« 「スケすけイチバ」の案内ハガキ | Main | ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 »

May 16, 2005

「徳川家康」第3巻 朝露の巻

「徳川家康」 第3巻 朝露の巻 (山岡荘八著 講談社文庫)

竹千代改め元康の、家臣と共に生きる覚悟を描く一巻。

駿河の今川家に預けられた竹千代。 岡崎の家臣たちの窮状を気に掛けつつ、人質の身として8歳から16歳までを過ごすのである。 何かと不自由な身ではあったけれど教育の面では恵まれて、学問は大原雪斎、武道は奥山伝心の教えを受ける。 但し、信長がうつけを通していた同じ年頃を、竹千代は終始目立たぬ用心をしていなければならなかった。 この、敵地で過ごした長い歳月が、後のタヌキ親父を生む萌芽となったかもしれない。

岡崎では今川の軍勢が我が物顔の振る舞い、時には乱暴狼藉にまで及ぶ中で、松平家の家臣、岡崎の領民達は貧窮に喘いでいた。 故国の窮状を聞かされ、当主としての責任を自覚し始める竹千代。
亀姫と束の間の恋を味わい、そして義元の肝煎により鶴姫と結婚。 元康の結婚生活は、しかし穏やかではなかった。 何しろ、妻は義元の姪と言うのに自分は今川家の人質に過ぎず、しかも、その妻は出自を笠に来て威張るタイプ(ヤな女)と来ている。 居心地の悪さは並大抵ではないだろう。

やがて、元康に決断の時が迫る。 来るべき義元の上洛戦では、義元本隊の露払いをさせられる運命の松平勢であるが、その際、信長軍と正面切ってぶつかれば全滅は免れ得なかった。 松平家の窮状を救うには、今川家の支配下を強引に去るしかないのだが、その時、妻子を岡崎に連れ帰る手立てがないのである。 万が一の場合は妻子を見殺しにせねばならないとしても、自分一人を信じて十数年間辛抱して来た家臣達が大事と言い切る元康。 元康は、大原雪斎の教えを通して、家臣との信頼関係を何よりも重く見るようになっていたのだ。 それにしても、なんとも厳しい話しである。 そんな内心を義元に悟られぬように警戒しつつ、傍目には泰然自若と構える元康。 早くもタヌキぶりを発揮である。

織田家では、信長のうつけぶりに手を焼く忠臣平手政秀が、新しい時代の到来を確信しつつ諌死を遂げる。 いよいよ木下藤吉郎も登場する。 それにしても、山岡作品の藤吉郎はのっけからスーパーマンぶりを存分に発揮し過ぎて、なんだか他の登場人物達から浮いている気もするけれど・・・
桶狭間の戦いが始まった。 信長は元康を、早くも将来の重要なパートナーと考えていて、その軍勢とは直接ぶつからぬように配慮する。 そして田楽狭間での、織田軍まさかの大勝利。 この一戦により、元康たちの運命が大転換を遂げるのだ。


松平元康   「爺・・・・・
          わしの決心はもう決まって居るのだ。
          打明けよう。他言するな」
酒井雅楽助  「ご本心・・・・・と仰せられるは」
松平元康   「わしはな、妻子には縛られぬ。その域
          からは脱し得た・・・・・
          わしを縛るものは唯一つ、岡崎に残った
          家臣たちの、今日までの忍耐じゃ。
          わかるかわしの言うことが。」
酒井雅楽助  「はい、よっくわかりまする」
松平元康   「わしはな、駿府の城下を離れた刹那から、
          そちらたちだけのものになろう。
          妻も想わぬ、子も捨てる・・・・・」
酒井雅楽助  「殿!」


<<あらすじ>>
信長のうつけぶりに手を焼く平手政秀は、信長が既に自分の理解の届かぬところまで成長を遂げた事を確信して諌死を遂げる。

駿府で人質の身となっている竹千代は武道では奥山伝心にシゴカレ、学問では大原雪斎の教え受ける充実した毎日を送っていた。 ある日、本多忠高の後家が幼子(鍋之助)の手を引いて岡崎から訪ねて来た。 貧しい身なりの後家から岡崎の家臣、領民達の窮状を聴かされる竹千代。

