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January 11, 2005

「痴人の愛」

「痴人の愛」(谷崎潤一郎著 新潮文庫)を読んだ。
平凡な男が、いつしか悪女に翻弄されてしまうと言う悲喜劇。 しかし、その悪女を育て上げたのは誰あらぬ自分自身なのだ。 女の事を誰が責められよう。 女を好き放題に着飾らせたのも、英語やダンスを習わせて能う限り西洋風に仕立ててやったのも、みな主人公の男なのである。
そうやって女を育成し、自分の思い通りに振る舞っていた積もりが、いつしか、逆に支配されている事態に気付く羽目になる。 だからと言って主人公は、女を手放し、あるいは追い出してしまったりはしないのである。 この、元来平凡な男は、いっそ人生を何者かに委ねてしまって、そのまま滅びの路を歩んで行きたかったのではあるまいか。
いやいや、滅びの美学などと振り被るには、主人公自身があまりに俗めいている。 そしてその分、著者の、伝統的な価値観へと送る惜別の情も、なんだかこう、妙にアッケラカンとした格好で見えて来る。 主人公の、滅多に得られぬものへの憧れから始まったこの手記は、遣る瀬無いような諦観を以って終わるのである。

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