冥王星
冥王星が惑星ではなくなったと言う。
なんでも、惑星の定義と言うものがあって、冥王星はそれを満たさないのだそうで。 単純に、太陽の周りをぐるぐる廻っている星と言うだけでは、どうやら済まないってことらしい。
ニュースで紹介されていた、冥王星の太陽系内での位置付けやら、特徴やらなにやらを考えると、まあ妥当な措置なのかとも想う。
これは素人考えだけれど、冥王星を惑星として認知しちまうと、近年、他に幾つか同じような境遇の子が発見されていて、いや、これから先幾らも増え続けて、治まりが付かなくなるだろうってんで、こうゆうことにせざるを得ないんじゃあないだろうか。
私が昔好んで読み漁った古いSF小説だと、太陽と、それを中心にした九つの惑星には家族のようなイメージがあった。 そして、各惑星に人々が暮らしたり、九惑星連合軍とか言うの設定もあったね。 SFの舞台としての冥王星は、あんまり遠いし特徴が乏しいしで、マイナーだったけれど、例えばヤマトの反射衛星砲なんて言う、実に秀逸なアイデアもあった。
なんだか冥王星がなくなっちゃうようで、寂しいとかの感情的意見はごもっともと想うけれど(私も、古いSFファンとしてそう想うしね)、しかし、今度のことで、旧い太陽系観(世間一般レベルが持つ)から、一歩進んだ見方が出て来れば、それはそれで好いのではないかと想う。
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巷間知られるように、ホルストの管弦楽組曲「惑星」は、各楽章が太陽系の、地球を除く各惑星を描いていながら、海王星止まりである。 つまり第1曲から第7曲には各々
「火星、戦争をもたらす者」、
「金星、平和をもたらす者」、
「水星、翼のある使者」、
「木星、快楽をもたらす者」、
「土星、老いをもたらす者」、
「天王星、魔術師」、
「海王星、神秘主義者」
との表題が付いて、しかし冥王星は作曲されていない。
今度のことで、時代がようやくホルストに追いついた・・・・・のでは勿論なくて、作曲当時、冥王星は未だ発見されていなかった故、書きようがなかった訳だ。 もっともその後、ホルストの存命中に冥王星は発見されているわけなのだけれど、作曲者は、あえてこの第九惑星を追加してはいない。
ホルストの「惑星」の各曲の表題は、天文学的な意味ではなくて、これは占星術方面から来ているらしいのだけれど、それでも終曲の海王星には、如何にも太陽系の最果ての地と言う雰囲気が濃厚に出ていると想う。
そのラストは、女声合唱のヴォカリーズ、つまり「A~~~~、A~~~~」をずっとずっとずっと伸ばして、寂しげに、それこそ消え入るように全曲を閉じる。 音楽史上珍しい、フェードアウトして終わる曲である。 (クラシックだと他に、チャイコフスキーの「悲愴」が有名ですね)
これより先は、もう、ない。 本当に、ない。 まさに、最果ての地である。 第九惑星発見の知らせを受けた作曲者ホルストにしても、この海王星より先は、もはや書きようがなかったとみた。
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ところで、ホルストの没後にその先、つまり「惑星」に第八曲の冥王星を追加しちゃった人がいる。
その名は英国人作曲家コリン・マシューズ。 ホルスト協会の会長でもある。
実は私、この曲を未だ聴いたことがないのですよ。 世評、あんまり高いとはいえず、わざわざCDを買い求めようと言う気が起きなかったから。
実は、こんどの冥王星騒動(?!)に、偶々合わせたように発売された冥王星付きの「惑星」のCDがバカに売れているそうで、レコード会社としては、国際天文学連合さまさまと言うところではないだろうか。 クラシックファンがこの際、冥王星を聴いてみたくなる気持ちは判るし、実は私もそうなりかけている。
でも、例えば演奏会で「惑星」を聴くとしたら、果たしてどうかなあ。 冥王星を聴きたいだろうか? あの、聴き手をして最果てへと誘う女声合唱のフェードアウトのあとには、もう何も要らないって気がしている。 なにしろ「冥王星」を聴いたことがないのでナンとも言えないけれど、聴いて気に入るとは、多分想えない・・・・と言う、なんとも悩ましいところですナ。
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お終いに、その昔捻った「惑星」に因んだ短歌を並べてみます。 これこそ本当の蛇足。