竹千代は元服して松平元信を名乗る。 元信は亀姫に惹かれつつも、今川家の嫡子氏真に弄ばれていたのを承知で鶴姫と結婚する。 やがて、岡崎への墓参を果たすが、歓喜する家臣、領民達に対して何もしてやる事の出来ない元信の心は切なかった。 彼らの為に、いつか妻子を捨てねばならないと覚悟を決める元信。 駿府に戻った元信は元康と改名する。 嫡男、竹千代の誕生。 元康の初仕事となった大高城への兵糧輸送任務は、頭脳プレーで織田方の裏をかき大成功を納めた。

織田家では、木下藤吉郎が早くも頭角を現し始める。 今川家との決戦が近付く中、前田利家は愛智十阿弥を斬って出奔する。 いよいよ義元の上洛が始まった。 木下藤吉郎は信長から、義元軍の行軍ルートを探索する任務を授かる。 そして田楽狭間での、まさかの義元軍敗退。 この大勝利によって、織田信長は一気に全国区へと踊り出た。


<<登場人部>>
<松平家(岡崎城)>
竹千代:松平家当主 元服して次郎三郎元信 改名して蔵人元康
松平広忠:故人 松平家先代当主 最も戦国大名に向かない男
松平清康:故人 松平家先々代当主
瀬名:信元の正室 今川義元の姪
竹千代:松平家嫡子 元康と瀬名の長男
亀:信元と瀬名の長女
華陽院:源応尼 故清康の妻、広忠の義母、故水野忠政の元妻、於大の方の母(複雑!)

<松平家家臣>
酒井雅楽助正家:主家想いの賢臣
酒井左衛門尉忠次:元康の叔母の夫
鳥居忠吉:家臣中の最長老
鳥居元忠:鳥居忠吉の三男 駿府で竹千代の傍に仕える
植村新六郎
大久保新八郎:豪放磊落な好漢
本多平八郎忠豊:故人 広忠の安祥城攻めの折、広忠の身代わりとなって戦死
本多平八郎忠高:故人 忠豊の子 今川の安祥城攻めの折、戦死
本多鍋之助:忠高の子 元服して平八郎忠勝(ただ勝つから、忠勝)
本多の後家:今川の安祥城攻めで戦死した本多平八郎忠高の後家
平岩七之助:駿府で竹千代の傍に仕える 後の平岩親吉
阿部大蔵:老臣
安倍甚五郎
榊原孫十郎長政
石川安芸
石川彦五郎家成:安芸の息子
石川与七郎:後の石川数正
長坂彦五郎:血槍九郎と呼ばれる槍の達人
平岩金八郎
天野甚右衛門
内藤与三兵衛
野々山藤兵衛
内藤小平次
天空:岡崎城下、大樹寺の和尚

<久松家(阿古居)>
久松弥九郎俊勝:久松家当主 誠実な好男子
於大の方:俊勝の正室 元康の母
三郎太郎:久松家嫡男
源三郎:次男
長福丸:三男
<久松家家臣>
竹之内久六:出奔した水野信近

<熊の若宮>
竹之内波太郎:熊の若宮当主

<織田家>
織田信長:織田家当主
奇妙丸:織田家嫡男
茶筌丸:次男
三七丸:三男 茶筌丸とは同日の生まれ
濃姫:信長の正室 斎藤道三の娘
類:生駒出羽の娘 信長の側室
奈々:吉田内記の娘 信長の側室
深雪:信長の側室
岩室:故信秀の側室

