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February 26, 2011

裁判長!これで執行猶予は甘くないすか

 
 
  裁判長!これで執行猶予は甘くないすか
 
     北尾トロ 著
 
        文藝春秋  2007年
 
 
北尾トロさんの裁判傍聴記です。
そういえば前著「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」について私は、あんまり好い印象を持つことが出来なかったのでしたね。
内容については兎も角として・・・・著者の傍聴に取り組む姿勢に共感が持てなかったってことについちゃ、以前ここ「問はず~」に書き記したものです。
その次回作を読んじゃいましたよ。

内容としては前作とさほど変わらず。
裁判所の傍聴席と言う、いわば高見の場所から、被害者 VS 加害者、それに検察側と弁護側の加わったガチンコ勝負を愉しんじゃおうという筆者です。
被告と検察とのやりとりなど、被告が素直過ぎ(?)て、イマイチ質疑の盛り上がり(!)に乏しい場面など、「もっとマジメにやれ!」とか(心中で)ハッパをかけちゃう筆者のスタンスは相も変わらず~。

事件そのものもさることながら、それに関わった人々のドラマ性、人間模様を追い駆けるのが北尾さんの傍聴流儀。
世間の耳目をひくような大事件よりも、なるたけ下世話(!)な、市井の小事件を扱う小法廷を好んで見て廻ります。
で、そこに出廷する被告の中には、常識を欠いた・・・・かな~り変わったヤツのいることも多々。
彼ら彼女らの「ありえない」行動や思考にいちいち呆れ・・・・オモシロがる著者。
ん~、そういうのが、根っからスキな人なんだねぇ。
ま、こういう本を性懲りもなくまた読んじゃうオレもオレなんですけど。

それでも傍聴を重ねる内にはごく稀に、被害者/加害者(同情の余地ある場合)の法廷での言動や運命に共感し、その想いに感動することもある。
そんな時、想わず涙ぐんでしまう北尾さんです。
結構、人情派でもあるんだな。 ふむ。
興味本位/オモシロ半分(な態度と私は見てしまう)に小法廷を渡り歩いたこの傍聴記も、著者にそういう面のあるお陰で、余程救われているな、と私は想います。
 
  
 
   「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」  北尾さんの裁判傍聴記の一作目
 
 

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February 19, 2011

ラフマニノフ ある愛の調べ

 
 
ラフマニノフ ある愛の調べ
Vetka sireni
Lilacs
 
 
 監督:パーヴェル・ルンギン
 出演:エフゲニー・ツィガノフ (セルゲイ・ラフマニノフ )
 
 
    2007年  ロシア
 
 
ロシアの大作曲家ラフマニノフの一代記であります。

とにかく、ホントに綺麗な映画でした。(詠嘆)
この作品、「ラフマニノフの伝記映画」というものに対して、我々(って誰に対して言っているのだワタシは)の期待している映像がまるまる詰まっており、ビジュアル的満足度のとても高いものとして仕上がっています。
その上、音楽はもちろんラフマニノフその人の作品が鳴り響きますからねぇ。 ピアノ協奏曲第二番、パガニーニの主題による狂詩曲・・・・ ハリウッドの映画音楽作家たちが束になって掛かっても適いやしませんって!

数々の名曲をものした革命前のロシア時代と、専らピアニストとして活躍したアメリカ移住後とを、カットバックを多用して描いてゆくこの作品。
主人公(ラフマニノフ)は、ハナっから気難しいワガママ野郎として登場します。
とにかく、見ているこちらに共感させるスキを一切与えません。
憂鬱そうにふさぎ込んでばかりだし・・・・(その辺の事情は、後から説明されるんですけれどね)
そんな構成のお陰でこの映画、一回見ただけじゃさっぱり判りませんでした。
ワタシ的に、これは二回以上見なきゃ評価の出来ない映画でしたね。

十月革命前のロシア、、、、
その街並み、重厚感漂うインテリア、白亜の屋敷(ラフマニノフの生家)と生い茂る樹木、咲き競うライラック、などなど。
異国情緒をして見る者の眼を愉しませるのと同時に、彼の音楽がロシアの風土と不可分であることを明らかにしてゆくなど、ドラマ造りが巧みです。