詞書
< 英国の作曲家、GUSTAV HOLST(1874~1934)の代表作となる組曲「惑星」は、地球を除く太陽系の各惑星を管弦楽で描いた豪華絢爛の音絵巻である。 但し、この中には冥王星は含まれない。作曲の当時(1916年)この第九惑星は未だ発見されていなかったのである。>
HOLST氏第九惑星書かぬままBS中継始まる時間
絶へ間無しに戦火の報せ届きをる火星移住計画は未だか
金星は明けに明星宵もまたみやうじやうとなり地には平和を
翼ある使ひを見たか水星を翳めて飛んで落ちたイカロス
良く働き良く遊ぶことそれなりに快楽主義の積もり木星
日溜まりに昔語りす老人の廻り土星の輪のやうな子ら
魔法使ひ屹度見詰むる水晶の球これもしも天王星なら
海王星あまりに遠き星のゆゑAの行方を誰も知らざり
冥王星描き残したHOLSTに宇宙旅行の切符捧げむ
Comments
こんにちは。
ホルストの惑星に冥王星を追加するってのは、少なくとも全体の構成を考えるとあまりにも無謀な試みと思えます。
私もまだ冥王星を聴いた事はないのですが、単独で聴くのはまだ良いとしても、組曲の1曲として演奏されるとしたらかなり抵抗を覚えますね。
Posted by: くあい | September 03, 2006 09:36 AM
>くあいさん
そうですよねえ。 海王星の後に冥王星・・・・
それって、お寿司食べた後に、カレーもあるからって言われるような・・・幾ら美味しくても、奢ってくれたとしても・・・って違うか。(^^ゞ
あくまで海王星で終わるのが作曲者の意図ですから、冥王星付きがトレンドになっちまうとヤバイですけれど、その心配はなさそうな気がします。
それにしても、この時期に冥王星付き「惑星」(しかも、フィルアップに初録音の「ケレス」も入って)のCDを出して来たEMI、おそるべし!?
Posted by: もとよし | September 03, 2006 11:32 AM
もとよしさん、こんにちは。ひよきちです。
リンクの件 御快諾頂きましてありがとうございました。
早速リンクを貼らせていただきましたのでご報告致します♪
http://plaza.rakuten.co.jp/hiyokiti35/linklist/
>日溜まりに昔語りす老人の廻り土星の輪のやうな子ら
>海王星あまりに遠き星のゆゑAの行方を誰も知らざり
お歌も拝見致しました。
殊にこの2首のお歌が深く残りました。
素敵です。
果てしなく広がる宇宙。
時間も空間も超えて広がりゆくAの行方を思います。
追・地雷バトン、トラックバックさせて頂きたいと思います(*^_^*)
Posted by: ひよきち | September 03, 2006 02:58 PM
>ひよきちさん
リンクとTB、ありがとうございます。m(__)m
拙歌の方も読んで頂きまして、ありがとうございます。
どれも2年くらい前の歌で、確か、どこかのアマチュア・オーケストラの演奏会で「惑星」を聴いた折に、まとめて書いたものです。
こうして久しぶりに旧作を並べてみると、ついつい手を入れてみたくなったりして(実際、入れちゃいました(^^;)、なんだかコソバユイ気のするものですね。(笑)
Posted by: もとよし | September 03, 2006 06:03 PM
冥王星とかに行ってみたいです。
窒素とか凍って川になっていて果てしなく遠く感じるとこに小さな太陽があってさ・・・
>ホルストの没後にその先、つまり「惑星」に第八曲の冥王星を追加しちゃった人がいる。
知りませんでした。
でもコレはまさに蛇足ですね(笑
元が傑作なだけにさ。
ps
あーーーもう明日から鬱だ。
記事に関係ないコメント書いてゴメンナさい。
Posted by: 晴薫 | September 03, 2006 09:50 PM
>晴薫さん
冥王星から見上げる太陽って・・・・ なんだか、ものすさまじくも寂しい光景が浮かんで来ますね。^_^;
因みに、冥王星の公転周期は248年と197日ナンだそうで。 1930年に発見されてから、まだ三分の一周くらいしか動いてないってコトですね。 三日天下ならぬ、四ヶ月惑星?(笑) っと気の長~いハナシになったところで、また一週間頑張りましょう!
Posted by: もとよし | September 03, 2006 11:29 PM