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November 20, 2009

喜劇 駅前旅館

 
 
 喜劇 駅前旅館
 The Inn in Front of the Train Station
 
 
  監督:豊田四郎
  脚本:八住利雄
  原作:井伏鱒二
  出演:森繁久彌 (生野次平:柊元旅館の番頭)
     フランキー堺 (小山欣一:旅行代理店の添乗員)
     淡島千景 (お辰:番頭たちの行きつけ、辰巳屋の女将)
     淡路恵子 (於菊:次平のかつての恋人)
     伴淳三郎 (高沢:次平とは旅館の番頭仲間)
     森川信 (柊元三治:柊元旅館の主)
     市原悦子 (修学旅行中の女学生)
 
       1958年 日本
 
 
先日惜しくも亡くなられた森繁久彌さん。
その出演映画の代表作に数えられる、駅前シリーズの第一作を見ました。
昭和の三十年代に、上野駅界隈の旅館を舞台として造られた人情もの。 もちろん当時の上野駅の映像も登場します。 リアルALWAYSですね。

さて、私(ばかりではないでしょうけれど)の場合、子供の時分からテレビやラジオを通して培ってきた森繁感というものがまずあって、たとえば俳優/コメディアンとして活躍していても、あるいは知床旅情を唄っても、そこにある種インテリジェンスや大人の風を感じ、また碩学の演劇人、有徳の士という印象があります。 だからして、どんなドラマに出てもコメディーをやっても、それは只の役者ではない、文化人・森繁が演じているという意識が付いて廻るんですね。

この映画での森繁さんも、只々面白可笑しくして笑わせる、というばかりではないですね。 それに、(撮影年度からして当たり前ですけれど)とってもお若いのです。
上野駅前、柊元(くきもと)旅館のベテラン番頭生野次平に扮した森繁さんは私の中の森繁像、後年の貫禄に充ち満ちた熟年ではありません。(映画が始まって暫らくの間、出演者の内一体誰が森繁さんか判然としなかったくらいです)
また、メガネもヒゲもなしで、どちらかと言えばのっぺりした顔が、如何にもインパクトに乏しいのですよ。 今時の俳優/タレントによく見られるような、いわゆる濃い顔とは正反対な、当時の森繁さんです。

         ▽▲▽▲▽▲

高度経済成長期の日本。 東京の東の玄関は上野駅。
その駅前に集結する数多の旅館は、永らく上京の旅人が宿を取るのに欠かせぬ存在でした。
が、高度成長に伴い、その客層はかつてのような個人客から、修学旅行(女学生役、若き市原悦子さんのぶっ飛び加減!)や社員旅行などの団体客へと移り変わりつつあります。

いきおい旅館の方も、個人客のリピーターよりも団体客相手をメインにと経営方針がシフトしてゆくわけで。
こうなって来ると、海千山千の番頭が腕を揮ってきた職人芸的な客寄せの手管や、肌理細やかなサービスなどはもはや過去の遺物。 なにしろ旅館としては、旅行代理店が次々に団体客を突っ込んで来るのを受けて、スピーディに捌いてゆけばそれで好いんですから。
と言うワケで、老舗旅館へ怒涛のように押し寄せる団体客。 その喧騒の日々。 昭和三十年代のエネルギーがスクリーン一杯に横溢します。

この映画、題名に喜劇と銘打ってはいますけれど、大笑いできる肩の凝らないコメディーを期待してはイケマセン。 一途に笑いを求める方には向かないのじゃあないかな。
都会の片隅でしたたかに生きてきた者たちが、時代の流れに押され、次第に居所を失ってゆく。 そんな日々の哀歓。
中でも哀の側がとても印象的で。 ユーモアよりは、ペーソスの配分がハッキリ勝っていますね。
それから(もう決して若くはない)男の意地。

笑いどころなど、今日とはもはや感覚がズレてしまっているのか、ストレートには笑えないシーンもあるし。 それよりも、当代一流の芸達者らによる芝居、その練達のアンサンブルを賞味すべし、そして繰り返し観て愉しむ価値のある映画と想いました。
森繁さん、やはり偉大です。
 
 

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