一方、移住先のアメリカにあっては、、、、
ローリング・トゥエンティーズ当時の繁栄ぶりが映し出されます。
国中に満ちみちるエネルギー。 ゴージャス、だけれど虚飾にまみれた文化。
演奏会に集う紳士淑女、その20年代アメリカのファッション!
それらは、米露の違いを見る者に(徹底的に)印象付け、アメリカの風土に馴染むことの出来ないラフマニノフの孤独感を理解させる要素でもあるのです。 「誰も知らない私の悩み(Nobody Knows de Troubles I've Seen)」なんですね。

ラフマニノフの創作の筆が止まり、心の晴れることのなかったアメリカ時代を描く時間が長くって、決してハッピーとは言えないですね、この作品。 エンディングは綺麗にまとめていて、後味は悪くないのですけれど。
こういった構成/解釈は、あるいは、ロシアを捨てアメリカへ去っていった(ソ連政府に弾圧される姿を描いて、出国せざるを得なかった十分な説明があるとはいえ)作曲家へ向けての、ロシアの人々の遣る瀬ない気持ちの表れではないでしょうか。
・・・・そう、これはロシアの映画なのでした。
 
 

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February 15, 2011

雪やこんこ

 
 
今日は比較的早く、未だ陽のある時間に帰宅して、その後ずっと部屋に居て過ごしました。
で、さっき何気に窓から外を見たら、雪じゃあないですか!

人家の灯りや街灯に照らされた雪景色。
我が家の周囲は、日頃見慣れた様子が一変しております。

それにしても、夜に降る雪というのは、なんて風情のあるものなんでしょう。
後からあとから、降りしきる雪。
しばしの間寒さを忘れ、ボンヤリ眺め入っていたら、すっかり身体が冷えちゃいましたよ。 ブルブル。

この雪で、交通事情にも影響が出ているんでしょうか(なんといっても当地は雪に慣れていないですからね)。
今日は、早く帰っておいて助かりました。(この雪で帰宅に難儀されている皆様、スイマセン!)

しかしまぁ、こうして雪が降っていることに、さっきまで気が付かなかったなんて、我ながらもう実にノンキなもんです。
先日も雪が降ったけれど、あれはホンのささやかなもので、ほとんど積もりもしなかったけれど、今日のは本格的ですよ。
明日の朝は、一面の銀世界(おおげさ!)でしょうね。

それにしてもワタクシ、明日はお休みにしてあって、ホントにラッキーでした。(重ねてスイマセン!!)
 
 

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February 12, 2011

北洋船団 女ドクター航海記

  
 
北洋船団 女ドクター航海記
 
 
   田村京子 著
 
      1985年12月
      集英社文庫
 
 
病院の麻酔医としての長いキャリアを持つ筆者が、ふとしたきっかけで北洋を漁場とする鮭鱒事業母船の船医となったのは昭和57年のこと。乗り込んだのは、四十余隻からなる独航船を引き連れ、船上に鮭加工設備を持つ大型漁船です。
千人を超す男所帯の北洋船団に女性が単身乗り組むのは、北洋漁業の歴史上初めてのことと言います。(現在は、どうなんでしょうね)
女医と海の男たちの、二ヶ月に渡る船上生活の始まり。

陸(おか)ではベテラン医師の田村さんも、船上にあっては一から十まで素人です。
それでも全くメゲルことなく、第一線の麻酔医としての技量を生かして診療に励み、また至るところで面倒見の好さを発揮!

田村医師の、仕事熱心で表も裏もないサッパリとした気性。
誰彼かまわず交流を持つポジティブさ。
周囲の人々になんでもかんでも頼み込む屈託のなさ。
おっちょこちょい(!)で、取り繕うところのない明るさ。
そして人一倍の好奇心と物怖じしない性格で、あっという間に海の男たちとの距離を縮めてしまいます。
そう、体育会系集団の中で、やたらウケるタイプの女性っていますね。 あんな感じでしょうか? いやはや痛快也!

