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October 25, 2009

時代屋の女房

 
 
  時代屋の女房
  Time and Tide

 
     監督:森崎東
     脚本:森崎東、荒井晴彦、長尾啓司
     原作:村松友視
     出演:渡瀬恒彦
        夏目雅子
        津川雅彦
        大坂志郎
 
           1983年 日本
 
 
小生、学生の頃そして社会人となってのかなり長い期間、合唱団で唄うことにどっぷりと、それこそ身も心もハマっていた時代がありました。 今は、もう止めてしまったのですけれどね。
その頃、相次いで所属した幾つかの合唱団(活動形態やメンバー構成、その目指す音楽など各々異なる)の内の一つに、品川区を拠点に活動する混声合唱団がありました。
 
その団では週に一度ある練習の会場として、品川区は大井にある小学校の教室を借りていたものです。
練習が何曜日にあったのかなど(あの頃、熱心に通ったくせに)もはやハッキリと想い出せなくなっていますけれど、でも、いつもJR大井町駅から件の小学校まで、商店街の続く緩い坂を歩いて通った、その道程はよく覚えています。
合唱の練習を終えての後、テノールとベースのメンバーを中心に呑み歩くのが恒例でした。 いえ、あの界隈は廉くてイイお店が幾らもあってサ。 本当によく呑んだなぁ。 そういうのが、ひたすら愉しかった頃だったんですね。
 
         ▽▲▽▲▽▲
 
この映画の原作たる小説「時代屋の女房」は、第87回直木賞を受賞した村松友視の代表作。
そのモデルとなった骨董店・時代屋は、前述の大井町駅から小学校に往く経路上、大井三つ又の地に実在した小さな一戸建ての店舗です。 1983年に撮影されたこの映画の中では、まさにその時代屋の建物、つまりホンモノがロケに使われています。

品川の合唱団に通っていた頃の私は、ですから大井町駅から練習場所のある小学校への往き返り、週に一度は時代屋の店舗を目にし、その前を歩いていたわけです。 残念ながら、お店の中に入ったことはないのですけれど。
ともあれこの作品、私にとって、自分の一時代を振り返るようなカットが幾つもあって、見ていて堪らなく懐かしい気持ちになってしまうのです。
 
時代屋の主人安さん役に渡瀬恒彦さん。 こういう寡黙な男をやらせると、やはりピタリとハマリますね。 漂わす渋さもさすが。 もっとも、女房の真弓からは「ダンマリスケベ」などとあっさり看破されてしまう安さんです。

そして、時代屋の女房真弓役に夏目雅子さん。 一世を風靡した、早世の惜しまれる名女優ですね。 けれど私は、何故か惹かれるものをあまり感じないのですよ。 特段苦手とか嫌いとか、そういうワケではないんですけれど、演技力とか存在感などとは別のところで、どこか相合わないものがあるのかもしれませんね。

原作の小説も(もう随分と昔に)読みましたけれど、あちらと比べて映画の方は全体の質感(音楽なんか特にね)がかなりウェット、多情多感気味。
描写が生々し過ぎて、いささか下世話に感じてしまうのです。 もっとしっとりと、会話や雰囲気を主にして進めればいいのに、とも想います。 ベッドシーンなんて要らないからサ。
原作ではもっとずっと洒落ていて粋や軽み、そしてどこかうら哀しい空気感があったと想うのです。
 
そうは言っても、安さん真弓夫婦と友人達との台詞のやりとりや、大井界隈の風情など、その生活感漂う描写はとてもイイ。 この辺りは映画ならではですね。
そして、真弓の標榜する「何も言わず、何も聞かずが都会の流儀」に対して、そうはいかない安さん・マスター・今井さん達それぞれの抱える未練の描き方などストレートで(時にコミカルでもあり)判りやすく、映画は映画でとっても面白かったです。
私がちょっと原作に拘り過ぎているのかも、ですけれど。
 
今回ネットで調べて知ったのですけれど、時代屋の建物は既に取り壊されてしまっているそうですね。 大井三つ又のあの狭い敷地へと綺麗に収まって、なかなか風情のあるお店でしたけれど。 諸行無常。
この映画の公開当時、「時代屋の女房」の映画ポスターが当の時代屋の店舗にまで貼ってあったのがなんだか面白可笑しく、未だ印象に残っています。
あの当時は小説に関心がなく、映画も見ずじまいだったのですけれど、今頃になって何気にDVDを鑑賞して時代屋と再会した私は、あの頃あの界隈の風景一々が恋しくてなりません。
 
 

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Comments

こんばんは!
 この映画観てはいませんが、観てみたくなりました^^。
「時代屋」って名前がいいなあ~
取り壊しになったのですか。淋しいですね。
古いものがだんだんと姿を消していくのは・・・。

Posted by: みい | October 30, 2009 at 07:31 PM

>みいさん

「時代屋の女房」って素敵な題名ですけれど、その時代屋が実在した骨董屋さんってのがまた愉しいですよね。(笑)
今回ネットで検索したら、我が時代屋は疾うに取り壊されている事実が判って、私はしばしパソコンの前で固まってしまいました。(^^ゞ

下町・大井周辺の人情は映画の前半と終盤でたっぷり味わう事が出来ます。 その懐かしいイメージは、きっと日本人に共通のものでしょうね。
映画中盤での盛岡行、その旅情と珍道中(?)も楽しいし、なかなか盛り沢山の内容でした。(笑)

Posted by: もとよし | October 30, 2009 at 08:09 PM

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