« エックレスのソナタ(8) | Main | 番狂わせ »

February 27, 2005

踊るサテュロス

東京国立博物館で開催中の特別展「踊るサテュロス 」を観た。
「踊るサテュロス 」は1998年、地中海はシチリア島沖で偶然漁船の網に掛かり発見された、およそ2000年前のブロンズ像。 本来であれば門外不出、イタリアの秘宝とでも言うべき逸品なのだけれど、今回は「愛・地球博」(愛知万博)への出展に併せて、一度限りの特別展示と相成った。
それにしても、「踊るサテュロス」と言う標題は、なんて魅力的なんだろう。 そもそも自分はギリシャ/ローマ神話には全く疎いし、なによりサテュロスに付いてなにも知らない。 それが、今回この展覧会に来る気になったのは、ポスターやテレビなどを観ての事ではなくて、「踊るサテュロス」と言う標題一発にシビレタから、なのである。(至極単純な奴・・・)

この展覧会、参考として模型や写真類も展示されるものの、主な展示品は「踊るサテュロス」が只一つ。 それが表慶館の中央に鎮座している。 好いね。 自信たっぷりの一点豪華主義って奴は大好きだ。
サテュロスを支える為の支柱や台座、そして照明なども好く配慮されていると思う。 色々の角度から観賞する事が出来て、それぞれに魅力的だ。 表慶館の内装とも素晴らしく好く合っていて、この建物自体、まるでこのサテュロス像一体の為に建てられたような気さえして来る。

2000年もの間海底に眠っていた事で、ブロンズ像は全体的に腐食が進んでおり、更に両手と右足、頭頂部が欠落、その他あちこちにも損傷が観られる。 この場合、両手と右足の欠けている事が、観る者の想像力を刺激して、本来製作者が意図していなかった魅力を生んでいると思う。 ミロのヴィーナスの失われた腕のようなものだろうか。

サテュロスとは、葡萄酒と享楽の神デュオニソス(バッカス)の従者。 つまり、高位の神様などではない野山の精と言う事なのだろう。 そのせいかもしれない、ここに描かれるのは雄々しさ、雄渾さよりも若さ、しなやかさであり、酔って踊りに我を忘れたサテュロスの躍動感である。(その一方で、表情には不思議な静謐を漂わす)
資料にあるサテュロスの図を見ると、右手に杖、左手には空の酒壺を持つ。 右足で立ち、左足は後ろに蹴り上げている。 踊りの一場面を捉えた像である。
それが、手足の欠落部分と、支柱によって宙に浮かんだ展示のお陰で、躍動感溢れる彫刻作品に生まれ変わっていると思う。 本来、大地を踏みしめていたであろう右足は、太股から下がないことで、まるで跳躍の瞬間のような、あるいは飛翔しているかのような印象を与える。 燃え立つ炎のように後方に靡く頭髪は、疾風の中を往くようなスピード感と若い情熱を象徴しているかのようだ。(巧みな照明が、それを強調している) 両の腕が鳥の翼のように美しく反りあがっていら・・・などと勝手に思いを馳せるのもまた一興ではないか。
サテュロス越しに見上げる表慶館の天井が、これまた美しくて見飽きる事がない。
一体のサテュロス像に、想いの外長居をしてしまった展覧会である。

|

« エックレスのソナタ(8) | Main | 番狂わせ »

Comments

こんばんは、はるく、です。
TB&コメントありがとうございました。
それからすみませんが、TBを二度送りしてしまいました。管理ページで失敗していたので再試行してしまったのです。
お手数ですが、一つ消して下さい。


>踊るサテュロス」と言う標題一発にシビレタから、なのである。
私と同じです。
私もまず名前の響きに惹かれてHPで観る気になったのです。

Posted by: 晴薫 | February 28, 2005 at 12:00 AM

TBありがとうございました。
私も建物、照明ともなかなか良かったと思います。万博ではどのように展示されるのかが、気になってしまいました。

Posted by: tamako | February 28, 2005 at 03:15 AM

もとよしさん、こんにちは。

コメントありがとうございました。

表慶館という建物のもつエキゾチックな雰囲気と、サテュロスの持っている時間を越えて伝わる存在感がよくマッチしていましたね。シチリアと東京、そして2000年と場所も時代も隔てた存在に、今出会えるというのはそれだけでも幸せな気分になれますね。

Posted by: ふく | February 28, 2005 at 07:28 PM

>はるくさん
「踊るサテュロス」。 やはり、秀逸なネーミングですよね。 ポスターやチラシ(後から拝見しました)に見る黒バックの写真も好かった・・・サテュロスって凄く写真うつりが好いんですね。(笑)

>tamakoさん
東京でこれだけやってくれると、本番とも言うべき愛知万博は一体どう出るのか、私もとっても気になっています。(笑)

>ふくさん
2000年・・・本当に、途方もない時間ですね。 世の中、まだまだこんな事があるんだと言う驚きと共に、それを間近から観賞出来た幸せを噛み締めています。

Posted by: もとよし | February 28, 2005 at 11:54 PM

こんばんは。
TB&コメント、ありがとうございます。

「踊るサテュロス」想像以上に良かったですよね。
ギリシャ神話題材のものは、大体興味があるのですが、
これほど「躍動感」のあるものとは、
思いませんでした。
久しぶりに惚れてしまいました(笑)