一方、田村さんの側も、無骨で純情一途(取り分け女性に対して)な海の男たちのことが、ある意味カワイかったんじゃあないでしょうか。
一人ひとりの人間味や、その高いプロ意識に触れるに付け、不自由で制約だらけの筈の船の暮らしに、どんどんハマってゆくんです。

終始とっても面白く読めた、とっても気分のイイ一冊です。
ちょっと癖のある文体も、読み進めるうちに、そこから本人のお人柄が立ち現われるような気がして、好感が持てます。
本書の終盤、船(そしてそこに働く人々)との別れを惜しむ田村さんの心情には、ちょいと泣かせられますね。
 
 

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February 09, 2011

新習志野公民館

 
 
先日あったオケの練習は、いつもとは会場を替えまして、新習志野公民館にて執り行ないました。
私にとっては初めての場所です。
ここはJR京葉線・新習志野駅の傍に位置しますけれど、実はこの界隈、私は以前にロングな散歩を敢行(!)した際に訪れているんですね。
予め土地勘が出来ていたお陰で、初訪問、そして既に暗い時間にも関わらず、駅から迷わず真っ直ぐにたどり着く事が出来ました。

それにしてもココは・・・・遠いよ・・・・とほい。
津田沼駅から新習志野駅まで行くには、(駅と路線の位置関係から)途中乗り換えを交えつつ、ぐるっと大回りして向かわなけりゃなりません。
両駅間の直線距離に比べて、時間が掛かり過ぎの感がありますね。
我が家から、その気になれば歩いてでも行ける場所(無論、チェロを担いで歩き通せる距離ではありませんけれど)だってぇのに、交通費は余計に掛かるわ、乗り換えの便は滅法悪いわで・・・・普段の練習会場には徒歩で通っている私には、いささか不便な印象です。

日頃の練習会場まで、歩いて往ける程度のところに起居している私。 我ながら、楽器を抱えての移動ってことに付いちゃあ、すっかりゼイタクになっちまってますねぇ。 自重。

         ▽▲▽▲▽▲

さて、練習したのはチャイコフスキーの交響曲第五番とラフマニノフのピアノ協奏曲第二番。

ラフマニノフの方は、この日が初のピアノ合わせです。
これまでの練習でずっとピアノ抜きで通してきたのが、今回ピアニストを迎えて、いよいよ協奏曲本来のカタチを成すわけです。

間近に見るラフマニノフのピアノパートは、豪腕にしてスタイリッシュ。
そんなピアノにホレボレと・・・・聴き入っている余裕など、こちとらにあるわけも無く。
せめてカデンツァの間、そのブリリアントさに心躍らせるばかりです。

練習を終えて公民館を出ると、何時しか雨が降り出していました。 あちゃ。
帰り路がまた長いんだ、これが。
 
 

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February 05, 2011

うた魂♪

 
 
うた魂♪
Sing, Salmon, Sing!
 
 
監督:田中誠
出演:夏帆    (かすみ :七浜高校 合唱部、ソプラノ・パートリーダー)
   亜希子   (楓   :七浜高校 合唱部 部長)
   徳永えり  (ミズキ :七浜高校 合唱部、ピアニスト)
   薬師丸ひろ子(瀬沼裕子:七浜高校 合唱部、顧問)
   ゴリ    (権藤  :湯の川学院 合唱部、部長)
 
 
   2008年  日本
 
 
うた魂♪」は2008年公開の邦画。
高校の女声合唱団に所属する女の子の恋と友情、悩みそして成長を描いたものです。
合唱の世界と離れて久しい私ですけれど、合唱音楽を聴くのは今も好きで、合唱団の頃が懐かしくもあり、なにより愛着があります。
「うた魂♪」はズバリ合唱がテーマの映画ということで、勇躍観てみたわけですけれど・・・・・しかし、どうにも、これが、モドカシイ内容になってしまっていると想いました。

ストーリーは如何にも青春ものらしくて、中々好いんですよ。
でも、キレの悪い、時に意図すら読めない演出が多々あったりして、残念なところの少なくない映画になっていると感じました。

