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August 07, 2005

ドレスデン国立美術館展[世界の鏡]

国立西洋美術館で開催中の、ドレスデン国立美術館展[世界の鏡]を観た。

自分の場合は基本的に一点豪華主義を好む傾向にあって、だから幕の内弁当よりも一品料理が好き。 美術展なども、各国各ジャンルに及ぶよりも、どれか一つにまとまっていた方がありがたいのである・・・なんてぼやきつつ、フェルメールひとつが目当てでこの展覧会に脚を運んだのである。
そもそもドレスデン国立美術館の歴史は、ザクセン選帝侯のコレクション「美術収集室」(1560年)から始まる。 以来、16世紀~19世紀に渡って収集されたコレクションの内容は膨大なかつ多岐に渡っており、今回の展示では全体が7つのセクションに分けられている。

<セクション1:ドレスデンの美術収集室>
様々な地球儀や製図用具など、当時のドレスデン宮廷の、科学技術への強い感心が伺われる。 宮廷の美術館に、こういったものが収蔵されていることに驚きを感じた。

<セクション2:オスマン帝国-恐怖と魅惑>
トルコからは軍事関係一色の展示である。 「やっぱりね~」と言頷きながら、それぞれに見入ってしまった。
当時強大で、ドレスデン宮廷にとっても脅威であったろうオスマン・トルコの美術。 トルコの軍隊の図や人形、さらに宝剣や鎧などの装飾的な武具が多かった。

<セクション3:イタリア-芸術の理想像>
イタリアの風景画と言えば、色々な美術展で観る機会が多くて、毎度お馴染みの感がある。 それだけ人気ジャンルで、作品の需要も多かったのではないかと想像される。 そんなイタリアの風景画の数々もさることながら、イタリアの様式で描いた、ドイツの風景画の方が一層興味深い。

<セクション4:フランス-国家の表象と宮廷文化>
これも美術展の定番と言える、フランス宮廷文化の粋。 フランスへの憧れは、ドレスデン宮廷でも例外ではなかったと見える。

<セクション5:東アジア-驚嘆すべき別世界>
中国と日本の磁器を中心として、さらにそれを模倣する処から初めて独自の様式を開花させたマイセン磁器の精華を紹介する。 日本からの輸入品で、図柄の中に大きく「B(ベー)」と記された磁器など、本で読んだ事はあっても、実際に目にするのは始めてで、ちょっと感慨深いものがあった。

<セクション6:オランダ-作られた現実>
個人的には、この展覧会の白眉がこのセクションであった。 レンブラントに代表されるオランダ絵画は、当時のドレスデン宮廷をも席巻していた訳だ。

フェルメール「窓辺で手紙を読む若い女」:  想っていたよりも、かなり大きな絵であった。 穏やかな、そして、少しくすんだような色合いが、何とも魅力的である。 構図の素晴らしさに加えて、全体に漂う静謐さが、観る者をして言葉を失わしめる。 堪能した。

レンブラント「ガニュメデスの誘拐」:  この絵は、子供の頃、親に連れられて一度観ている筈である。 いや、もしかしたら、全く同じ構図の別の絵かもしれないけれど、ともあれ幼いガニュメデスの苦悶の表情。 失禁しながら桜桃を握り締めている姿など、今も記憶に残っているのである。 画題に相応しい表現ではないだろうけれど、なんとも雄渾な一幅であると想う。

<セクション7:ロマン主義的世界観>
ロマン派の絵画には、かねて興味があったのである。 フリードリヒ「エルベ渓谷の眺め」やダール「満月のドレスデン」など、高度な写実性と文学性の調和した逸品が並んで、セクション6共々、大変に見応えのある展示であった。

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Comments

こんにちは。もとよしさん、先日はお心のこもったご対応ありがとうございました。美術館ですか。いいなあ。画家の赤瀬川原平は、美術館では急ぎ足でパッ、パッ、パッと見て歩くのがコツだと著書に書いています。そうすると心に響く絵の前では足が必ずピタッと止まるようになるのだそうで、そのようにして自分の足が立ち止まれた絵が自分にとっての「本物」なのだと。なるほど、わかるような気がする理屈ですね。私はドミニク・アングルの「ヴァルパンソンの浴女」の絵が好きです。女性の後姿の絵なんですが、これが忘れられません。

Posted by: hebakudan | August 11, 2005 at 09:56 PM

>hebakudanさん
おいでませ、問はず語りへ~(^ァ^)
美術展。 私も、若い頃は展示される一点一点を丁寧に観ていましたけれど、近頃はとんと意気地がありませんで(^^;、まず最初はお目当て(今回はフェルメールでした)に噛り付いて、充分堪能したのちに他の展示をのんびり観て廻ると言う具合です。
赤瀬川さん流だと、能率が良さそうですね。(笑)
アングルの「ヴァルパンソンの浴女」は聴き覚えがあったので、検索したら知っている絵でした。 マン・レイが、この絵のパロディ(?)写真「アングルのヴァイオリン」を撮っていますね。

Posted by: もとよし | August 12, 2005 at 12:50 PM

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神戸での展示を無事終え、今日から場所を上野に移し開催の 「ドレスデン国立美術館展ー世界の鏡ー」に行って来ました。 展覧会の構成は以下の通り。 工芸品から絵画作品まで幅広く展示されていました。 1、ドレスデンの美術収集室(クンストカンマー) 2、オスマントルコ帝国ー恐怖と魅惑 3、イタリアー芸術の理想像 4、フランスー国家の表象と宮廷文化 5、東アジアー驚嘆すべき別世界 6、オランダー作られた現実 7、ドイツーロマン主義的世界観 ザクセン公国の歴代の君主たちが... [Read More]

Tracked on August 23, 2005 at 09:33 PM

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こんにちは。 私もドレスデン国立美術館展の記事を書きましたので、TBさせていただきました。 よろしければご訪問ください。 [Read More]

Tracked on September 10, 2005 at 07:22 PM

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