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February 16, 2008

潮騒

 
  潮騒

    監督:谷口千吉
    原作:三島由紀夫
    音楽:黛敏郎
    出演:久保明 (新治)
        青山京子(初江)
        沢村貞子(とみ)

           1954年 日本


ちょいとした野暮用があって、以前住んでいた川崎市中原区へゆく。
用事は午前中に済ませたので、午後から、以前ここに住んでいた頃よく訪れた川崎市民ミュージアムに、久々に入ってみた。

折しもミュージアム内の映像ホールでは、昨年亡くなった映画監督、谷口千吉の特集をやっていて、その監督作品のうちの一本、1954年製作の「潮騒」を観ることが出来た。
「潮騒」の映画は今日までに、なんと5本も造られている。


 <製作> <監督>  <新治>  <初江>
1.1954年 谷口千吉  久保明   青山京子
2.1964年 森永健次郎 浜田光夫  吉永小百合
3.1971年 森谷司郎  朝比奈逸人 小野里みどり
4.1975年 西河克己  三浦友和  山口百恵
5.1985年 小谷承靖  鶴見辰吾  堀ちえみ


邦画界の人気コンテンツと言うわけだけれど、その嚆矢となるのがこの54年作品である。 その後、10年を超さずにリメイクされ続けていて、でもここ20年間は造られていない。

鄙びた漁村の風景や、貧しくも地に足が着いた漁師の生活など、明朗で判りやすい作風は、谷口監督の特徴なんだろうか。 二人の前に立ちはだかる、村社会の旧弊さの描写なども、あまり陰湿にならないのが好い。

そしてなにより、主役の二人の瑞々しさに好感が持てる。 新治はひたむきで謙虚な滅茶好い奴だし、フレッシュでしかし浮ついたところのない初江。 脇役陣もしっかりしている。 気骨のある新治の母、とみに沢村貞子。
音楽は黛敏郎。 伊勢湾にフランス近代を持ち込んだ。

最初はうんと地味な文芸作品と想っていたのだけれど、いつしか夢中になって観ている自分があった。
私は5本ある「潮騒」の映画をどれも観ていないし、三島の原作も未読なので、純情一筋な二人(平成の日本にあっては絶滅危惧種に指定されそうな)の恋路をハラハラしながら見守ってしまったのである。
あまり期待せずに臨んだから、余計にそう想うのかもしれないけれど、見終えての満足度の、ものすごく高い映画だった。

この1954年版「潮騒」。 残念ながら、現在のところDVDなどは市販されていないらしい。 この日の上映はフィルムの状態が良くなかったのだけれど、この素晴らしい映画、なんとかDVD化して貰えないだろうか。

思いがけず、ホントに好い映画を観ることが出来て嬉しい。
清々しい気分に満たされて、川崎市民ミュージアムを後にした。
  

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Comments

happy01わたしは、1975年のを観ましたよ。
原作も、読んでいます。でも、忘れかけていましたが、この記事拝見して、あの感動を思い起こしてしまいました。わたしもいい映画だと思います。
アハハ・・絶滅危惧種ですか?ほんとにそうですね(笑)でも、心の奥では、憧れですよね。
ああ・又もう一度原作読んでみたくなりました。そして1954年のも観たいです!

Posted by: みい | February 17, 2008 at 10:27 AM

素敵な一日でしたね。
こういう思いもかけない楽しみは、小さいけれど確かな幸せですよね(笑

潮騒は原作と山口百恵のを見たかな。
吉永小百合のがWOWOWでやっていたけどスルーしてしまった。
しかし5本もあるとはビックリです。

Posted by: 晴薫 | February 17, 2008 at 11:13 AM

>みいさん

友和&百恵のをご覧になってましたか。
私は原作すら読んでいなかったのでストーリーを知らず、その分、映画の中盤からお終いまでワクワクでした。(^ァ^)

倫理観が、今では考えられないくらい厳しかった54年の映画は、純情一筋の二人を爽やかに描いてくれました。

同じ三島作品の映画では、以前観た「春の雪」でのヘヴィーな印象が強烈で、ちょっと覚悟(?)しながら観ていたんですけれど、観て気分の良くなる映画でした。
チョイ役で出ていた、若い頃の三船敏郎がカッコ好かったです。

Posted by: もとよし | February 17, 2008 at 08:08 PM

>晴薫さん

晴薫さんも友和&百恵版をご覧になってましたか。
やっぱりこれが一番人口に膾炙してますでしょうか・・・・・世代によっては吉永小百合版ってことになるんでしょうね。

滅多に観ることの出来ない54年版に触れられたのは僥倖でした。 でも、他の映画も原作も知らないので、比較が出来ないんですね。orz
遅れ馳せながら、原作など読んでみようかと想います。(^^ゞ

>しかし5本もあるとはビックリです。

年季の入った映画ファンならば、二作、三作とリアルタイムで観ていそうですね。
でも、85年を最後に、もう20年以上造られていないんですよね。
絶好調の邦画界。 リメイクも盛んとはいえ、集客のターゲットとなるべき若い世代の倫理観が当時と今とでは違ってしまってますから、こういう映画はもう企画すら通らないんじゃあないかと想います。(^^ゞ

Posted by: もとよし | February 17, 2008 at 08:09 PM

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