なにより(私にとって肝心の)合唱の場面。
七浜高校合唱部(女声合唱団)の演奏があんまり好い出来とは言えないのです。
このレベルで全国大会常連の名門合唱団って設定は、ちょいとムリが過ぎるでしょう。
映画の製作者には、もっと合唱/合唱団というものを研究した上で映画造りに取り組んで欲しかった、と想います。
まぁ、なにをテーマに映画を造るにせよ、その対象へのリスペクトは不可欠なワケで・・・・

それでも主人公かすみをはじめとする合唱団の面々(夏帆、徳永えり、亜希子ら)は、この年頃の少女に特有の、子供っぽさと大人っぽさの交錯した、微妙にアンバランスな魅力を漂わせてホントに綺麗でした。
上に記した評価、もうなにもかも許しちゃいます(!)。
この類の美しさって、きっと、演出や映像の力ではどうにもならないものではないしょうか。
それは人の生涯のうち、ティーンのホンの一時にだけ、束の間顕われる奇跡のようなたおやめぶり。(す、すいません。 オヤジ入ってます)

         ▽▲▽▲▽▲

さぁてそれから、権藤さん率いる湯の川学院(ヤンキー)合唱団だぁ!
こちらは古典的不良ファッション(!)で固めた、見るからにワル供ですよ。
粗暴極まりない不良少年ぶりだけれど、その実結構気の好い奴だったりする彼らが、リーダー権藤の下、この世で唯一つマジになれたもの。
それが男声合唱でした。
目標/行き場を見出せない少年たちがその想いを、尾崎豊の遺した歌に込めて力一杯、熱くあつく唄い上げます。
この連中を描く場面、終始少年マンガの文法によっていて、これが中々好かった。 これだね、これ。 痛快至極!
この映画を見た私が(いろいろ文句を垂れながらも)それでもイイ気分になれたのは、製作者がこのハミダシ野郎たちに寄せる、暖かい共感の視線を感じるからに他なりません。
この連中の活躍をもっと膨らませてみれば好かったものを、なんて想います。

         ▽▲▽▲▽▲

クライマックスの舞台は全国合唱コンクールの北海道代表選出大会。
もちろん、かすみらの七浜高校合唱部もステージに上がり歌います。
このステージをラストシーンにすればどうかだったなぁ。 でも、やっぱりココでも合唱がイマイチなんですよね。
なにより、その七浜高校合唱部の合唱が如何に素晴らしいかを、登場人物の台詞に頼って説明させているのは全くイタダケマセン。
小説でもコミックでもない、これは映画なんだからサ。 ここは音と映像で表現してみせるべき!
この映画の製作者は合唱のことがちっとも好きじゃないんだ、と確信させられたシーンでした。

さて、その後のシーン。 会場に集った人々が突発的/自発的に歌い始めるサプライズが、かすみを感激させるんですけれど、この演出が相変わらずギコチナイもので、見ていてトホホなのですよ。

         ▽▲▽▲▽▲

「うた魂♪」と同じく女子高生+音楽もの映画として、例えば「スウィングガールズ」と言う先例がありますね。
ビッグバンドのメンバーに扮する俳優さんに楽器を一から習得させてから撮影に臨み、結果、素晴らしい成果を上げました。
それに比べ、「うた魂♪」を造るにあたっては・・・・合唱ならば楽器を使わない分ハードルが低そうだし、簡単にコトが運ぶとか(かなり安易に)考えてはいなかったでしょうか。
合唱シーンばかりでなしに、映画のそこかしこに、そんな心構えの低さが伺える気がするのです。
権藤率いるヤンキー合唱団など、秀逸なプロットもあっただけに残念至極。
ここはドラマ中で権藤の吐いた台詞をそのまま、この映画の製作者に返してこの項を締め括りたいと想います。
 
 
 「合唱なめてんじゃねぇぞこのヤロー!」
 
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
 
 
 
※映画の中では突発的/自発的な全員合唱でしたけれど、実際にはしばしば企画して行われることでありまして。
昔私が参加した地区の合唱祭でも、何度も全員合唱をやりましたよ。 好い想い出です。
NHKコンクールでの全員合唱「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の画像を見つけたので、一例として。
こちらは中学生による合唱。 「うた魂♪」の合唱シーンよりもずっとずっと素敵、と想います。
 

  
 

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