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February 25, 2005

「天平の甍」

「天平の甍」(井上靖著 新潮文庫)
鑑真和上の来日は西暦753年。 それに伴って唐招提寺が建立された事などは学校で学んだ。 渡航の度重なる失敗と、その末の和上の失明など、来日を果たすまでの苦労も良く知られている話しであろう。 また先日、自分は東京国立博物館で開催中の唐招提寺展で鑑真和上坐像を拝見し、深い感銘を受けると共に鑑真和上への関心も増したのである。

「天平の甍」は、手にとって見ればそれほどの大著ではないけれど、鑑真和上来日までの二十年に渡る歳月を描いた、中身は堂々たる大河小説と思う。 小説は、和上の渡航を、それに関わった五人の留学僧達の半生を通して見てゆく。
当時、大陸への航海は遭難に見舞われる事が度々であり、文字通りの命賭けなのであった。 そんな悪条件の中、身を賭した留学僧達が乗り込んだのは第九次遣唐使船であった。 いずれも、一旦唐に渡れば十数年は帰国しない覚悟の若者達である。
帰国するまでの長い時間を、一体どのように使うか。 留学僧達の選んだ道は様々であった。 只ひたすら学問に邁進しようと願う者。 寺を出て大陸を歩き回る者。 諦めて望郷の念に焦がれる者。 写経のみに半生を費やす者。 そして、和上を日本に招聘する事に奔走する者たち・・・ 自分は、和上を迎えようとした普照や栄叡だけではない、どの留学僧の生き方にも(多少の差はあっても)それぞれ共感を覚えるのである。 異郷の地に居ながら、それぞれの目的を見つけて生きる人々の姿は、他人の目にどう映ろうとも各々が真剣であり、ギリギリである。 そこに、感動した。
鑑真一行が数度の失敗の末に来日を果たしたのは第十次遣唐使船においてである。 第九次遣唐使船での留学僧達の旅立ちから二十年が経っていた。

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