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August 07, 2006

アポロ13

「アポロ13」
 ジム・ラベル&ジェフリー・クルーガー著
 河合裕訳

LOST MOON
 THE PERILOUS VOYAGE OF APOLLO 13
  JIM LOVELL & JEFFREY KLUGER


人類が月に行かなくなって、もう随分と経つ。 なにしろ、最後のアポロ17号の飛行が1972年のことだからして、もう、すっかりお見限りと言うべきか。 1969年のアポロ11号から始まって、12号、13号は失敗で、14号から17号まで。 それ以前の試験飛行段階も含めて、このころのアメリカは、月へ向けて矢継ぎ早に宇宙船を飛ばす、壮大なプロジェクトを廻していたことになる。
さてそのアポロ13号。 13と言う番号を背負ったこの宇宙船が、不幸にも失敗して帰って来たのは知っていたけれど、そこにどんなドラマがあったかについては、これまでまったく知らずにいた。

この本の著者の一人、ジム・ラベルはそのアポロ13号で船長を務めていた。 本書はノンフィクションで、13号の生還劇を中心に描いたものだけれど、内容はそれだけには留まらない。 慎ましい母子家庭に育ったラベルが海軍のパイロットとなり、テストパイロットから、やがて宇宙飛行士となるまでの経歴をまとめた一代記でもある。 
そこに更に、ラベルの参加したジェミニ計画やアポロ8号の飛行なども絡むので、本としてかなりの長編になっている。 また、登場人物も多く、航空宇宙関係の専門用語、あるいはNASAの宇宙開発での現場用語が頻出するし。 読破(と言う表現が相応しいかもしれない)するには結構パワーが要ったのである。
それにしても感じ入るのは、60~70年代のアメリカの(月着陸を頂点とする)宇宙開発。そのプロジェクトは、実にもの凄いパワーの結集であったのだと言うこと。

月に向かう途中、支援船(月に向かう宇宙船の、円筒形の部分)の酸素タンクが爆発して、酸素、電気、水の供給が絶たれ、月着陸はおろか、地球への帰還も絶望的となってしまったアポロ13号。 支援船が機能を停止して、残ったのは指令船(円錐形の部分)と着陸船(虫みたいな)のみである。 もはや絶望的な状況だった。

宇宙の孤児になりかかったアポロ13号を支援するのは、NASAの管制センター。 「こちら、ヒューストン」とか言って、宇宙船と交信していたあの施設である。 飛行計画について全責任を担う飛行主任は、当時37才ののジーン・クランツ。 クランツは、安全策を二重三重に敷いたなかで、それでも、起こってしまった想定外の事故にあたって、忽ちのうちに各分野のスペシャリスト(途方もない人数の)を総動員させる。

なにしろ、宇宙船としては電力が足りないのが致命的だった。 宇宙飛行士の生命維持と宇宙船の航行に必要な幾つかの機械を除いて、止められる機械は全部止めてしまい、電力を節約する。 お陰で船内は酷い寒さに悩まされることになる。
支援船のエンジンはもはや使えないため、管制センターが出した地球帰還への方策は、本来ならば月面着陸用に出来ている月着陸船のエンジンを使って、地球まで飛行しようと言うもの。 着陸船のこんな使い方は、これまでに一度もテストしたことがないのである。 なにしろ、こんな信じ難い事故が実際に起きるなどと誰も想わなかったのだから。 ギリギリに追い詰められた末に出てきた、勇気ある発想と想う。

管制センター内で、各分野の専門家達が、3人の宇宙飛行士を地球に生還させると言う一つの目的に向かって邁進する、その姿はまさに壮観と言える。 その中では、担当者間の争いだってある訳で。 例えば、たった数アンペアの電力を廻っての争奪戦が起こったり。
それでもクランツは、専門家達の判断を信じて、思い切り自由にやらせる方針を貫くのである。 リーダーとしての彼の仕事は、各々のエキスパート達が正しい方向を向くように注意を払うことと心得ている。 時には、各担当者間で意見が対立する。 これの調停もリーダーの仕事。 このあたり、アポロ13号のミッションは、危機管理と言う切り口で見て、大変に興味深い事例なのかもしれない。

宇宙船のプロ達の、人智を尽くした戦いの末に、遂にアポロ13号が地球に生還する場面は、なかなかに感動的である。 でも、本としてあんまり盛り沢山な内容なので、やはり、一気に読ませる緊張感というものはないかな。 本書を読むにあたっては、ちょっと気楽に臨み過ぎたかな。 往事のNASAの持っていたエネルギーを想って、もっと心して読むべきであったかもしれない。

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Comments

こんばんは。
 今日は、ほぼ満月(明日が満月とか)のお月様がきれいです。しばし眺めていました。台風の影響で、風も少し涼しくて心地よかったです^^
ここへ遊びにきましたら、はからずも?月のお話、大変興味深く読ませていただきました。
プロたちの人智を尽くした戦いの末の帰還・・・・
想像するだけで感動・・・。

Posted by: みい | August 08, 2006 at 10:59 PM

>みいさん

当地は曇って月も見えず、ちょっと蒸し暑い夜です。^_^;
かつて、あの月まで人間が行って来たんだって想うと、なんだか不思議な気分になりますよね。 今から36年も昔の大冒険でした。

Posted by: もとよし | August 09, 2006 at 01:10 AM

こんにちは、もとよしさん^^
このアポロ13号のお話は、映画では以前見て、かなり面白かった覚えがあります。小説も読んでみたくなりました。
映画でも、NASAの管制センターの主任役の人が、重要な役どころを演じていました♪

Posted by: latifa | August 20, 2006 at 09:06 AM

>latifaさん

映画「アポロ13」。 トム・ハンクス主演のやつですよね。 私も先日DVDを買い込んで来て、今観てるトコです。 いや、もう堪らない面白さですね。(笑)
打ち上げシーンやラベル一家の家族愛、それから無重力(?!)もさることながら、アポロの船内や管制センターがそっくり再現されているのには驚きです。 飛行主任役のエド・ハリスも好演してますね。

Posted by: もとよし | August 20, 2006 at 09:52 AM

もとよしさん、こんばんは!
今日のお昼は、そうめんでした^^
おおっ!DVDも買い込んで来ていらっしゃったとは!
そうそう、そうなんです!エド・ハリス、カッコイイ~!
もとよしさん、ご覧になられたことあるかな・・・
エド・ハリスがスナイパーの役で出てるスターリングラードっていう映画も、なかなか面白かったです。

あと、アポロ13に、ゲイリー・シニーズって人(フォレストガンプに出てた、ダン中尉役の人→車椅子になっちゃう人)が出ていたのも嬉しかったです!

Posted by: latifa | August 24, 2006 at 04:49 PM

>latifaさん

クランツ役のエド・ハリス。 なんだか、記録映像に見るクランツ本人に面影がそっくりなんですね。(笑) 余程研究したんでしょうね。 きっと役柄にもホレ込んだんじゃあないかと思います。 スターリングラードは生憎と未見でした。

ゲイリー・シニーズは直前になってミッションから外された(その代わり、事故に合わずに済んだ)マッティングリー役。 人間万事塞翁が馬を地でいったような人ですね。(笑)
地上のバックアップクルーを代表した役所で、見せ場の多い、なかなか美味しい役だったと思います。 おっと、フォレストガンプも未見です。orz

その内に、DVDの感想などアップさせて頂きますね。

Posted by: もとよし | August 25, 2006 at 01:33 AM

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