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May 17, 2005

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展

国立西洋美術館で開催中のジョルジュ・ド・ラ・トゥール展を観た。
この展覧会は以前から楽しみにしていて、もっと早く観に行きたかったのだけれど、何かとタイミングが悪くて今頃になってしまった。 すっかり出遅れてしまった感がある。

夜の静謐を描いたフランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの事を、自分は堀田善衛の「美しきもの見し人は」と言う本を読んで知った。 取り分け夜の絵が素晴らしい。 闇の中に一筋灯った灯りからは静寂そのものが伝わって来るようで、堪らない魅力を感じるのだ。 たとえその画中の人物から言葉が発せられたとしても、それは呟き以上のものではないだろう。

今日まで伝わるラ・トゥールの真作は僅か四十枚あまりで、(その内の一枚「聖トマス」は、国立西洋美術館が所蔵する)今回はそのほぼ半数が展示されていると言う。 意外にもそれ程混雑していなかっので、割合にゆっくりと観て廻る事が出来た。

「聖トマス」、「聖ペテロの否認」
ラ・トゥールのものした肖像画の数々は、描かれる誰もが皆、直向きな顔をしているのが好い。 どれも大袈裟な表現は一切無しの自然体で、あるいは画家は、そこいらにいるオジサン達を捉まえ来て、あれこれポーズを取らせたのじゃないか。 そんな風に想像してしまう。

「犬を連れたヴィエル弾き」
貧しさや老いを、これでもかと描き尽くして止まない画家の眼差しからは、厳しさを突き抜けた末の慈しみを感じる。 小柄な犬が蹲って、丁度鑑賞者を見上げる格好の瞳がとても可愛らしい。

「聖ヨセフの夢」
たった一本の蝋燭の明るさを描くためには、なによりその周囲を覆い尽くす闇の存在が必要なのだと知らされる。
現代人には最早理解し得ない「闇」という魔物を感じてみたくなったなら、ラ・トゥールの夜の絵を眺めると好い。

「ダイヤのエースを持ついかさま師」。
この可笑しな絵のことは、「美しきもの見し人は」でも語られていたのである。 何しろ画題がすこぶる付きに面白いし、堀田善衛の文章も楽しくて、すっかり気に入ってしまった。
以前・・・横浜美術館のミュージアムショップだったか・・・この絵のポストカードを買い求めて、以来、フルートを持ち歩く鞄の中に飾ってある。 まさかこの絵を実際に見る日が来るとは想ってもみなかったので、流石に感無量である。
ところで実物は、自分が漠然と想像していたよりも、ずっと大きかった。(106X146cm)それにしてもこれは、「いかさま師」にしては一寸デカ過ぎるのじゃあないか? 白昼堂々だよ? なんて、余計な事まだ考えてしまう。
なにしろ「美しきもの見し人は」は文庫本だったし、長年この絵のポストカードを見慣れているしで、自分のイメージの中では、文庫本サイズ~ポストカードサイズで存在していた訳だ。 いつか、犯行現場を覗いているような気分になっていたらしい。
ここ十数年(?)来、画面中央の、葡萄酒を給仕する女性の視線が気になって、気になって、仕方なかったのだけれど、今回それをとくと見届ける事が出来て、まずは本懐を遂げた気になっている。

帰り、お土産に「ダイヤのエースを持ついかさま師」のクリアファイルを買い求めた。 「ダイヤのエース~」関連グッズとしてはこの他に、クリアファイル、メモ帳、ポストカードの3点を組み合わせた「いかさま師セット」があって、
こちらの方がお買い得のようであった。 メモ帳は日頃使う事がないし、ポストカードは既に持っているしで購入は見合わせたのだけれど、「いかさま師セット下さ~い!」と言ってみたかったのも確かなのである。
 
 
 芸術新潮 三月号
 
 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展(再訪) 
 

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Comments

「ラ・トゥール展」行ったんですね。
私は「大工の聖ヨゼフ」が来てないので考慮中です。

>堀田善衛の「美しきもの見し人は」
この本は知りませんでした。
面白そうですね。

>「いかさま師セット下さ~い!」と言ってみたかったのも確かなのである
落語みたいですねぇ(笑

Posted by: 晴薫 | May 17, 2005 at 11:50 PM

もとよしさま
コメント&TBありがとうございます。
いい展覧会でした。数少ないわりには見応え十分といったところでしょうか。
「ダイヤのエースを持ついかさま師」気に入ってしまい、実は私の今の携帯の待ち受け画面は、この絵の女性2人です。(笑)

Posted by: イッセー | May 18, 2005 at 12:43 AM

>晴薫さん
ラ・トゥールの絵がこれだけ揃うのは空前絶後と思います。 もう、あまり期間も残っていないですけれど、機会がありましたら是非!(笑)「大工の聖ヨゼフ」もその内に来て欲しいですね。
「美しきもの見し人は」を、私はずっと以前に古本屋で買い求めました。 堀田善衛の独特の美意識に納得いけば、きっと楽しめる本と思います。(^^; 私が、もしも今、読み直してみたら・・・どんな感想を持つのか我ながら興味あります。(^^ゝ


>イッセーさん
真作の約半数と、模作や関連作品まで出展されて、ラ・トゥールの世界にどっぷりとはまれる展覧会でしたね。
次は「クラブのエース~」が来ないかな。(笑)

Posted by: もとよし | May 18, 2005 at 08:26 PM

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