« 一度の散歩で図書館を二つ見つけること | Main | 背負い富士 »

April 16, 2007

ダ・ヴィンチ・コード

 
 
  ダ・ヴィンチ・コード
  The Da Vinci Code
 
    ダン・ブラウン著
    越前敏弥訳
 
       角川文庫
 
 
言わずと知れたベストセラーを、今頃になって読んだ。
世界的な大ヒットをみた理由は、キリスト教(カトリック)の歴史と教義にまつわる意外史を取り上げた点。 ストーリーに沿って、キリスト教暗黒史みたいなものが次々と開陳されるところでしょうか。
でもそれは、この道に詳しい人ならば、今更なにを騒ぐかなあ、とでも言いたいところかもしれないし、(もしかしたら)こういうのは取り扱い注意事項だからして、ぞんざいに扱ってもらっちゃ困るんだよね、などと呆れ果てるかもしれない。
 
小説の主人公は碩学の米国人宗教象徴学者、そしてその相手役のパリジェンヌは、やり手の暗号解読官。 このタイプの小説には珍しいくらいの常識人で、保守的。 思いっきり奥手の人物にしているところが、キリスト教史についての露悪趣味と上手くバランスを取る結果になっていると思う。
筋立て、構成は巧みだし、登場人物の配置も気が利いているけれど、一方、アナグラムを使った謎解きなどは、英詩を解さない身にとっては、残念ながらちっとも面白くないのである。
このダ・ヴィンチ・コード。 面白い小説のひとつとしてあげるに吝かではないとしても、是非とも読まねばならない傑作、とまでは思わない。 とまれ、通勤の合間に読む本としては最適なエンタテインメントであった。
それに読後、キリスト教史について、ネットでいろいろと調べてみる切っ掛けにもなった。 薀蓄のネタとしては、実にエキサイティングな素材と言える。

よく、歴史ドラマ(NHK大河とか)などで、史実とは別に、ライターによって創作された事件や登場人物がストーリーに差し挟まれることがありますね。 視聴者に、これまでも史実だと思い込まれちゃうとマズイんじゃないの・・・・なんて心配になってしまうことがあるけれど。
それが、このダ・ヴィンチ・コードでは、小説の最初で(無節操にも!)ここに書いてあることはぜ~んぶ事実に基づいてますからねって謳っちゃってる。
まあ、これなど「私は嘘をついたことがありませんっていうウソ」みたいなもので、一々問題にするコトもないんだろうけれど。 とまれ、この冒頭の一文は、本作のキリスト教史に対するスタンスを暗喩している、いわば詞書みたいなものと想う。
それにしても作中、悪者一派みたいに描かれている実在の教団にとって、小説のヒットは災難だったしょうね。

|

« 一度の散歩で図書館を二つ見つけること | Main | 背負い富士 »

Comments

>是非とも読まねばならない傑作、とまでは思わない。 
>通勤の合間に読む本としては最適なエンタテインメント
まさしく仰るとおり。
軽く読めるから大量に売れるんですよね。
でも内容がなさ過ぎるのもダメ。

その辺の頃合いが丁度良かったダン・ブラウンでした。

Posted by: 晴薫 | April 16, 2007 at 10:52 PM

>晴薫さん

角川文庫版のダ・ヴィンチ・コードは全三巻(上・中・下)からなっていて、ちょっと身構えて読み始めたんですけれど、あっという間に読み終えてしまい、ちょっと拍子抜けしてしまいました。(笑)
象徴学者の主人公が、格闘はからきしダメだし、運転も下手って設定が面白かったです。 そして相手役の仏人女性は・・・・もちろんその分しっかりとしている訳ですね。(笑)
キリスト教史にまつわる露悪趣味が程好いスパイス(?!)になって、ホント、飽きずにスラスラと読めてしまいました。

Posted by: もとよし | April 17, 2007 at 01:54 AM

こんばんは。
 この映画は観ましたよ。ミーハーなので話題作は観たくなるのです(笑
本は読んでいませんので、キリスト教に関する知識があまりない私には、解り難いところがありましたが、スピーディな展開、謎解きの面白さがありました。ルーブル美術館・教会の内部の映像に興味がありました。謎は、謎?だけれど面白かったです。

Posted by: みい | April 17, 2007 at 10:42 PM

>みいさん

映画の方をご覧になってましたか。(^ァ^)
フランスとイギリスの名所旧跡廻りみたいなストーリー展開に、これは映像化したらさぞや面白いだろうなと思いました。

小説だと全三巻ですけれど、お話しの中では2日間くらいの出来事でした。 その間にあんなことや、こんなことがあって。(笑) ホント、スピーディな展開でしたね。

Posted by: もとよし | April 19, 2007 at 12:55 PM

本の完結の結びが、「ひざまづいて、マグダレーナのマリアの声が聞こえる、、」とかでダヴンチ コートの本が終わる。おもて表紙から始まって内容、裏表紙まで何から何まで悪趣味な本でしたが、驚いた事にダン ブラウンの処女作「天使と悪魔」が意外にスリルとサスペンスに満ちた探偵小説でした。話の流れがガタンと何処から湧いてくるのか取って付けたみたいな事になるスタイルは一緒でしたが、会話文の内容で読み応えがあるのが多かった。最初から映画作成をゴールとするエンタメ本として見たら読める本かもね。
ダン ブラウンはウンベルト エコーの「薔薇の名前」の猿真似と言うと言い過ぎだから言わない事にすると言う事にします。

しかし殆どの先進国でベスト セラーって(私もアホみたいに買った方ですが)、何処がそんなに魅力的なのだろうかと疑う。悪趣味でない本を書ける人は珍しいに違いないから、じゃ、徹底して彼処まで悪趣味になるのも本人の生計を立てる選択かもね。

Posted by: でんでん虫 | April 22, 2007 at 12:10 PM

>でんでん虫さん
 
ダン・ブラウンの「天使と悪魔」って、ダ・ヴィンチ・コードと同じ主人公が活躍する、シリーズの第1作ですよね。 私は未だ読んでないのですけれど、翻訳版が出ていますから、そのうちにチャレンジしてみたいです。 こちらの方が面白いですか。 それは楽しみです。(^ァ^)

許されるギリギリまで悪趣味を貫くってのが、世界的ベストセラーの秘訣でしょうか。 でも、それはそれで難しそうですね。 一歩間違ってやりすぎると、大変なことになりそうで。(^^; やはり才能のなせる技か。

「薔薇の名前」も未読です。 エーコって記号学者でしたよね。 ダ・ヴィンチ・コードの主人公が象徴学者と言うことで、性格的(薀蓄好き)に似ているのでしょうか。 こっちも、いつか読んでみなくちゃ。

Posted by: もとよし | April 22, 2007 at 05:55 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61645/14695571

Listed below are links to weblogs that reference ダ・ヴィンチ・コード:

» ダ・ヴィンチ・コード  ダン・ブラウン [雨の日の日曜日は・・・]
今さらですけど読了です。 きっかけはオフクロが入院した時にお見舞いとして伯父夫婦が持ってきてくれたのを横取りしたことでした。 [Read More]

Tracked on April 16, 2007 at 10:55 PM

« 一度の散歩で図書館を二つ見つけること | Main | 背負い富士 »