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January 04, 2007

素晴らしきヒコーキ野郎

素晴らしきヒコーキ野郎

Those Magnificent Men in Their Flying Machines, or How I Flew from London to Paris in 25 hours 11 minutes


  監督:ケン・アナキン
  製作:スタン・マーガリーズ
  脚本:ジャック・デイヴィスケン・アナキン
  撮影:クリストファー・チャリス
  音楽:ロン・グッドウィン
    1965年 米国


1903年のライト兄弟による歴史的快挙の後、ほんのわずかな年月ではあるけれど、世の全ての飛行機たちにとって、ただ飛ぶことだけがその目的であった、幸福な時代があった。
このドラマの舞台は、そんな旧き好き時代の1910年。 世界各国の飛行家達が集まって繰り広げた、ロンドン~パリ間の航空レースである。

当時の飛行機と言えば、骨組みに布を貼っただけのシンプルな機体に、非力なエンジンを乗っけた代物。 操縦席は、覆いも窓もない吹きっさらし。 航空力学が未発達な故、飛行機のデザインもまちまちであって、なかには笑っちゃうような、奇抜なナリをしたヤツもいる。
そんな黎明期の飛行機たちが、イギリスやフランスの田園地帯の上空を、ふわふわと、それこそカゲロウのように儚げに飛翔する。 その様子と来たら、本当に、夢見心地に見入ってしまうほど美しい。

喜劇だからして、飛行機を使ってのスラップスティックなドタバタ・コメディシーンにも事欠かないけれど、私は、こういうのはあまり好きではないな。 それよりも、クラシックなヒコーキ達が飛ぶシーンを見せてくれるだけで十分楽しいのに、なんて想ってしまう。

各国から集った飛行家達のキャラも楽しい。 西部劇から抜け出て来たようなアメリカ人。 愛妻家で子沢山のイタリア人。 調子好くて女好きのフランス人。 劇中コケにされまくる役処のドイツ人は石頭でマニュアル墨守と、それぞれの役者が芸達者で笑わせる。
そんな中で日本代表を演じるのは石原裕次郎。 出番はあまりないけれど、堂々とした立ち居振る舞いが頼もしい。 マジメで優秀だが、堅物の石部金吉と言う役どころで、コメディのシーンに参加させてもらえないのが、ややカナシイけれどね。
日本は未だ純国産の飛行機を持たなかったという設定で、外国製の2機の飛行機から、それぞれ翼と胴体を取って組み合わせ・・・・いわゆるニコイチですな・・・・メイド・イン・ジャパンを仕立ててしまう。 ここら辺りからは、ケン・アナキン監督のシニカルな視線を感じ取るべし。

この映画はまた、音楽が素晴らしい。 
テーマ曲は楽天的で威勢の好い男声合唱。
そして各国から集った飛行家達の一人ひとりには、それぞれに相応しいライトモチーフと言うか、テーマ音楽が付けられている。 すなわち、アメリカ人には西部劇風。 ドイツ人は軍隊行進曲風。 イタリア人はカンツオーネ風といった具合で、いずれもステレオタイプと言うか、あまりにもベタなのが可笑しい。
それにしても、ヒロイン(セーラ・マイルズ)に与えられた音楽は、どうしてこんなにも甘くて切ないんだろう。 どうということのない場面でも、ヒロインのテーマ音楽が流れるだけで、涙が出そうになって来るよ。 それはまるで、ここに登場するヒコーキ達の将来。 新兵器として軍事利用されることになる運命を暗示しているような気がしてならない。

この他、当時の自動車やバイクも登場するし、レース会場に集う人々の典雅な服飾など、見せ場に事欠かない。 私はこの映画を、これから折々、何度でも見返すに違いない。 堂々の娯楽作品だ。

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Comments

普段はお忙しそうな、もとよしさん。
まだお休みでしょうか。
マターリした良い映画をご覧になりましたね。

>西部劇から抜け出て来たようなアメリカ人。
ホント、これだけだよね。アメリカ人は。

>愛妻家で子沢山のイタリア人。 
今とちょっと違いますね。

>調子好くて女好きのフランス人。 
コンプレックスの裏返しでようか。

>劇中コケにされまくる役処のドイツ人は
アメリカ映画では絶対に褒めてもらえないドイツ人。
可哀想だよね。

日本も1965年じゃ、しょうがないや、チクショウ!(笑

>ただ飛ぶことだけがその目的であった、幸福な時代があった。
そうですね。
人類が新しい物を作る時って、実用よりオモシロそうなんで作りました、ってことがあると思う。

良さそうな映画ですね。
機会があったら楽しみにしたいと思います。

Posted by: 晴薫 | January 04, 2007 at 06:42 PM

>晴薫さん

お陰さまで、マターリとしたお正月を過ごせました。(笑)

飛行機の登場する映画が大好きなんですけれど、なかでもこの作品は格別です。 なにしろクラシックな飛行機が沢山登場して、しかも実際に飛行するんですから。

撮影の規模からすると超大作のようですけれど、どこまでも小粋でスマートなのには感心させられます。

このレースから4年後には第一次世界大戦が勃発。 映画の中でロマンスを繰り広げた三人の若者たちなど、第二次世界大戦の航空戦まで見届けたことになります。 そう想うと、なんとも切ないですねえ。

Posted by: もとよし | January 04, 2007 at 11:08 PM

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