<織田家家臣>
平手政秀:平手の爺 信長のうつけぶりを嘆いて諫死する
平手監物:政秀の長男
平手五郎右衛門:政秀の二男
平手弘秀:政秀の三男
柴田権六朗勝家
林佐渡守通勝
前田犬千代:元服して又左衛門利家 愛智十阿弥を斬って出奔
簗田政綱:桶狭間の戦いで今川方の位置を伝える
愛智十阿弥:小姓 美貌で毒舌家 利家に斬られる
生駒出羽
佐久間大学盛重:丸根の砦を守って元康に破れる
織田玄蕃信平:鷲津の砦を守って朝比奈泰能に破れる
藤井又右衛門:足軽組頭
木下藤吉郎:厩の掃除番、沓取り、山林方、台所奉行を歴任
服部小平太:桶狭間の戦いで義元に一番槍を付ける
毛利新助:信長の傍に仕える 桶狭間の戦いで義元を討ち取る
八重:藤井又右衛門の娘
阿松:前田利家の許婚者
お勝:岩室殿の元召使 斎藤道三の側女
大雲:織田家縁、万松寺の和尚

<今川家>
今川義元:今川家当主
今川氏真:今川家嫡子
<今川家家臣>
大原雪斎:今川家の柱石 竹千代の師
関口刑部少輔親永:竹千代を預かる
吉良義安
朝比奈泰能
鵜殿長照
三浦備後守
浅井政敏
岡部元信
葛山信貞
堀越義久
瀬名:親永の娘 義元の姪 鶴姫(勝気) 竹千代と結婚
椿:義安の娘 亀姫(おっとり)竹千代と束の間恋仲に
智源:駿府城下、智源院の住持 竹千代の師
奥山伝心:浪人 駿府城下に寄宿し、鬼コーチとして竹千代を鍛える

<その他>
随風:諸国行脚中の僧侶


松平元康、既に二児のパパである。 長い長い物語りなのだからして、竹千代の少年時代をじっくりと描くのかと思っていたのだけれど、なんだか、あっという間にここ迄来てしまったの感がある。 恋に浮かれず、妻子に流されず、何より家臣を大事にする。 それが元康と言う人である。


天下泰平まであと23巻。

|

« 「スケすけイチバ」の案内ハガキ | Main | ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 »

Comments

おもしろくなってきました!!
一国を背負う気持ちっていったいどんなものなのでしょう?
国の主としての自覚だったのか
命を守る処世術だったのか
タヌキといわれる性格はこんなところから形成されたのかな?
と思いました
ひとつを深く知る っておもしろい^^

Posted by: あおちゃん | May 16, 2005 at 06:39 PM

>あおちゃんさん
元康が、信長が、いよいよ歴史の表舞台に登場です!(^o^)

>タヌキといわれる性格はこんなところから形成されたのかな?
物心付く頃からず~っと人質生活ですからね。 タヌキ体質はその中で身に付けた処世術なのかも、ですねえ。 狂歌に、

 織田が搗き羽柴が捏ねし天下餅骨を折らずに食ふは徳川

なんてぇがありますけれど、でも三人のうち一番ストレスを溜めたのはやっぱり家康なんでしょうね。

Posted by: もとよし | May 17, 2005 at 11:35 PM

「たぬき親父」は、生い立ちにあったのですね。ストレスたまる環境だったということです。このブログ拝見してて、次回が楽しみになってきましたよ!  長い長い物語、がんばって登場人物憶えなくては(笑)

PCいつ壊れるか、という状態、今日までフリーズしてました。新しいPC欲しいと思う今日この頃です((~_~;))

Posted by: みい | May 19, 2005 at 06:11 PM

>みいさん
小国とは言え岡崎の家臣や領民達の運命を一身に担う元康ですから、そらストレスも堪りますよね。(笑)
次回は、今川家の呪縛から解き放たれて、晴れて一国一城の主となる元康に注目です!

あ、我が家のPCも、そろそろ後継機を考えねば・・・・(^^ゞ

Posted by: もとよし | May 19, 2005 at 10:03 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61645/4144332

Listed below are links to weblogs that reference 「徳川家康」第3巻 朝露の巻:

« 「スケすけイチバ」の案内ハガキ | Main | ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 »