当時)のプラハにあった「ソビエト学校」。
ここへは当時、世界五十カ国から子弟が集まったと言います。
国内でノホホンと育った私などにはもはや計り知れない多民族、多言語の世界ですよ。

そんな中で米原さんと取り分け仲良しだったのはそれぞれ民族も母語も異なる三人の女の子。 ギリシャ人のリッツア、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。
三篇の物語ではそれぞれの導入部において、親友たちとの交遊や当時のプラハ市内での暮らしぶり、ソビエト学校という特殊性を切れ味よく描いて、読ませます。

そして各章の後半では三十数年を経、いつしか疎遠となっていた無二の親友たちとの再会の旅を描きます。
この、今では消息すら確認出来なくなっている三人の元へ辿り着くまでの道程が、とにかくタイヘンなんです。
なんといっても東欧は社会主義体制の崩壊を経ていますし。
人々の暮らし向きも急変し、親友らが幼い日々に抱いていた志しもまた変節してしまっています。

無論こういうことは、米原さんの親友三人に限ったことではないでしょうけれど。(当時社会主義体制に属していた各国の、誰しもが経験して来た激動、と言って差し支えないんでしょうか)
ともあれ東欧の各国を、旧友を訪ねて歩く米原さんの視点は、そのまま激動の現代東欧史に繋がります。
そんな米原さん(その行動力はサスガ!です)によってこの三十数年間に旧友たちの辿った運命/足跡が次々に解明される過程など、読んでいてドキドキさせられますよ!

三人はそれぞれが、この間社会主義体制の崩壊、政治や社会の変転、更には戦火に翻弄され・・・・平穏無事に暮らしてこられた者など一人もいませんでした。
旧友たちと米原さんとの、三十数年を経ての再会のシーンには、やはりジンとさせられますね。
語りつくせぬ思い、万感胸に迫るとは、これ。
なにより肝心なのは、彼女らは未だ激動の渦中に居るということです。

作品と、そして著者へのリスペクトを感じさせる巻末の解説(斎藤美奈子)もまた見事。
米原万里さんでなければ描けない名作です。
 
 
    旅行者の朝食 (米原さんの食にまつわるエッセイ集です)
 
 

|

« 東日本大震災・一ヶ月目の余震 | Main | またひとつ昭和は遠くなりにけり »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61645/51470832

Listed below are links to weblogs that reference 嘘つきアーニャの真っ赤な真実:

« 東日本大震災・一ヶ月目の余震 | Main | またひとつ昭和は遠くなりにけり »