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February 04, 2005

「雪国」

「雪国」(川端康成著 新潮文庫)を読んだ。

これまでずっと、雪に縁の無い地域で暮らして来た自分は、子供の頃から雪国への漠とした憧れを持ち続けている。 そんな事を言うのは、雪の降らない地方で生まれ育ったからこそだってことは理解している積もりである。 以前、都内で小雪が舞い散るのに浮かれていたら、雪国出身の友人に呆れられた。 そりゃそうでしょうよ。 傍観者として眺めるのと、その中で生活するのとではまるで違う、判ってますとも~。

とまれかように、訪問者とは身勝手なものなのである。 「雪国」の主人公も、東京での何不自由ない暮らしに飽いた頃、手前勝手に非日常を求めてやって来る。 東京に在っても、実際には見た事の無い西欧の舞踏の評論をやるなど、浮世離れした渡世を選ぶのだ。 (どうでも良いけれど、これは、クラシック音楽の熱心なリスナーであった時代の自分のようではある。 実際の演奏を聴かないうちに、伝記や評論を読んだだけで感激しちゃった。 なんて言う経験が自分にもあるんだ。 生憎と、高等遊民じゃない一般庶民だけれどね。)
非日常の中に現実が見え隠れし始めたら、さっさと東京に帰ってしまえば良いのだ。 手前勝手のフィルターを通して見る「雪国」の冬、そして夏、捨て身でぶつかってくる雪国の女。
だが、主人公から見て非日常に在る女といえども、実際は地に足を付けて生きている。 無論のこと、主人公とてそれを承知しているであろう。 両者の求めるもの、与えるものに付いてのギャップから、女との間に何時か亀裂が生じるのを判らぬ主人公では無い。 二人の関係が決定的な破綻を見るよりも前に、物語は急速に結末を迎えるのである。

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