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April 29, 2005

「徳川家康」第1巻 出生乱離の巻

「徳川家康」 第1巻 出生乱離の巻 (山岡荘八著 講談社文庫)

山岡荘八の「徳川家康」を読み始めた。 (おそらくは)なにより長いことで有名な、文庫版で全26巻にもなる、あの小説である。

未曾有の長編の第一巻は家康の誕生前夜、両親である松平広忠と於大の方の縁談話しから離別までを中心に話が進んで行く。
しかしこの「出生乱離の巻」。 戦国時代絵巻らしく豪快な戦闘シーンがあるかと思いきや、駿河の今川、尾張の織田と言う大国に挟まれて生きて行かねばならない小国の悲しみを弱者の視点で描いて、全編が諦観に満ちていているのである。
名君と称えられた先代松平康清へのコンプレックスと、やる気まんまんの家臣団の間で追い詰められる、最も戦国大名に向かない男、松平広忠の苦悩。

他家の大名が羨む程の鉄の団結を見せる松平家家臣団は、一人一人が魅力的な、個性溢れる男達として描かれている。 やがては天下の覇者となる三河武士ここにありと言う感じだ。
今川義元と言うと、よく公家かぶれのダメ大名として描かれるけれど、ここでは大国を取り仕切るに相応しい大人の風格あり。
そしてもう一方の織田家と言えば、桶狭間までは弱小国なのだと思っていたら、ここでは今川家に張り合う急進勢力となっているのが意外であった。 その織田家を引っ張るのが当主信秀は、息子の信長を彷彿とさせる猛将ぶりを見せ付けてくれる。 そして、早くも大器の片鱗を見せ付ける吉法師の登場。
まあこの辺は、大国間に揉まれる松平家や広忠のダメ当主ぶりと言う設定を生かす為なのかもしれない。


石川安芸 「殿!」
松平広忠 「なんだ」
石川安芸 「堪忍が大切でござりまするぞ」
松平広忠 「予は堪忍するために生まれてきたのかッ」
石川安芸 「御意のとおりでござる」
松平広忠 「いつまで・・・いつまで堪忍すればよいのだ。 死ぬまでか」
石川安芸 「御意のとおり」


<<あらすじ>>
岡崎の松平家は駿河の今川家、尾張の織田家と言う大国の間に挟まれた中、名君と慕われた先代清康の代から、今川に随身する政策を取って生き抜いて来た。 当代の主、松平広忠は水野忠政の娘、於大の方を娶る事になる。 二大国に挟まれた小国同志、手を携えて行こうという政略である。
最初は政略結婚に頑なだった広忠だが、於大の方の聡明さに、次第に心を開いてゆく。 織田と今川の小競り合いと言うべき小豆坂の戦いと前後して嫡子竹千代が誕生した。 同じ日、岡崎城の片隅ではこれも広忠の子である恵新が側室を母として生まれる。
数年後、於大の方の父、水野忠政が死去して水野家は信元の代となり織田家へ随身する事になる。 勢い広忠は、今川家への配慮から於大の方を離縁せねばならなくなった。
幼い竹千代を残して水野家に戻る於大の方。 最愛の妻との別れから乱心する広忠に、許婚お春を奪われた忠臣片目八弥の悲劇。 その一方で、竹千代が家中の期待を一身に担う。 広忠は心ならずも戸田弾正の娘、真喜姫と再婚する。


<<登場人物>>
登場人物があまりに多岐に渡るので、整理しておくことにする

<松平家(岡崎城)>
松平広忠:松平家当主で先代からの今川家寄り 最も戦国大名に向かない男
松平清康:広忠の父 松平家先代当主で故人
竹千代:松平家嫡子
華陽院:故清康の妻 広忠の義母 水野忠政の元妻 於大の方の生母(複雑!)
於大の方:広忠の正室 水野忠政の娘
百合:於大の方の召使 竹千代の出生時に、於大の方の命により鳳来寺峰の薬師の普賢菩薩を盗み出す
小笹:於大の方の召使
お久の方:広忠の側室 於大の方とはライバル関係
勘六:広忠=お久の方の長男
恵新:広忠=お久の方の次男 竹千代と同じ日に生まれたために生まれて直ぐ僧籍に入れられる
お春:広忠の側室 岩松八弥の元許婚者
<松平家家臣>
酒井雅楽助:主家想いの賢臣
本多平八郎
鳥居忠吉:家臣中の最長老
阿部大蔵:老臣
植村新六郎
大久保新十郎
大久保新八郎:豪放磊落な好漢
大久保甚四郎
石川安芸
松平乗正:お久の方の父
岩松八弥:小豆坂の合戦で片目を失い、以来片目八弥と呼ばれる一途な忠臣 お春の元許婚者
須賀:老女