Posted by: オクターブの共鳴音 | March 02, 2005 at 11:13 PM

>オクターブの共鳴音さん
コメントとTBありがとうございます。
私は今頃になって、2000年の歳月の重みが実感されて、ジーンと来てます。(笑)
ギリシャ神話にはまったく疎いんですけれど、これを機会に、ちょっと齧ってみようかと思っています。

Posted by: もとよし | March 03, 2005 at 10:50 PM

>[大いなる夢から]さん
TBありがとうございます。サテュロス是非ご覧になって下さい。小森谷慶子さんの記事も興味深く拝見しました。
こちらからもTBさせて頂きます。


>[Diario da PIATTIから]さん
TBありがとうございます。
現地シチリアにお詳しいようですから、サテュロスとのご対面には感慨も一入でしょうね。(笑)
こちらからもTBさせて頂きます。

Posted by: もとよし | March 05, 2005 at 08:36 PM

はじめまして。
サテュロス展の記事を探していてこちらにたどり着きました。

たった一点のみの展示でも充分説得力があって、僕も、この表慶館がサテュロスのために造られてる、と聞いたとしても疑わないような気がします。

TBさせていただいたので、よろしかったらご覧ください。

Posted by: DADA. | March 08, 2005 at 09:39 PM

>DADAさん
コメントとTBありがとうございます。
サテュロスそのものも見事でしたけれど、今回は表慶館の建物と相まって、一つの世界を創りあげていましたね。 DADAさんのブログ、遊びに行かせて頂きます。

Posted by: もとよし | March 09, 2005 at 09:47 PM

2つの記事を書きました。ぜひご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/ecotaka/e/cee160a5bf0f3b36d6033fa3d303d1e9

http://blog.goo.ne.jp/ecotaka/e/86c027a39ce2a3ab9165c21553d8e2b3

愛知万博での展示がどういう形になるのか楽しみですね。

Posted by: ecotaka | March 18, 2005 at 04:20 PM

僕も『踊るサチュロス』のことをグロブに書きました。

http://blogs.yahoo.co.jp/porche964_rs/trackback/465279/4415391

Posted by: まさみ | June 08, 2005 at 06:42 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61645/3101009

Listed below are links to weblogs that reference 踊るサテュロス :

» 2000年前のロック・スター、踊るサテュロス:The Dancing Satyr [雨の日の日曜日は・・・]
古代ギリシャ芸術の傑作、「踊るサテュロス像」がシチリアの海から引き上げられ、 2 [Read More]

Tracked on February 27, 2005 at 11:50 PM

» 踊るサテュロス~東京国立博物館 [ミュージアムへ行こう!]
先週(2/20)の日曜美術館は、シチリアを特集していました。シチリアは行ったこ [Read More]

Tracked on February 28, 2005 at 03:16 AM

» 踊るサテュロス [いづつやの文化記号]
今、東京国立博物館で特別展示されている“踊るサテュロス”(ブロンズ像)を見た。1 [Read More]

Tracked on February 28, 2005 at 02:05 PM

» 踊るサテュロス 東京国立博物館 [Oh!江戸 落書き帖]
 いよいよ、踊るサテュロス展が開幕しました。  二千余年の年月シチリア沖の海底に [Read More]

Tracked on February 28, 2005 at 07:36 PM

» 「踊るサテュロス」葡萄酒と享楽の神バッカスの従者ーイタリアの至宝をみる [オクターブの共鳴音@WebryBlog]
ギリシャ神話を題材にとった作品はだいたい好きなんですけど、それプラス私の好きな古代ギリシャ彫刻とあっては、これは観に行かなくては!と、いそいそと行ってきました。 [Read More]

Tracked on March 02, 2005 at 11:08 PM

» 踊るサテュロス [大いなる夢]
東京国立博物館で開催中の特別展「踊るサテュロス」を見に行きたい。 東京国立博物館のサイトから宣伝文句を引用すると次の通りです。 ------------... [Read More]

Tracked on March 04, 2005 at 11:14 AM

» 踊るサテュロス [Diario da PIATTI]
[http://info.yomiuri.co.jp/event/01001/200411174356-1.htm:title=The Dancing Saty... [Read More]

Tracked on March 04, 2005 at 11:24 AM

» 東京国立博物館 「踊るサトュロス」 [叡智の禁書図書館]
東京国立博物館 踊るサテュロスのサイト 1998年にシチリアの海から引き上げられたブロンズ像です。酒神バッカスの従者ということで、酒飲んで酔っ払って、いい気分... [Read More]

Tracked on March 06, 2005 at 01:13 AM

» 特別展 踊るサテュロス(2/26) [ex-chamber]
東京国立博物館表慶館にて。(2/19〜3/13)http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=1393いやぁ、いいモン観させてもらった、という満足感… [Read More]

Tracked on March 08, 2005 at 09:34 PM

» 「踊るサテュロス」との出会い [大いなる夢]
東京国立博物館で開催中であった「踊るサテュロス dancing satyr」特別展に最終日前日に行ってきました。私のブログ踊るサテュロスでも触れたようにシチリ... [Read More]

Tracked on March 22, 2005 at 12:20 AM

« エックレスのソナタ(8) | Main | 番狂わせ »