寄席は毎日休みなし
落語家柳昇の
寄席は毎日休みなし
春風亭柳昇 著
1999年 うなぎ書房
五代目春風亭柳昇師匠の高座についちゃ一度だけ、私は初めて新宿末廣亭を訪れた折に拝見したことがあります。
当時、高座に上がるのも大儀そうなご様子で、素人目にも闘病中というのが見て取れました。
が、客席からとても暖かい拍手(常連と思しきお客さんを中心に)を浴びていたのが印象的でした。
師匠が泉下の人となられたのは、それから暫くしてのことであったと記憶しています。
偶々とは申せ、一度でも柳昇師匠の噺を伺うことが出来たのは、今想えば本当に僥倖といえます。
ギリギリ、どうにかこうにか間に合いましたってところですね。
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本書は春風亭柳昇師匠(1920年~2003年)の芸談、体験談をまとめたもの。
柳昇師匠と言えば、その柔らかな物腰、押し付けがましさのない態度が印象深いです。
淡々と語るだけなのに、そこはかとない可笑しさが込み上げて来る噺っぷりは他に得がたい魅力。
亭号に相応しい(!)春風駘蕩のごとき高座は、動画サイトなどでも確認出来ますね。
そんな師匠の書き記された文章は(如何にもというべきか)気取りやケレンのない、至って生真面目なもの。
謙虚で決して偉ぶることのない姿勢があってこその、ああいう高座だったんでしょうね。
噺家を志す以前、6年間に及んだ軍隊経験。
芸人としての、弛まぬ向上心。
売れっ子噺家となった現在の、日々の雑感 等など。
老境を迎えた師匠らしい、老いについてや、健康についての記述は、いずれも含蓄に富んで、取り分け味わい深いものでした。
前向きな、しかし肩肘張らぬ姿勢に、やはり柳昇師匠らしさを感じさせられました。
平易な文体でスラスラと読み進められ、清々しい気分になった一冊です。
Comments
寄席ですか~私は行ったことないんですが、一度は行ってみたいな、と思っています。
かもですが(笑)
本は、すらすらと読み進められるのが一番ですね。難解な文章はどうもね。わたしが単純だから
Posted by: みい | March 02, 2011 08:32 PM
>みいさん
読みやすく、伝わりやすい文章、というのは大事なポイントですよね!
もったいぶらない自然体で綴られた本書は、師匠の人柄そのままで、正に文は人なりであります。(^ァ^)
寄席には入られたことがなかったのですね。
こちらにお出での際は、是非観光プランに加えてみて下さい。
ホント、「毎日休みなし」にやってますので。(笑)
Posted by: もとよし | March 02, 2011 09:56 PM