« 書店の多い街 | Main | ジム・ビーム・ライ »

March 21, 2007

シェルタリング・スカイ

 
 
 シェルタリング・スカイ

    ポール・ボウルズ著

       大久保康雄訳
           新潮文庫
  
  
いやはや降参、である。 このアメリカの作家の代表作にはまったく不覚を取った。
なにしろ文章がもの凄く読み難い。 延々と開陳される主人公の内面描写も、文体があんまりカタくて、読んでいてほとほとクタビレてしまった。 この小説については、テキトーに読み飛ばしてしまった部分が少なくないことを、白状しておかねばならない。

おっそろしく晦渋な文体は、元々の英文からそうなのかもしれないけれど、翻訳のせい、ということもあるのじゃないかと想う。 この日本語版は1955年に初出のものを、90年代、ベルトリッチ監督による映画化を契機に文庫化されたようである。 出来ればその機会に、現代の読者に向けて全面的にリファインするべきではなかったか。  これで読みやすい翻訳になっていれば、素晴らしい小説なのであろうに。

第二次世界大戦の直後。 ニューヨークの有閑階級に属する若い夫婦とその友人、いわばセレブの三人が、北アフリカの砂漠地帯を旅する。
その砂漠の、凝った情景描写はフォトジェニックなもので、ベルトリッチ監督の映画の方もいつか見てみたいと想わせられる。
労苦の絶えない辺境の旅を続けるうち、やがて、そのその過酷な風土の中に飲み込まれてゆく主人公ら。 単調な前半とは対称的に、後半からは思いも寄らぬ展開をみせて、かなり読ませる。 これで翻訳がもう少しこなれていてくれればなあと、惜しくてたまらない気分である。

|

« 書店の多い街 | Main | ジム・ビーム・ライ »

Comments

また難儀なのを読みましたね(笑
私はロング・グッドバイが終盤です。

今日、アマゾンから3冊届いたので、そっちに気を取られないウチに読みきらないと、また未読本が増えてしまします。

シェリタリング・スカイ・・映画も結構大変だったような記憶があります。
でも映像は綺麗だったですけどね。

Posted by: 晴薫 | March 22, 2007 at 07:43 PM

もとよしさん、こんばんは。

故・大久保康雄氏というと翻訳界の第一人者っていう感じでしたよね。私も「風と共に去りぬ」とかヘミングウェイのやつとか色々お世話になりました。でも、確かにもう古いのかもしれない、その証拠に今、新訳ブームですものね。

「シェルタリング・スカイ」、映画も難解でした(^^;)。
淀川氏が激賞されていましたね。

Posted by: バルカローレ | March 22, 2007 at 09:37 PM

>晴薫さん

映画の方をご覧になってましたか。
この「シェリタリング・スカイ」、半ば以上まで読み進んだ頃になって、ようやくすごい小説と気づかされて、それまでテキトーに読み飛ばして来たことを後悔しました。(^^ゞ でも、今一度、精読して再チャレンジ、という気力が湧いて来ないです。orz
出来れば、これも村上春樹さんに翻訳してもらいたいところです。(笑)

Posted by: もとよし | March 23, 2007 at 07:41 AM

>バルカローレさん

バルカローレさんも映画をご覧になってたんですね。 やっぱり難解でしたか。(笑)

私は「風と共に去りぬ」は未読ですけれど、ヘミングウェイは何冊か読んだことがあります。 ずっと昔のことですけれど。 それも大久保康雄訳だったかもしれませんね。
古風な文体には比較的抵抗が無い方と思うんですけれど、この小説はダメでした。 楽しめるところまで、歩み寄ることが出来ないで。 カタイ文章が読めなくなって来ているってコトなのかも。(^^ゞ

Posted by: もとよし | March 23, 2007 at 07:43 AM

もとよしさん~こんにちは!
私も、この本と映画と、両方見ました(読みました)何といってもかつてモロッコマニア?の私としては、外せないものだったんです^^。
でも、もとよしさんと同じに、ところどころ難解で、とばし読みをしてしまいました(^^;) 雰囲気は感じられた様な気がしました 汗)
他にも、ポール・ボウルズの本にトライした覚えがありますが、あまり印象に残って無くて、今では何ていうタイトルだったかさえ覚えてないという有様です。
私も村上春樹さんに、改めて翻訳しなおして欲しいに一票!です☆

Posted by: latifa | March 26, 2007 at 10:26 PM

>latifaさん

原作と映画と、両方ご存知なんですね。 サスガ!(^ァ^)
やっぱり、難しかったですか。 そうですよね。(笑)
ボウルズは元々アメリカの作曲家だったのが、作家に転進してモロッコに住んだそうですね。
砂漠の雰囲気が伝わる(ような気がする(^^ゞ)のは、きっとそのせいでしょうか。
ホント、誰か(と言うか、どこかの出版社で取り上げて)今風に翻訳してくれないかなぁ。 このまま埋もれさせてしまうのが惜しい異色作ですものね。

