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January 12, 2008

逃亡くそたわけ

 
  逃亡くそたわけ
 
     絲山秋子著
 
       2005年
 
 
主人公ハナは二十一歳の女性。 「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」 こんな不思議な文句が絶え間なく聴こえる幻聴、そして躁病に悩まされて、福岡の精神病院に入院中。
でも、「このままじゃダメになる」。 回復の兆しもなく、止め処ない薬漬けの毎日への不安から、病院を逃げ出し、ゆくあてもない逃避行を始めた。 旅の相棒は、同じ病院の患者仲間「なごやん」。 博多に住みながら、しかし東京を愛してやまない名古屋人。

病気の悩みや、終わりの見えない逃避行の深刻さなどとは裏腹に、小説はなんとも心地好い文体で綴られる。 なにしろこの二人、なごやんのクルマに乗って九州を南下しがてら、観光地はしっかり見て廻るし、温泉にも入るし、更には泊まるところがなくて車中泊をしたり、河に入って流されてしまったりという珍道中ぶり。

旅の間、毎日小さなケンカばかりしているハナとなごやん。 そう遠くないであろう、二人のお別れの予感と、出口の見えない焦燥感が付きまとう旅。 けれど、車窓から眺める景観の描写や、ハナのまくしたてる福岡弁などで、(病気やトラブルと戦いながらも)飄々として爽やかな、ロードノベルに仕上がっている。

どこまで行こうと出口が見えてくるわけでもない。 ただ、どうしようもない現状から逃げ続けているだけ、というのは十分判っている。 この旅も、やがて終わりが来るってことを意識しながらも、その割りにあまり追い詰められた風もないハナ。

読んで気分の好い小説には違いない、でもどこか消化し切れない、釈然としない気がするのは、実はそれだけ主人公に共感しているということなのかもしれない。
 

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Comments

タイトルが決まってますよね。どうも新しめの作家の小説にはあまり目が届かないほうなんですが、もとよしさんのご感想を拝見すると不思議に興味がわいてくることが多いです。同じ感想記でも逆に興味が薄れてしまう場合があったりして(^^;)やはりこうしたものにも相性というものがありそうです。のだめのTVドラマは二晩見逃して最後の回だけ見ました。漫画のほうが好きだったので実写を見ることに抵抗があったんですが、予想以上に面白かったね。

Posted by: 屁爆弾 | January 13, 2008 at 11:37 PM

>屁爆弾さん
 
「逃亡くそたわけ」って、また思い切った題名を付けたもんですね。(笑) お陰で、掴みはバッチリってところですけれど。
主人公らの病と言う、重いテーマを含んでいるにも関わらずカルイ乗り、またライトな文体で通している辺り、今風なんでしょうかね、とまれそのバランス感覚を面白く感じました。
 
のだめ、面白かったですね~。
笑いの仲にもシビアな展開のあるのが好かったです。
主人公らの他、脇役陣のキャスティングが楽しく、また好演して、楽しく見入ってしまいました。

Posted by: もとよし | January 14, 2008 at 08:59 PM

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