<水野家(狩谷城)>
水野忠政:水野家当主 今川家寄り
水野藤五郎信元:忠政の嫡子 忠政没後は水野家当主で織田家寄り(悪役!)
水野藤九郎信近:忠政の子 今川家寄りだったが、信元と対立して出奔後は小川伊織を名乗る
水野忠近:忠政の子
<水野家家臣>
土方縫殿助:忠政の寵臣
土方権五郎:忠政の没後、石山御堂に入る
杉山元右衛門:小笹の父
杉山元六
牧田幾之助
芥川権六郎:信元の懐刀 忍者
於俊:土方権五郎の娘 忠政の没後は石山御堂に入るも、小川伊織と出会い出奔

<熊の若宮>
竹之内波太郎:熊の若宮当主 美貌で謎めいたバイプレーヤー
国:波太郎の妹 水野信元に捨てられる

<織田家>
織田信秀:織田家当主
吉法師:信秀の嫡子
<織田家家臣>
平手政秀:信秀の重臣 言わずと知れた吉法師の爺
久松弥九郎

<今川家>
今川義元:今川家当主
<今川家家臣>
大原雪斎:禅僧にして今川家の柱石

<松平家(他)>
松平信定:広忠の大叔父、織田家に随身

<戸田家>
戸田弾正左衛門康光
戸田宣光:康光の嫡子
真喜姫:康光の娘、広忠の後妻に入る

<その他>

随風:諸国行脚中の僧侶 後の天海僧正か?


と言う訳で、第1巻 出生乱離の巻 は竹千代の誕生編と言う事になろうか。
信長や秀吉と違って、最初から周囲に愛され期待されている家康であった。 ただ、その周囲が常に逆境にあって、それを盛り立てて行かねばならない運命を背負わされているのである。 こういった主人公の設定は、この小説が書き始められたのが、戦後間も無くと言う事と関係しているのだろうか? 因みに、自分的にはむしろ、すぐにへこんでイジケル広忠の方に親近感が無くはないのである。

竹千代、未だ赤ん坊である。 しかし、家康よ、早く成長して活躍しろ、などとは思わない。 そのくらい、周囲の人々が魅力的に描かれているのだ。 未だ幼い竹千代と、松平家の人々、その、いじらしいくらい忠義な家臣達にはこれから長い試練が待っている。


天下泰平まで、あと25巻。

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Comments

26巻!!
もとよしさんの感想で 読んだ気になりたいと思います(笑)
深く知ると それだけ愛着あって 楽しくなりますよね^^
学校でも そういう授業にすればいいのに………

しかし私も 26巻くらいの小説にされるくらい
すごい人になりたいものです^^
 

Posted by: あおちゃん | May 01, 2005 at 04:34 PM

>あおちゃんさん
長期企画、見切り発車させてしまいました。 どのくらい掛かるか、さっぱり判りません。(笑)
この手の歴史小説を読んでいると、昔観たNHK大河ドラマのシーンを思い出して、テレビのあの場面はこういうことだったのかぁ!なんて合点の行く事が(今頃!?)良くあります。
こういった戦国もの、最近はゲームから入る人も多いようですね。

Posted by: もとよし | May 01, 2005 at 09:17 PM

こんにちは! すごい!
登場人物憶えられない!長期計画、楽しみにしています。全26巻とても読めない私(~_~;)このブログで、私も、あおちゃんさんと同じく読んだつもりにさせてもらいますね(笑)
タヌキ親父の物語、最後に平和な世の中をつくったのですよね。こちらには、屋島神社(1652年高松藩主・松平頼重公が建立)という、松平家ゆかりの神社があります。

Posted by: みい | May 02, 2005 at 09:52 AM

>みいさん
登場人物、ホント多過ぎますよね。 その上、家臣達は親子代々仕えて、しかも名前を継いだりしますからハナシは更に複雑に~。(^^; こうして控えておかないと、誰が誰やら・・・(笑)

そういえば、来年のNHK大河ドラマは、山之内一豊だそうですね。 「徳川家康」にも、その内に登場すると思いますけれど。 そちらでは、既に盛り上がっているのでしょうか?(^^)

Posted by: もとよし | May 02, 2005 at 09:18 PM

TBありがとうございます。
私は読了したので、1巻って忘れていました。
「そういえばこういう内容だったな」と思い出しながら読ませていただきました。
いじける広忠に親近感って、同感です。

Posted by: 竹内克仁 | July 12, 2005 at 04:46 PM

>竹内克仁さん
コメントありがとうございます。
私の場合は、至ってゆっくりと読み進めていますので、26巻まで達するのは、果たして何時のことやらと言う感じです。 ですから、先達の言葉にはホント励まされます。(^_^)
生まれて来る時代を間違えたような、松平広忠にも共感頂けて、ナンカ嬉しいです。(笑)

Posted by: もとよし | July 14, 2005 at 09:58 PM

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