Posted by: もとよし | March 28, 2007 at 11:48 PM

映画のシェルタリング・スカイだいぶ前にみてて
偶然今回DISCASでDVDをまた借り、今晩みるつもりです

作家のポール・ボウルズ(本は読んでいない)のことは
あまり詳しくはなかったのですが、つい先日なにかで
見ました

映画の記憶はもう定かではありませんが、所々非常に
強烈な印象が残ってて、特に荒涼とした大地と鉛色の
空が退廃的な男女を象徴していた記憶があります

見るのはいったい何年ぶりでしょうか・・・

今夜が楽しみでもありますが、記憶の中にだけとどめて
おくほうがいい場合だってありますからね

はてさて~~

Posted by: ママ | April 23, 2007 at 01:49 PM

>ママさん

映画「シェルタリング・スカイ」はいかがでした?
昔見た映画を、もういちど見直すってのは私も好きで、時々やってみることがあります。
歳月を経てから見直すと「あれ、こんなんだっけ?」なんて思うことがある一方で、見方が深まる(「そ、そうだったのか!(^^;」とか)ということもあって。 なかなか面白いモンと思います。

私も「シェルタリング・スカイ」の映画を見てみたくなりました。 原作の方は観念的な描写が多くて、映画化すると退屈なばかりになりそうな気がしてしまいますけれど、一方、砂漠の情景や街の様子、隊商の生活など、一体どんな画面になっているんでしょう。 映像美的に、とってもそそられるモノがありますねえ。

Posted by: もとよし | April 24, 2007 at 05:31 PM

月並みですがやっぱり記憶の中にだけ残しておくべき
だったことを最初に申し上げねばなりません(笑)

っていうか、実に無駄な時間を消費したというべき
でしょう(ここまで言うか・・・)

映画だけでなく小説にしても、好き嫌いがありますので
一概にいえないことは分かっていますが

うーん、なんていうんでしょうか
かったるい・・・うーんこの表現かなあ一番いいのは。

「ほんまに好きにしてちょうだい」
「金有り余ってても、もっとなんかに使えんのかい」
「死ぬだけやったら、自国でもできまんがな」

おーの辛気臭い!!

簡単に申し上げればこんな具合ですハハハハ

人それぞれの解釈はあるでしょうが、あたし思うに
いい映画、いい文学というものは「万人」に分かるように
創るべきだと思っています

いくらノーベル賞をもらった「もん」でも、みんなに
分からんようなものは仕方ないと違います
(この作品は違いますが・・・)

あたかも、「分からんほうがアホや」みたいな作り手は
嫌いです

マスターベーションはひっそりしなさい!!(笑)

ただ最後に風景はそれなりに美しい
これだけです。

Posted by: ママ | April 25, 2007 at 01:05 AM

>ママさん

>月並みですがやっぱり記憶の中にだけ残しておくべき
>だったことを最初に申し上げねばなりません(笑)

お疲れさまでした~。
やはり、想い出は美しすぎましたか。(^^;


>「ほんまに好きにしてちょうだい」
>「金有り余ってても、もっとなんかに使えんのかい」
>「死ぬだけやったら、自国でもできまんがな」

映画の主人公ですけれど、どうやら原作に忠実な正確設定がされているってことのようですね。
好んで辺境の不便な処へ旅する。 それでいて、どこに居ても、札びら切ってニューヨークと同様の生活レベルを要求するなど、確かに、どうにも共感出きそうもない主人公でしたなあ。orz

でも、砂漠の風景には、やはり強く惹かれるものがあります。
それとこの映画、音楽は坂本龍一なんですね!(@_@)

Posted by: もとよし | April 25, 2007 at 08:08 PM

よくよく考えてみますに、これから映画でも見て
みようかと思っておいでの方に、いささかイメージ
悪すぎましたこと反省してます(トホ)

でも、伺うところによりますと原作に忠実な創り方
なんですね、また音楽が坂本龍一ですか?
気がつきませんでしたね、うかつでした

それだけ、映像の印象が強かったってことでしょうか

でも一度ご覧になってみてください
取りようは人それぞれですから・・・

それよりポール・ボウルズの人となりのほうが
ずっと興味をひきまして、あれから色々調べたり
しました。謎の多い人だったんですね

原作を読むより、あの映画の謎がとけました

Posted by: ママ | April 25, 2007 at 10:49 PM

>ママさん

あ、どーぞお気になさらず。(笑)
もともと小説も映画も、世評に拘わらず見るタチですから。

仰る通り、原作者のポール・ボウルズは一筋縄ではいかない、なかなかユニークな人物だったようですね。 音楽家から小説家に転じたり、世界各地を放浪するなど。
この人の生涯をみると、シェルタリング・スカイの無軌道な主人公も、さもありなんって気になってきます。

Posted by: もとよし | April 27, 2007 at 09:30 PM

映画『シェルタリングスカイ』を観て興味をもち、原作を読もうとしています。

>延々と開陳される主人公の内面描写も、文体があんまりカタくて、読んでいてほとほとクタビレてしまった。

やはりそうなのですね。レヴューにも同様のことが書かれていました。やはり原書にトライするしかないのかな。いずれにせよ、新しい体験にわくわくです。

Posted by: ETCマンツーマン英会話 | July 09, 2014 at 01:17 PM

>ETCマンツーマン英会話さん
 
おいでませ、問はず語りへ。 (^ァ^)
 
50年代に翻訳された本書。 私には歯応えがあり過ぎましたね。(^^ゞ
でも、普段なかなか出来ない読書体験ではありました。 どうぞご一読を。(^ァ^)
原書で愉しまれるのは羨ましい限りです。
そういえば、映画版「シェルタリング・スカイ」。 私も、見たい見たいと想いつつ、そのまんまになっています。 いつか片付けなくちゃあならない宿題です。(笑)

Posted by: もとよし | July 09, 2014 at 10:00 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61645/14343474

Listed below are links to weblogs that reference シェルタリング・スカイ:

« 書店の多い街 | Main | ジム・ビーム・ライ »